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「フリーランスとは誰でもなれるものではない」池田紀行が語る、真の強みの見つけかた

もしも社長がフリーランスになったら
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さまざまなビジネスを立案し、方針を決めて舵を切る。そんな経営者の方々のマインドは、自らの手で道を切り開くフリーランスと通ずるものがあります。

そこで、会社の社長としてご活躍されてきた方々に、「もしも自分がフリーランスになるなら」と仮定して、インタビューを実施することにしました。

今回ご登場いただくのは、株式会社トライバルメディアハウス代表・池田紀行さん

大手クライアントのソーシャルメディアやデジタルマーケティング戦略を支援する池田さんは、ご自身が29歳のころに一度、フリーランスをされていたことがあるのだとか。

もしいま、池田さんが30歳に戻れるとしたらどのようなフリーランスを目指すのか。お話を聞いてみると、厳しくも愛のあるアドバイスが次々に飛び出しました。

【「もしも社長がフリーランスになったら」ルール】

  • 年齢:30歳
  • 人脈:最初はフリーランス独立前の、前職の繋がりのみ
  • 雇用:法人登録はOK、会社として社員を雇用するのはNG(業務委託はOK)
  • 一般的にフリーランスとされる働き方を行う
池田 紀行
池田 紀行

株式会社トライバルメディアハウス代表。1973年生まれ、横浜出身。ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手クライアントのソーシャルメディアやデジタルマーケティング戦略を支援する。近著に『売上の地図〜3万人を指導したマーケティングの人気講師が教える「売上」を左右する20のヒント〜』(Twitter:@ikedanoriyuki

聞き手:ゆぴ
聞き手:ゆぴ

フリーランス4年目のライター。フリーランスの将来設計が気になる今日のこのごろ。(Twitter:@milkprincess17

「自分に仕事が集まってくる状態」でなければ独立するな!

ゆぴ:
池田さんが、もしいまからフリーランスになるなら、どのような職種を選んで独立しますか?

池田:
じつは僕、29歳のときに一度「マーケティングコンサルタント」としてフリーランスになっているんですよ。なので、もう一度同じ職種で独立します。そもそも、これまでの経歴になかったことで独立するのはかなり優秀な人物でない限り難しいんじゃないですかね。

フリーランスとは誰でもなれるものではない、と僕は思うんですよ。

▲!!

池田:
たとえば、「トンネルの部材を売っているBtoB企業で営業をしていた」人の場合、実績を出していたり、もっとこうやったらうまくいくと自律的に考えていたりするのであれば、「BtoBの営業コンサル」として独立できる可能性があります。

でも……言葉を選ばずに言うと、大半の人はトンネルの部材の営業しかできない状態だと思うんです。

何かしらのテクニックや考え方を身につけたとしても、そのなかで「圧倒的な実績」を出していたり、誰もが真似できる「再現可能なフレーム化」などに成功していたり、人一倍の成果がない限り難しい。

一般的な職業スキルを身につけただけでフリーランスになれるほど、世の中甘くはないんです。それなら、もう1社挟んで独立できるようなスキルを磨いたほうがいいと思います。

ゆぴ:
フリーランスになりたいのなら、ポータブルスキルを身につけられるような職種に移ったほうがいいと。

池田:
「何にも縛られない働き方がしたい」とフリーランスになる人は多いですが、スキルが中途半端だとライスワーク(お金のための仕事)ばかりになってしまう。

外注先の一社(一人)として、正当ではない低い報酬で依頼されたり、理不尽な要求をされたりしても、必死に案件をこなす宿命になりかねないです。

とくに、仕事のない独立当初はライスワークをせざるを得ませんよね。結局、きちんとスキルを持っていて、自分に仕事が集まってくる状態ではないのなら、独立すべきではないと考えます。

ゆぴ:
うぉぉ、真理だと思います……。池田さんが独立されたときはどうでしたか?

池田:
僕がいたコンサルティングファームは、ラッキーなことに独立することを推奨していたので、フリーランスになっても業務委託契約をしてくれて、当時の給料の半分は固定給としてもらえていました。

週末には中小企業診断士の資格学校でアシスタント講師をしていたので、そこ経由で仕事をもらうこともありました。

だから営業は一切せず、すべて紹介だけで安定的に仕事を得られていました。初年度で目標の1,000万円の売上を達成したかな。僕の場合はラッキーでした。

▲盤石すぎるフリーランス1年目……

20代は「WANT」ではなく「CAN」でキャリアを形成せよ

ゆぴ:
ちなみに、さまざまな職種があるなかで、池田さんはなぜ「コンサルタント」を選んだのですか?

