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リモートワークが浸透し、「自宅オフィス」を整えるビジネスパーソンが増えています。しかし、6畳ワンルームや、家族も同居する家をオフィス化するのは難しいと感じる方も多いでしょう。
今回は、自宅オフィスのレイアウトに工夫があるフリーランスの実例をもとに、快適な自宅オフィスの整え方や、デスク周辺の工夫ポイントを紹介します。
目次
オフィスで仕事し、家に帰る。当たり前だった日常がコロナ禍をきっかけに見直されはじめたことで、最近注目されている言葉が「自宅オフィス」です。
自宅オフィスとは、「自宅を働きやすい環境に整えること」や、「自宅住所で法人登記して自宅をオフィスにすること」を指した言葉です。
いずれにせよ自宅が職場になれば、会社員かフリーランスかに関わらず、効率よく仕事できる場所を整えなければなりません。しかし周囲の声を聞いてみると、自宅オフィス化に悩みを抱える人も多いようです。
コロナ禍によって、リモートワークの必要性は急激に高まりました。自宅の準備が整わないうちに自宅で働くことを余儀なくされてしまった人は、作業に適したパソコンやWebカメラ、机や椅子などの費用捻出に頭を抱えているようです。
会社によってはリモートワークにかかる費用をサポートしてくれる制度もあるようですが、いままでノマドワークをしていたフリーランスなどの場合は、後ろ盾もありません。また、住んでいるマンションのインターネット回線が不十分など、引っ越しを検討しなければならない課題を抱える人も少なくありません。
そもそも、私たちが暮らす住宅用物件の間取りは、オフィスに向いていません。
リビング、ダイニング、寝室といった目的を持つ部屋にオフィス環境を作ると、配線やレイアウトの都合が悪くなることは珍しくありません。また、そもそも必要最低限のスペースで暮らしていた方は、自宅オフィスにするスペースを捻出することすら難しいと感じているようです。
暮らす場所にオフィスを構える。こうして改めて考えてみると、自宅オフィスは一見ハードルが高いことのように感じます。
レンタルオフィスやコワーキングスペースなどのサービスも充実した昨今、あえて自宅オフィスを構えるメリットとは何なのでしょうか。
第一に、コワーキングスペースやレンタルオフィスと比較すると、自宅オフィスはもっともランニングコストを抑えられる選択です。
はじめ設備をそろえるための初期投資は高く感じるかもしれませんが、レンタルオフィスやコワーキングスペースの利用には会費や月額費用が発生し続けます。また、交通費や外出時の飲食費、個室ブースやロッカーのオプション利用費などを加えると、副次的な出費もかさみます。
また、後ほど別章で紹介しますが、自宅オフィスは光熱費や家賃を按分して経費にできることも魅力です。
自宅オフィスは、家事や子育てと仕事との両立がしやすくなります。仕事のスキマ時間を利用して家事をしたり、子どもの様子を見ながら働いたりできるため、いままでフルタイムで働くことが難しかった人でも仕事がしやすくなるでしょう。
また、定められた時間に出勤したり、通勤時の人混みが苦痛に感じたりする方も、比較的ストレスの少ない環境で働くことができます。自分が働きやすいスタイルやペースを選びやすいのは、自宅オフィスのメリットです。
効率的な作業環境や、集中できる条件は、人によってさまざまです。大きなモニターを使いたい、音楽を流しながら働きたい、好きなコーヒーを飲みたい……そんなこだわりを一番叶えやすいのは、自宅オフィスです。
コワーキングスペースやレンタルオフィスの場合、こうした条件をすべて満たせる施設は限られます。また、他の利用者と共用している以上、資料や貴重品の管理には十分な注意が必要です。
他人と合わせることや、他人を意識することで生じるストレスを感じずに働けることは、大きなメリットといえるでしょう。
一方で、自宅オフィスにはデメリットもあります。自宅から離れて働くことと比較したデメリットを挙げます。
自由でマイペースに働ける環境は、裏を返せば公私の切り分けが難しくなることにつながります。
このデメリットは、プライベートの時間を優先するあまり仕事に集中できないリスクと、常に仕事ができる環境で暮らしているため過労になるリスクをはらんでいます。スケジュール管理を徹底すればいいとはいえ、セルフマネジメントはなかなか難しいものです。
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これは自宅オフィスで法人登記する場合に限った話ですが、自宅の住所を登記情報として開示してしまう点には注意が必要です。
またそれ以外でも、オンライン会議の背景などで自分のプライベートに関わる情報が映ってしまうこともあります。いずれもバーチャルオフィスの利用やレイアウトの工夫などで解決できることなので、プライバシー対策への意識は強くもっておきましょう。
