エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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近年、副業を認める企業が増えたことで、会社の仕事をしながら2つ以上の仕事を掛け持つ方が多くなっています。副業で得る収入が数十万円になるケースも珍しくなく、どうしても「税金」のことが気になるかもしれません。
しかし、かつては副業会社員の「王道」とされていた節税方法が、近年ではかなりハイリスクになっていることをご存知でしょうか?
そこで今回は、副業会社員の節税をめぐるトレンドの変化と、正しく上手に節税するための方法を詳しく解説します。
FP事務所『トージンFP事務所』代表、ファイナンシャル・プランナー。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身も現役フリーランスで、当事者ならではの情報発信に強み。
目次
結論から申し上げますと、会社員の方が副業で節税できるのは本当です。ただし、かなり限られた条件でのみ節税が可能なうえ、いわゆる「副業節税(以下、副業会社員の普通の節税と区別するため、この表現を使います)」は社会問題となっているのが現状。国税庁も特に目を光らせている分野です。
では、そんな「副業節税」の仕組みを解説します。
副業で得た収入は、大きく分けて「事業所得」と「雑所得」に分類されます。しかし、この2種類の所得には定量的な分類の線引きがなく、これが「副業節税」にも大きく関係してきます。
線引きの基準については後で触れますが、収入を「事業所得」と考えたほうが圧倒的に有利です。具体的には、事業所得として認められると数々の特典がある確定申告方法「青色申告」を利用でき、最大65万円控除の「青色申告特別控除」の対象となります。
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さらに、事業所得として認められた場合、事業で発生した赤字を別の所得で得た利益と通算する「損益通算」という仕組みが使え、納税額を減らせます。
この仕組みを活用し、以下のような節税スキームがメジャーになりました。
副業の赤字を申告するだけで、所得税や住民税の算出基礎となる所得の金額が一気に減ります。所得が40万円減れば所得税・住民税の負担額がそれぞれ数万円減るため、かなりの節税効果があることがお分かりいただけるでしょう。
もちろん、赤字を出す過程で支出があるのも事実ですが、ここに家賃やネット代などの支出を含めれば、実質的な支出額はそれほどでもありません。ほぼノーリスクで節税できるといえます。
そのため、最初から事業として運営する気は一切なく、ただ会社員としての給与収入を節税するためだけの副業を始める会社員が増えたのです。
これが、いわゆる「副業節税」の仕組みです。……しかし、「確かに節税効果はすごいけど、ちょっとズルくない?」と思われた方もいるかもしれません。
じつは、この「副業節税」は結論から言えばほぼアウトなのですが、これまでは法や制度運用の抜け穴を突いて成立していたものでした。
では、上記で見た副業節税の問題点を解説していきましょう。
まず、上記スキームの基本的な成立要件は、副業収入を「事業所得」にすることが絶対でした。しかし、そもそも論として、大半の副業で得た収入は「雑所得」に分類されるのが一般的で、「事業所得」とはみなされないことが多いです。
この線引き基準を詳しく解説すると長くなるのでカンタンにまとめると、「片手間の仕事(たとえばスキマ時間だけ)ではなく本業と同じくらいのリソースを割いて、本業に並ぶような収入を手にしており、社会的にも認知される仕事」で得た収入が事業所得になります。
つまり、普通の副業でも事業所得に認定されるのが怪しいレベルなのに、「赤字前提のちょっとした副業」が事業所得になるはずもない、といえます。
「じゃあ、なんで今までは事業所得で申告できたの?」とツッコまれそうですが、日本の税制ではあくまで納税者が自主的に申告した内容に基づいて税額が決まります。そのため、明らかにルール違反だが、税務署に見逃されていただけというのが答えです。
副業の所得区分そのものについては、健全に副業をしている人も影響を受ける問題です。そのため、「国として副業を推進する以上、真っ当な副業収入は事業所得と認めていいのではないか」という声もあります。
そのため問題点1については、判断に賛否が分かれる部分でしょう。
ただし、もう1つの問題点である「赤字前提の事業を運営している」という部分は、法的にはともかく倫理的な問題が否めません。
