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近代マーケティングの父であるフィリップ・コトラーが説いた「マーケティング4.0」。
これは「自己実現欲」を満たすマーケティングだとされます。
本記事は「マーケティング4.0」について、事例や歴史をふまえて解説します。
新時代のマーケティング戦略を考える際にぜひ参考にしてください。
マーケティング4.0について述べる前に、1.0〜3.0の歴史も振り返っておきましょう。
1950年代〜1970年代に行われた「製品中心」のマーケティングを指します。
産業革命により「製品」が数多く生産され、それらを売り込むための販売戦略がマーケティング1.0です。この時代は製品の価格を下げれば購入してもらえたため、生産コストを下げることが積極的に行われていました。
製品と価格で市場をコントロールできたマーケティング1.0の時代は、企業が顧客に対して優位に立てる環境でした。
大量生産・販売により市場が潤い、似たような製品が市場に多く出回るようになりました。そこで消費者が商品に対して選択を行うようになったため、買い手のニーズ満たさなければ商品が売れない時代に変わったのです。
このような「顧客中心」のマーケティングをマーケティング2.0といいます。企業が競合との差別化に力を注ぐことになったため、マーケティングのフレームワークであるSTP分析や3C分析もこの時代に誕生しました。
2010年にコトラーが提唱した「人間中心」のマーケティングです。21世紀に入り環境問題・格差などさまざまな社会問題が深刻化し、企業による社会貢献が意識されるようになりました。企業が行う「世界をよりよい場所にする」ためのCSR活動が消費者の心を動かし、結果的に自社の商品を購入する理由づけになるのです。
コトラーは製品の裏側にあるストーリーや、特定の製品や人に対する共感の追求が重要であると述べています。企業や製品のイメージ・価値を上げるために行うのがマーケティング3.0です。
顧客の「自己実現欲」を満たすマーケティングを指します。自己実現欲とは、人が潜在的に持っているものを開花させて、自分がなり得るものになり切りたいと感じる欲求のこと。つまり、自分らしく生きたいと思う気持ちです。
マーケティング4.0は顧客の理想とする自分と、企業が提供できるイメージの合致が求められます。顧客の自己実現を後押しする商品やサービスを開発できるかが鍵となるのです。
これまでのマーケティングにおけるカスタマージャーニーとして、サミュエル・ローランド・ホールが提唱した「AIDMA」(注目→興味→欲求→記憶→行動)や、デレク・ラッカーが提唱した「4A」(認知→態度→行動→再行動)がよく使われていました。
しかしコトラーは、マーケティング4.0時代にふさわしい新たなカスタマージャーニーである「5A」を提唱しました。「5A」の枠組みは以下のとおり。
- AWARE(認識する、知る)
- APPEARL(記憶や印象に残る)
- ASK(調べる)
- ACT(購入する)
- ADVOCATE(周りに推奨する)
市場のデジタル化、SNSの普及が進んだ今、インターネット上の口コミやレビューを調べる(ASK)プロセスを選択する顧客が増えています。これはこれまでのカスタマージャーニーモデルではあまり考えられていなかったプロセスです。
また、マーケティング4.0は製品の「認知・購買」を最終目標としていません。自社製品のファンになってもらい、SNSを利用して製品を「推奨」してもらうことをゴールとしているのも大きな特徴です。
Appleは数々の革新的な製品を発表。徹底的に余分な機能を排除したスマートなシステムやデザインが顧客の心を掴み、他社とは一線を画すAppleブランドの確立に成功しました。今ではApple製品を持つことがひとつのステータスであり、Apple製品が「スマートでかっこいい自分」に近づくための手助けとなります。
NIKEは世界のトップアスリートたちに自社の製品を試用してもらい、顧客に「あのアスリートが使うくらい性能が優れている」「カッコいい」という価値観を持たせることに成功しています。同じNIKE製品を使うことで「あのアスリートのような人間に近づける」という自己実現欲を叶えたのです。
メルセデス・ベンツは、車を単なる道具としてではなく、ベンツを所有することで「どういった喜びを得られるか」「どのような自己実現に繋がるのか」を顧客に提唱し続けました。ベンツを所有する喜びによって、日常生活が華やかになるイメージを顧客に植え付けられたのです。
レッドブルはCMやイベントをとおして、「理想の自分になるための飲み物」というイメージを視聴者に持たせることに成功。「レッドブル翼をさずける」という夢のあるキャッチコピーとともに、アーティストやアスリートにフォーカスを当てることで、レッドブルを飲むことが自身の理想とした姿に近づくと思わせるのです。
自分のやりたいことや好きなことが尊重されやすくなった現代において、自己実現欲を満たすマーケティングの手法は今後ますます重要視されるでしょう。
今回紹介したマーケティング4.0を参考に、マーケティング戦略を考えてみてください。
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