エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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「日本のフリーランスは増えすぎた!」という声はよく聞きます。
しかしこれらは、統計やデータに基づく「事実」なのでしょうか? 実際、周りにいるのは会社員がほとんどで、街を歩けば多くの大企業があります。
今回の記事では「日本のフリーランスが増えすぎた」という説を、統計データを用いて検証していきます。
【本記事の要約】
- フリーランスは長期的には減少傾向だったが、2021年に急増。コロナ禍の影響が大きかったか
- 雇用者も2022年には増加へ転じ、依然として就業者の約90%は雇用者
- 自営業主は1985年から一貫して減少傾向にあり、現在は就業者の約10%
- 新型コロナウイルスがフリーランス人口に良くも悪くも多大な影響を与えた
「日本のフリーランス人口は増えすぎているのか」という疑問を解決するために、ここからは以下のデータをみていきます。
クラウドソーシングサービス『ランサーズ』が発表したフリーランス実態調査によると、フリーランス人口は以下のように推移しています。
調査を見ると、従来の減少傾向から一転して2021年にはフリーランス人口が約600万人増加。この上昇幅は調査開始以後最大で、人口も最高値になりました。
「近年はフリーランス人口が減少傾向にあったが、2021年に急増した」ことがこのデータから分かります。
しかし、ランサーズの発表するこの数字は日本の労働人口の約24%にあたります。この数値に対して「多すぎる」と違和感を覚える理由は、フリーランスの定義が広いためです。
ランサーズが定義する「広義フリーランス」には、「過去12か月のうち、本業によらない収入(副業収入)が1円でもあった人」が含まれています。
たとえば普段は会社員で、1年以内に1回だけクラウドソーシングで報酬500円のアンケートに回答した人も含めてフリーランスとみなしているのです。
では「狭義フリーランス」、つまり私たちが一般にイメージするフリーランスはどのくらいいるのでしょうか。
ランサーズは、フリーランスを4つのタイプに分類しています。
このうち、一般的なフリーランスに該当するのは、「自由業系フリーワーカー」「自営業系独立オーナー」の数字を合算した859万人と推測されます。
こちらの数値も、昨年の354万人から2倍以上伸びており、副業ワーカーだけでなく狭義フリーランスも増えていることが分かります。
では、別の調査ではどういった結果が出ているでしょうか。
総務省労働局の労働力調査を見ると、フリーランスを含む自営業主は、2012年から2022年の10年間で100万人近く減少していることが確認できます。
また内閣府発表の「日本のフリーランスについての政策課題分析」をみてみましょう。1985年から2015年にかけて、自営業主全体は減少しています。
以上のように、自営業主は一貫して減少傾向にあります。
ただし、「雇用的自営業(特定の発注者に依存する自営業主)」の人口は増加しているほか、フリーランス人口が急増した2021年のデータはまだ公開されていません。
このように、データによっては「フリーランスが増えた」ことを示す結果もあるものの、別のデータでは「自営業者全体で見れば減った」ともいえる結果が出ています。
ここまでのデータから、フリーランスの人口がゆるやかな減少傾向から、増加に転じた可能性があることが示唆されました。
では、反対に「会社員」の人口はどのように変化しているのでしょうか。労働力調査によると、雇用者(つまり、会社員やアルバイト)の人口推移は以下のようになっています。
このように、雇用者の数は2019年まで9年間右肩上がりに増加してきましたが、2020年には大幅に減少しました。
同調査では、雇用者のうち「宿泊業、飲食サービス業」に従事していた人が多く職を失っているとも示され、新型コロナウイルスの影響を物語っています。
一方、2022年にはコロナ禍からの回復もあり、雇用者人口もふたたび増加に転じました。逆に言えば、2022年にはフリーランス人口も大きく変動している可能性があります。
最後にフリーランスと会社員が日本の全就業者数に対して、どれくらいの割合で存在するのかをみてみましょう。
労働力調査で示された2022年の就業者数は6723万人で、自営業主・家族従業者数は648万人となっています。
就業者の89.9%は雇用者であると示されているため、ここから計算すると日本の全就労人口に占める自営業主の割合は約10%にしかなりません。
また、個人商店や家族従業員などを除いた「いわゆる」フリーランスの数はさらに少なくなります。
ここまでの調査で、以下の事実が明らかになりました。
つまり、たしかにフリーランスの人数は増えているものの、これはコロナ禍の一時的な急増という可能性もあり、「フリーランスが増えすぎている」とまでは言えません。