もちろん、事業というものは見込み通り利益が出るとは限らず、どれだけ努力しても赤字が出てしまうことはあります。「赤字の事業主を罰する」ことはあり得ないでしょう。しかし、最初から赤字前提の副業を運営することは、批判されてもやむを得ないのかなと思います。
税制の公平性を考えても、あまり褒められたものではありません。
以上のように、副業を活用した節税には大きな問題がありました。
こうした事態を前に、国税庁は“「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)”を発表。詳細な解説はしませんが、「副業収入が300万円を超えない場合、原則は所得区分を雑所得と判断する」という通達が出されました。つまり、副業収入を事業所得とみなす、損益通算のスキームが改めて否定されたのです。
しかし、上記の「副業節税つぶし」と思われる通達は、普通に副業をしている人にも大きな影響がありました。そこで国税庁に非難が殺到し、上記の通達は「必要な帳簿などの記帳・保存をしている場合、原則は所得区分を事業所得と判断する(=収入基準を必要としない)」という形に変更されました。
こうして、普通に副業をしている人は、今までグレーだった「副業の事業所得算入」がほぼ認められ、青色申告の特典などを利用できるようになったのです。
ところが、国税庁はこの通達を出すと同時に、帳簿を記帳・保存していても雑所得と判定されるケースがある、2つの例外パターンを公表しました。具体的には以下の通りです。
- 収入が少ない場合
たとえば、副業の収入金額が、例年300万円以下で主な収入(給与収入)に対する割合が10%未満の場合は、「収入が少ない場合」に該当すると考えられます。
※「例年」とは、だいたい3年程度の期間。- 活動に営利性が認められない場合
例年赤字で、かつ赤字を解消するための取組みを実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます。
※「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動などを実施していない場合をいいます。(参考:国税庁)
つまり、「収入が少ない人」「毎年赤字の人」は帳簿を記帳・保存していても個別の事例をもとに判断される(=雑所得として認定される可能性が高い)と通達されたことを意味します。
ここまでの内容を理解できた方なら分かると思いますが、上記の例外は完全に「副業節税つぶし」と言って差し支えないでしょう。国税庁も神経をとがらせており、今後は摘発が加速するリスクがあります。
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ここまで「副業節税」のスキームと問題点、法令解釈の変更を見てきました。
しかし、誤解しないでいただきたいのは、あくまでほぼ赤字の副業を使って本業の収入を節税する「副業節税」がNGとなっただけに過ぎないこと。
逆に、それなりの金額を稼ぎ、きちんと帳簿を保存している人の副業で得た所得自体は、むしろ節税しやすくなっているといえます。
以下では、副業で得た所得を正しく節税するためのポイントを解説します。
先で見た通達により、帳簿を保存していれば事業所得として認められる、つまり青色申告を利用できる可能性が高いことがわかりました。となれば、青色申告を利用しない手はないでしょう。
青色申告の最大65万円控除、少額資産の一括経費計上などは節税効果が大きく、ぜひ活用したいものです。
青色申告は帳簿付けの方法が厳格で、多少の手間はかかるものの、国税庁が「キチンと帳簿を記帳・保存することが、事業所得と雑所得の線引き基準」と宣言している以上、帳簿をしっかり付けるに越したことはありません。
青色申告もしっかり帳簿付けした人のための特典なので、副業の事業所得認定基準を守るための帳簿付けが、自然と青色申告につながるといえます。
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副業で得た収入もフリーランスが本業で得た収入と同じように、事業にかかった経費を計上し、収入から差し引くことで所得が減り、節税につながります。
副業にかかった経費は少額になることも多いと思いますが、たとえば副業を「自宅の仕事部屋で行った」場合、自宅の家賃や光熱費、ネット代などの一部を経費に計上できる可能性があります。
以下では、経費となる可能性がある費用の一例を紹介します(全額経費にならない費用も含む)。
- 事業にかかる仕入れ費用
- パソコンやプリンターなどの電子機器代
- プリンターのインクや文房具などの消耗品代
- 副業に関係する書籍・雑誌・新聞代
- 事業に関係のある勉強会への参加費