池田:
強いていうなら、「歪んだモチベーション」ですね。

▲どゆこと?

池田:
僕の父は大工だったので、僕も大工になるつもりでした。僕の親戚は中華料理屋、八百屋、肉屋など、商店主ばかり。

スーツを着て働く大人に触れることなく大人になったので、自分も将来は社長になるんだと自然に思うようになっていました。まあ、社長と言ってもいわゆる「企業の社長」ではなく、大工や店主のイメージでしたけどね。

ところが高校3年の夏、父に「高校を卒業したら大工になるわ」って言ったら「お前に大工は向いてない」と言われ、悩んだあげく、結局推薦で入れる大学へ入学し、就職をして英会話スクールの営業になりました。

そこでは営業成績が1,000人中3位になって拠点長にもなったのですが、東北地方の開拓を担当するため仙台へ転勤したことで、彼女にも会えず、近場に友だちもおらず、結果ものすごく暇になったんです。

そんなとき、何気なく読んだビジネス誌『BIGtomorrow』に中小企業診断士に関する資格学校の広告が載っていて。

それを見て、「そういえば、俺は社長になりたかったんだよな」「でも、俺は社会のことを何も知らないし、こんな自分が社長になったらすぐに会社を潰してしまう」「経営の勉強をしたいけれど何から手を付けたらよいかわからない」「この資格を勉強すれば、企業を助ける経営コンサルタントの基本知識が身につく」「経営コンサルタントのスキルを持った社長(自分)が会社を経営すれば倒産しないかもしれない!」

……と、いま思えば猛烈に安易な考えで資格の学校へ通うことにしました。

▲そんな経緯が……

池田:
当時、僕のクラスには25人くらいの生徒がいました。全員、一流大学を卒業して一流企業に勤めているエリートばかり。「自分は猛烈に狭い世界で生きてたんだ!」「ビジネスの世界で自分は底辺にいるんだ」と初めて気づきました。

当時の中小企業診断士資格のストレート合格率(1年で一次試験から二次試験まで合格する率)は4%程度。「エリートたちが集まるこのクラスからたった1人しかストレート合格できないのか……」と愕然としたのを覚えています。

自分がその1人になるためには、エリートたちが勉強しているときは当然勉強し、遊んでいるときも勉強し、寝ているときも勉強しなければとてもじゃないが合格なんてできない。

23年間生きてきて、初めて死ぬ気で勉強をしました。

池田:
結果、初年度は駄目でしたが、2年目に無事中小企業診断士の資格を取得することができました。資格の勉強を通じてコンサルに興味を持ち、「社長になる前にコンサルを経験しておこう」と初めての転職活動を開始しました。

でも、当時登録したある有名な人材エージェントから「あなたの学歴と職歴でコンサル業界への転職は100%無理です」と言われまして。

ゆぴ:
それはひどい。

池田:
それで火がついて、「この社会で勝ち上がるためには、20代で独立して年収を1,000万円稼ぐしかない!」と決めたんですよ。

当時はミッションもなく、ただ「年収1,000万円」ということしか考えていなかった。年収と年商の違いすらわかっていませんでした。

でも、年収1,000万円は日本のサラリーマンの3〜4%しかいないということはなんとなく知っていました。じゃあその3〜4%に20代で到達できたら、自分も一定のところまで来たという自信を持てるんじゃないかと考えたんです。

いま思い返すとこっ恥ずかしいですが、若いときはそういう目標でもいいんじゃないですかね……。

池田:
二宮尊徳の「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉があるのですが、すごく高尚な目標があっても、結局飯が食えなくなったら持続不可能じゃないですか。

自分が食べることに困っているときにSDGsとか意識できないですよね?

ゆぴ:
たしかに……。

池田:
いまはお金よりも自分が豊かに満たされることが大事だという人も増えているけど、人生の豊かさとは選択肢の数であり、数を増やすにはお金が必要だと思うんです。

持続可能な基盤を作り、ちゃんと稼いだうえで、やりたい仕事を増やしていく。

とくに、若いときは「CAN=できること」がないんだから、「WANT=やりたいこと」にこだわらずに「CAN=できること」を増やすことに注力したほうが、いいキャリアが築けると思います。

フォロワーを増やすよりも「WHO」の認知を上げる

ゆぴ:
池田さんがいま30歳に戻って独立するとしたら、まずは何から着手しますか?