「これからは個の時代だ!」という風潮はあるものの、数年先になってみないと正確な増減を計るのは難しいでしょう。
先ほど「コロナ禍でフリーランスが増加した可能性」に触れましたが、この点についてはランサーズが発行したこちらのプレスリリースで考察されています。
ランサーズの秋好陽介CEOは「フリーランス実態調査」のデータを考察し、3点を要因に挙げました。
この3点を解説し、最後に筆者がこれまでのデータから感じたオリジナルの考察もご紹介します。
秋好CEOは、フリーランス実態調査のなかで「自営業系独立フリーランスで経営企画をしている人は昨年と比較して9.2%増加、営業を担当している人は8%増加した」というデータに着目。
ここから、「在宅勤務中に自身の働き方を見直した結果、会社に頼らず活躍できるプロフェッショナルな人材がフリーランスになった可能性」を指摘しました。
確かに、プロフェッショナルなスキルと会社員経験が求められやすい営業や経営企画、経理・財務といった職業の増加は、会社員経験のあるフリーランスが増加している根拠として考えられ、妥当な指摘です。
続いて、「副業・複業ワーカーが2020年の708万人から2021年に812万人まで増加した」というデータに着目し、この背景を「在宅勤務が広まり、移動時間がなくなったことから時間に余裕ができた人達が副業・複業を始めたのが原因」と考察しました。
この「移動時間の削減による余裕の創出」という指摘は、データによる裏付けも可能です。
ランサーズは同調査で「副業者の30%が『本業の会社に在宅勤務が取り入れられた』と回答した」ことを明らかにしているほか、国土交通省の鉄道局都市鉄道政策課が発表した鉄道利用者アンケート調査結果によれば、2020年に首都圏を中心に週5日以上通勤している人の割合が35%~53%まで減少しました(2019年は約80%)。
在宅勤務によって生じたすきま時間を副業・複業にあてている可能性が高いです。
秋好CEOは、以下の3項目が2020年に比べて大幅に増加した点に着目しました。
ここから、「すきま時間を使って仕事をする主婦・主夫の急増」があったと指摘しました。
「主婦・主夫のすきま時間」の増加要因は、やはり新型コロナウイルス対策を目的とした外出自粛の影響が考えられるでしょう。
街に出る人の人数は明らかに減っており、たとえばNTTドコモのオートGPS機能利用者のデータをまとめた統計『LocationMind xPop』によれば、2021年8月の東京都市圏における居住・勤務以外(つまり、遊びや旅行)での滞在時間は、都心を中心として広範囲に減少しています。
先ほど、秋好CEOの「在宅勤務中に自身の働き方を見直した結果」として「プロフェッショナルな会社員」のフリーランス化が進んだという考察に触れました。
確かにこうした側面もあるとは思うのですが、個人的にはこうしたプロフェッショナル人材のポジティブなフリーランス化だけではなく、非プロフェッショナル人材が仕事を失った結果のフリーランス化、つまり「消去法フリーランス」の増加もあったのではないかと考えています。
その根拠は、まずフリーランスの増加と雇用者の減少具合です。このなかにはポジティブに独立した層も含まれる一方、コロナ禍で会社が立ち行かなくなりやむを得ず独立した層、会社から解雇されて独立した層もいるのではないかと推測します。
事実、労働力調査によれば、感染拡大が始まった2020年の完全失業率は前年比で0.4ポイント上がり、リーマンショックの影響を受けていた2009年以来11年ぶりの上昇を記録しました。
以後、2021年の各月も完全失業率は2018年、2019年平均よりも0.4ポイント前後悪化しています。
また、日本労働調査組合の調査によれば、退職者の約5人に1人は「コロナ対策、環境不安」を退職理由に挙げており、会社の先行き不安から泣く泣く退職した人も多いでしょう。
さらに、フリーランス協会がまとめた調査『フリーランス白書2021』でも、フリーランスになった理由の5.2%は「会社から解雇されたため」とあり、解雇/退職者の受け皿になったことでフリーランスの人数が増加した可能性が挙げられます。
この点を踏まえると「フリーランスの増加はコロナ禍の失業率上昇を原因とする一時的なものである」という仮説も成り立ちそうです。
本論の要点を改めて整理します。
さまざまなデータから読み取れるのは、非常に強烈なコロナ禍の影響です。フリーランス業界にはポジティブな影響が多かったものの、社会全体がダメージを受けていることは疑いようもなく、先行きが明るいとは言い切れません。
ただし、2023年にはようやくコロナ禍が収束したと言っても過言ではなく、アフターコロナの時代にフリーランスや会社員の人口に関するデータがどう変化するかは要注目です。
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(執筆:齊藤颯人 編集:木村優美)