ストレスが少ない環境で働ける一方、自宅オフィスは運動不足や生活リズムの崩れといった悩みを引き起こすこともあります。出勤を基準に回っていた生活が崩れると、食事の時間や量が変わったり、朝起きられなくなったりと、体の不調が生じる生活になりがちです。
自宅オフィスで働く場合は、いままで以上に適度な運動や栄養のある食事、睡眠時間の確保などを意識しましょう。
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ここからは実際の快適な自宅オフィス作りについて考えていきます。
まず、どんな職種であってもこれだけは押さえたいという3つのポイントを紹介します。
同じ屋根の下で暮らしと仕事を両立させるためには、何らかの形で公私を区切る工夫が必要です。自宅にただPCを持ち込むだけだと公私の切り分けが難しく、また経費の計上がしづらいなどの問題も出てきます。
たとえ部屋を分けられない間取りでも、パーテーションや家具配置を工夫すればスペースを区切ることができます。まず、どの部分を自宅オフィスにするか決めるところからスタートしてみてください。
決めたスペースにPCやデスクなどを搬入する前に、時間経過も加味したレイアウト計画を立てることが大切です。
たとえば、デスクが入るスペースが確保できたとしても、冷房が近すぎると長時間居られないといった問題が生じることもあります。温度や湿度、生活導線や配線まわりなども考慮しながら、仕事と暮らし双方に支障がないか確認しましょう。
会社のオフィスは働きやすさを考慮したデスクや椅子が備え付けられているので、体の負担について考えることはほとんどありません。一方で自宅オフィスを作る場合も、自分の座高や働き方の特徴に応じて、適したモニタやデスク、椅子を選ぶことが大切です。
「一時的なリモートワークだから」と座卓を選んでしまい、腰痛になってしまった……という例は筆者の身近にもあります。どんな仕事も体が資本ですから、自分の心地よさを最優先にした環境を整えてください。
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このようなポイントをもとに、実際に自宅オフィスで働くフリーランス数名の自宅オフィスのレイアウトをチェックしてみましょう。
部屋に区切りが必要な間取りの場合、ホワイトボードならば清潔感があり、仕事に役立つ壁面を作れます。参考写真の自宅オフィスは、キッチンが抜けて見える部分を隠すように、ホワイトボードを設置しています。
これだけ大きなスペースを隠しても、1万円程度。仕事のメモやアイデアを書くためにも役立つため、一石二鳥です。また、オンライン会議のときに背景に見えるホワイトボードは、オフィスの印象を強めてくれる効果もあります。
法人成りし、複数人が働く自宅オフィスの例です。横長の部屋の対角線上に二人のデスクを設置し、真ん中にパーテーションを置いて空間を仕切ることで、二人が同室で集中できるレイアウトにしています。
夫婦がリモートワークになった場合や、フリーランスチームで自宅オフィスを作りたい場合は、参考写真のようなパーテーションを利用するといいでしょう。また、互いが背面になるようなデスク配置もポイントです。
ロフト付きの部屋でデッドスペースを活かした自宅オフィスの一例です。
ロフトに登るはしごの裏に収納ボックスを隠し、すっきりとしたデスク環境を実現しています。
仕事に使う機材や文房具は、それぞれまとめてトタンボックスに入れて収納。
ワンルームで自宅オフィスを作る場合は、重ねて収納できるボックスを活用することで収納量を増やせます。
こうした自宅オフィスを構えようとするときに気になるのが、経費についてです。
フリーランスは仕事に関わるものを経費に計上できますが、自宅オフィスを作るためにかかった費用はどうなのでしょうか。項目ごとに確認していきます。
PC、Webカメラ、照明、デスク、椅子……自宅オフィスを整えるために購入した家具やアイテムは、すべて経費になります。
これらの物品は基本的に消耗品費や事務用品費などの勘定項目で計上しますが、10万円以上の場合は資産として備品費として計上し、減価償却するといいでしょう。
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自宅オフィスで家賃や光熱費を経費にする場合は、按分します。按分とは、仕事で使う割合を計算し、その分だけ経費として自己申告する方法です。
たとえば、家賃が10万円の家で週5日・10時間ずつ働いた場合、週に50時間働いていることになります。この場合、1週間(168時間)のうち約30%は自宅で働いていることになるので、家賃の30%にあたる3万円を経費計上します。この例では時間で計算していますが、部屋の総面積あたりの自宅オフィスの面積の割合を計算し、その割合から経費を出しても構いません。
こうした按分の考え方を、光熱費にも照らし合わせてみましょう。たとえば、インターネット利用費や電気代は、PC作業が多くを占める仕事の場合、労働時間から割合を計算して経費計上して問題ないでしょう。一方、水道やガスを仕事で使う割合を問われると、なかなか想像できません。こういったシミュレーションをもとに、経費にできるものとそうでないものを分けましょう。