- 仕事に関わる交通費
- 打合せにかかった飲食代
- 営業先や取引先へのお土産代
- 自宅の家賃や水道光熱費
- 仕事にも使う自家用車にかかる費用
- 個人と家庭で兼用して使っている固定電話やインターネット料金、スマホ代
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ふるさと納税やiDeCoは副業をしていない会社員でも活用できる制度ですが、副業によって所得が増え、納税額も増えてしまった場合、活用効果がより大きくなります。(どちらも限度額はあります)
ふるさと納税で支払った費用は「寄付金控除」、iDeCoで支払った費用は「小規模企業共済等掛金控除」として控除が受けられるので、増えてしまった納税額を圧縮できます。
どちらも単に税金を減らすだけでなく、ふるさと納税の場合は「返礼品」が、iDeCoの場合は「非課税の老後資金」が得られるため、ぜひ利用したい制度です。
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ここまでの説明から「副業で赤字を出しても節税にはならなくなったんだ!」と思っている方もいるかもしれません。
たしかに副業で赤字を出しての節税はほぼ否定されましたが、国税庁の通達を見ると「3年程度あんまり売上が出ておらず」「3年程度赤字改善の取り組みがない」場合は基本的にNGと言っているだけ。
つまり、「順調に副業をしていたのに、何かしらの事情で1年だけ赤字になってしまった……」というようなイレギュラーの損益通算は否定されていません。
やむを得ない場合は損益通算することでかなり節税効果が見込めますので、遠慮せず実行して事業を立て直しましょう。
いわゆる「副業節税」については繰り返し問題点と危険性を語ってきましたが、確定申告を含めた税制はかなり複雑。「副業節税」以外の部分でも、気を付けるべき点はたくさんあります。
そこで、以下では副業収入を節税する際の注意点を解説します。
会社員の場合、「経費」といえば「支払っても後で会社が支給してくれるもの」という認識があるかもしれません。
しかし、副業の場合の経費は、あくまで「自分の懐から支払うもの」であり、結果として多少税金が安くなる効果しかありません。会社員と同じ感覚で経費をバンバン使ってしまうと、あっという間に利益が急減してしまう可能性があります。
また、経費率が高すぎると、税務署から「過剰な経費」と計上を否定される可能性も……。経費は必要なぶんだけ支出し、利益を確保しましょう。
「飲食代は経費」「家賃も経費」など、経費の扱いについて書かれた記事がネット上には多く出てきます。
しかし、実際には「経費か否か」の判断基準はそれほど単純ではありません。飲食代一つをとっても、副業の職種や働き方、同伴人数や飲食時の会話内容など、判断の材料は非常に多いです。また、「家事按分」という手法により、「支出の一部だけが経費になる」ということも起こります。
そのため、限界まで節税しようと考えると、税金の素人ではギリギリを攻められません。徹底的に節税したい場合は、税金のプロである税理士などに相談するようにしましょう。
ちなみに、わざとプライベートな費用を経費として計上していたり、実際には使っていない費用を架空計上していたりした場合には、追徴課税などの重いペナルティを課せられるおそれがあるため注意が必要です。
経費を計上するためには、「いつ」「どこで」「なんのために」「いくら」使ったかを把握する必要があります。その証拠になるのがレシートや領収書なので、もらった後すぐに捨てないクセをつけましょう。
レシートや領収書は確定申告の際に提出する必要こそありませんが、税務署からのおたずね、いわゆる「税務調査」が入った際に証拠として必須となります。
また、青色申告の場合は帳簿類などの保存も厳格に行う必要があり、領収書や帳簿などは基本的に7年間保存するようにしましょう。
一時は「副業節税」が王道の税金対策といわれ、現在でもこの手法が紹介される機会は多いです。しかし、近年は国税庁の対策強化も進み、今後はスルーされずに摘発される可能性も十分あるでしょう。リスクを考慮すると、あまりおすすめできる手法ではありません。
「副業節税」ほどの効果はありませんが、普通に副業を行って青色申告の対象者となり、手取り収入を増やして総収入に占める税金の割合を減らすことが、ある意味で一番の税金対策といえるでしょう。
ただ、インボイス制度の開始などもあり、副業をめぐる税制は年々複雑になっています。不安な方は、開業前の時点で一度税理士などのプロに相談し、アドバイスを受けるのもいいかもしれません。
(執筆:ようすけ 編集:宮崎駿 監修:齊藤颯人)