池田:
僕は、SNSのフォロワー数が多いことはマイナスとは思わないけれど、フォロワーが仕事を発注してくれる人だとは思わないですね。

みんな不安がってTwitterを伸ばすけれど、たとえフォロワーが1,000人を超えても1万人を超えても、その人自身に「CAN=できること」が何もなかったら意味ないですからね。

▲初期にTwitter頑張っていた筆者

池田:
それよりも、自分の専門領域でnoteを書きまくって、「この人は誰なのか知らないけれど、このnoteは役に立つぞ」と「WHAT」を認知してもらう。

そうすると、「このnoteを書いている人は信頼できそうだ」「このテーマだったらこの人だ」と「WHO」が認識されて、仕事の相談が来ると思うんですよね。多くの人は順番が逆。BtoBにおける一番重要なKPIは「信頼」です。

ゆぴ:
へぇ、noteですか!

池田:
noteやブログのいいところは、記事がちゃんとストックされるところですからね。

Twitterでは「あれができます」「これができます」と虚勢の張り合いもよく起こっているように感じますが、仕事を受注するにはスキルだけでなく、人間性を知ってもらうことも大事じゃないですか。

いまの時代は知識がどんどんコモディティ化していて、知っていること自体の価値はどんどん下がっている。知識だけで稼ぐことはどんどん難しくなってきています。もっと別のところを伝えていかないと。

ゆぴ:
たしかに。ちなみに書く内容はどのようなことを?

池田:
自分の専門領域のことで、周りの人が困っていること。「自分が書けること」を書く人が多いですが、相手が望んでいなければ読んでもらえないので「人が求めていること」を書く。

ちょうど書籍にも書いたのですが……あった、これこれ。

▲池田さんの最新著書『売上の地図』好評発売中です

池田:
自分の強みと顧客ニーズが重なり合うところが、真の強みなんです。だから、「お客様が求めていて、競合が書いていなくて、自分にしか書けないもの」に特化して書きつづければ、必ず仕事は舞い込みます。

「いいnoteを書いているはずなのに仕事が来ない」場合は、いいnoteが書けていないのだと思います。

……そうすると、「何もない僕はどうしたらいいですか」という質問が来そうですが、まずは自分の強みを見つけてください。そして自分の強みは、先ほどお伝えしたとおり、「CAN=できること」を増やすことで徐々に形成されていきます。

ゆぴ:
ストレートパンチですね(笑)。

池田:
ただ、勘違いしてほしくないのは、決してうまい文章である必要はないということです。

文章で飯を食う作家になるわけではないので、多くの人にとってわかるように書くことができていればいい。それでも書けないって言い訳している人は、それまでです。

https://note.com/ikedanoriyuki/

池田さんのnote。対談コンテンツやマーケ論、たしかに池田さんにしか書けないnoteだ……

活躍できるフリーランスは「EQ」が高い人

ゆぴ:
最後に、池田さんが思う「活躍できるフリーランス」の条件を教えてほしいです!

池田:
……元も子もないことを言ってもいいですか?(笑)

僕は、活躍できるフリーランスというのは、「EQ」が高い人だと思うんですよ。

ゆぴ:
EQ?

池田:
心の知能指数のことです。他人の感情を感じ取ることができたり、自分の感情をうまくコントロールできたりする能力を指します。

要するに、「コミュニケーションを取っていて気持ちいいな」「一緒にいて心地いいな」と思ってもらえる力ですね。

▲も、元も子もない!

池田:
フリーランスにおいては、仕事が取れるかどうかが一番大事なスキルだと思うのですが、仕事には絶対にコミュニケーションが発生するじゃないですか。

だから、「CAN=できること」があることは前提として、愛嬌があったり、一緒に飲みに行きたいと思ってもらえたりするような人は、長くフリーランスとして活躍できるのではないでしょうか。

ゆぴ:
それは培うのが難しそうだ……。後天的に身につけられるものなんですかね?

池田:
そこなんですよ! 努力や訓練によって、70点から75点くらいにはできると思いますが、30点から75点にするのはなかなか難しい気がします。だからこそ貴重だし、EQが高い人はすごく有利だと思います。

なので、高いEQを持っている人はぜひ有効活用していただいて。そうではない方は、ぜひ他のスキルを研磨していってください!

▲ありがとうございました!

「きちんとスキルを持っていて、自分に仕事が集まってくる状態ではないのなら、独立すべきではい」

「若いときは『CAN=できること』がないのだから、『WANT=やりたいこと』にこだわらずに『CAN=できること』を増やしてほしい」

など、池田さんの愛の鞭は夢を抱きがちなフリーランス志望にビシバシと響いたのではないでしょうか……。

わたしもフリーランス3年目ではありますが、改めて自分のスキルセットを見直そうと思います!

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(取材&執筆:ゆぴ 編集:少年B 写真:じきるう)

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