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自宅オフィスの経費判断はあくまで自己申告ですが、自宅と同じ空間である以上、なんでも経費にできるというわけではありません。
筆者がその判断基準について税理士の方に質問したときは、以下のような式を教えてもらいました。
業務で○○に使いましたと説明できる費用 - 生命維持に必要不可欠なもの = 経費
たとえば、「『視力矯正用に買ったコンタクトレンズ』-『このコンタクトレンズをつけなければ日常生活も難しい』」ならば、コンタクトレンズは経費にできません。一方、「『美容記事で紹介するために買った新商品のカラーコンタクトレンズ』-『日常生活では要らない』」ならば、同じコンタクトレンズでも経費になります。
こうした判断基準をもとに、自宅オフィスで使うアイテム一つひとつを判断し、経費に入れてみましょう。
次に、デスク周辺の実例をピックアップします。
快適なデスク環境は、業務内容や個人の好みによってそれぞれです。それぞれ個性が出ているフリーランスのデスク周辺実例を紹介します。
デザインや映像編集などを手がける方は、カメラやタブレットなど周辺機材が多くなります。
参考写真のように、L字型デスクなら必要なものを手の届く範囲に置くことができ、作業スペースがごちゃつくのを防げます。
メインデスクは、マルチタスクに対応しやすい配置に。フリーハンドで電話が出られるよう、スピーカーも設置しています。また、USBなどが抜き差ししやすいよう、必要な配線やハブは前面に出しました。
モニタの高さの底上げをしている台は、小物収納用のボックスです。デスクで散らばりやすいこまごまとしたものを収納できるスペースを作ることで、必要なもののみが配置されたデスクを実現しています。
キーボード操作がメインの方は、アームレストを利用すると腕への負担を軽減できます。またトラックボールマウスを除いて、マウスの可動範囲はデスクいっぱいまで広げたほうが作業しやすいです。
機材だけでなく、パッドなどの付属アイテムを充実させることで、作業時間短縮や疲労軽減を目指すことができます。
クリエイティブな仕事をする方は、オンオフを切り替えやすい環境が大切です。上記参考事例では、仕事に煮詰まったときにインスピレーションを与えてくれたり、頭をリセットできたりする作品を、デスク周辺に配置しています。
またこの事例では、購入時にデスクとセットでついていた椅子ではなく、ミニソファを仕事用の椅子として利用しています。座面の硬度や座高などを試し、自分が心地よい組み合わせを選ぶことが大切です。
最後に、これから引っ越しを検討している方に向けて、自宅オフィスを作りやすい間取りや条件のポイントを紹介します。
実際に自宅オフィスで働く人たちの意見をもとに、見落としやすい条件を紹介します。
自宅オフィスで意外と見落としがちなのが、エアコンの位置や日当たりです。たとえば、エアコンの冷風が当たりすぎる場所しかPCを置けない、日光が当たりづらく体内時計が狂いやすいなどのデメリットがある部屋を選んでしまうと、健康に影響を及ぼすこともあります。
「一日中家の中にいても快適に過ごせるか」「同じ場所に座り続けていても問題がないか」を基準に、部屋の間取りを確認しましょう。
自宅オフィスの効率を左右するのが、ネット環境や配線です。インターネット無料を好条件として打ち出す物件を見かけますが、共同インターネットは不安定で、オンライン会議が落ちやすいなどの問題が出てくることがあります。
また、配線計画を立てておかないと、必要な機材の電源を取れないかもしれません。インターネット環境が充実し、PC周辺に十分なコンセントが確保できる物件を選びましょう。
都心の場合は問題ありませんが、地方で自宅オフィスを作ると、自宅以外で働ける場所が遠方になりがちです。たとえば、近隣で大規模な工事が始まって騒音が続くとき、もしも近場にインターネットカフェやコワーキングスペースがあれば、一時的にそこに拠点を移すことができます。そういった施設がまったくないエリアに引っ越してしまうと、周囲環境の変化による打撃を受けやすいです。
いまから自宅オフィスを地方に構えようと検討している方は、アクセスしやすい範囲内に、仕事ができる最低限の条件がそろう施設があるかどうかを事前にチェックしておきましょう。
急ごしらえで自宅オフィスを作ろうとしてしまうと、体に負担をかけたり、生活しづらいレイアウトになってしまったりとトラブルが起こります。新しい家具やアイテムを購入する前に、快適に働ける自宅オフィスの条件を検討してみましょう。
準備時間や初期費用はかかりますが、その後の仕事は快適に進めることができます。ぜひこの記事を参考に、自分に合った自宅オフィスを検討してみてください。
(執筆:宿木雪樹 編集:少年B 写真提供&協力:KASUMIさん、髙橋みゆきさん、碧月はるさん、宮崎ゆうさん)
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