みなさん、ゲームは好きですか?
ゲームは単に楽しいだけでなく、そのプレイ方法を簡単に学べることも大切です。そのため、プレイまでのオンボーディングが非常に大切になってきます。
昨今では、モバイルゲームからSaaSプロダクトに到るまで、UXを向上させるために多くの戦略が採用されています。例えばゲーム的な体験を一般の商品に応用させた「ゲーミフィケーション」は、ユーザーのエンゲージメントを高めるために人気を集めています。
この記事では、任天堂の初期のゲームから学ぶユーザーオンボーディングの3つのヒントを紹介します。
そもそも、ゲーミフィケーションとは
ゲーミフィケーションには、以下の2つがあると言われています。
- 構造的ゲーミフィケーション:ゲームのメカニクス
- コンテンツゲーミフィケーション:体験のデザイン
e-ラーニングにおけるゲーミフィケーションの専門家であるKarl Kappは、以下のように説明しています。
構造的ゲーミフィケーションは、コンテンツの内容そのものを変えることなしに、ゲーム的な要素を採用して学習者のモチベーションを高める手法をさします。報酬を与えることで学習者のモチベーションを高め、学習内容に集中させることが目的です。
一方コンテンツゲーミフィケーションとは、コンテンツそのものをゲーム的な要素に合わせて変更する手法です。具体的には、物語や各コース前のチュートリアルなどを挿入します。
FitbitのシニアプロダクトデザイナーであるDavid Teodorescuは、ゲーミフィケーションについて7つの主要な要素をあげています。
- ゴール:ユーザーに目的意識や達成感を与える
- ルール:継続的なルールを作ることで、ユーザーに全体の構造に慣れてもらう
- フィードバック:プログレスバー、レベル、アニメーションなどで、ユーザーに進捗を示す
- 報酬:バッジやポイント、スコアボードなどでユーザーに報酬を与える
- モチベーション:ユーザーに一定の行動を促す理由を与える
- 選択の自由:自分で選択することで、ユーザーのやる気をアップさせる
- ミスをしても良い環境:失敗しても良い環境づくりをする
要するにゲーミフィケーションとは、「ゲームとは関係のないプロダクトにゲーム要素を加えることで、ユーザーのエンゲージメントを高める手法」です。
ゲーミフィケーションについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
ゲーミフィケーションとは? 7社の成功事例とともにポイントを解説
Workship MAGAZINE
ゲーミフィケーションが理解できたら、次は任天堂の初期のゲームがユーザーオンボーディングをどのようにデザインしているのか見ていきましょう。
教訓1. プレイをすることでゲームの遊び方を教える

▲出典:Yoni Heisler | BGR
1985年にリリースされた『スーパー・マリオ・ブラザーズ』は、ワールド1-1から始まります。これはゲームをプレイしながら遊び方を学べる、ユーザーオンボーディングの非常に良い事例です。
スーパー・マリオ・ブラザーズの伝説的ゲームデザイナーである宮本茂は、「マリオのコンセプトとゲームの遊び方を理解できるのがワールド1-1である」と説明しています。
このゲームは、『クリボー』(キノコ型の敵)がマリオにさまざまな説明を与えるシーンから始まります。このクリボーは当初のデザインでは存在せず、亀のような見た目の『ノコノコ』がワールド1-1から登場する予定でした。
ノコノコを倒すには、踏みつけてからキックする、という2つのプロセスが必要です。検討の結果、ゲームデザイナーたちは「2つのステップで倒すプロセスは、初めてのプレイヤーには難しい」と判断しました。そのため、ジャンプだけで倒せるクリボーを生み出すことにしたのです。
ワールド1-1の後は、Bダッシュなどより複雑な操作が存在します。ここでのオンボーディングのプロセスを、宮本氏は以下のように説明しています。「スピードをつけてジャンプをしなければいけない落とし穴もつける一方で、落ちてもゲームオーバーにならない穴も採用しました。こうすることで、プレイヤーは失敗しながらゆっくりと学べます。」
その他に「プレイをしながら遊び方を学んでもらうプロセスは、非常に強力な戦略だ」とも宮本氏は語っています。やりながら覚えることで、ユーザーが徐々にゲームにのめり込んでいくのです。
以下の動画で、宮本氏はワールド1-1のデザインについて詳細に説明しています。
【応用事例1】Slackbot

Slackは、『Slackbot』という仕組みでユーザーのオンボーディングのプロセスを簡単にしています。
気さくなロボットと会話をすることで、ユーザーはお知らせ機能の使い方、チャットの一般的な使い方、ダイレクトメッセージの使い方などを学べます。
【応用事例2】Grammarlyのデモ資料

文法チェックサービスである『Grammarly』も、インタラクティブなデモ資料で初心者でも使用しやすいように工夫されています。
実際に資料をいじりながら資料の編集方法を学び、Grammarlyの使い方全般を体験できます。
ここから学べること
やりながら覚えるオンボーディングでは、以下の点を大切にしましょう。
- 真っ白なダッシュボードをいきなりユーザーに見せない
真っ白なダッシュボードをいきなりユーザーに突きつけるのは、ジャンプやBダッシュのやり方を教えないまま、スーパー・マリオ・ブラザーズがワールド4から始まるようなものです。インターフェイスに頼らず、そのプロダクトの使い方をイチからきちんとユーザーに説明しましょう。 - ユーザーにとって中心となる機能を把握する
一番肝心な機能を1つか2つに絞って、その機能をユーザーに100%覚えてもらうよう工夫しましょう。 - 複雑な機能は徐々に覚えてもらう
複雑な操作や機能は、段階毎に徐々にユーザー覚えてもらいましょう。
教訓2. ゲームに不慣れなユーザーのためにデザインする

1987年にコナミがリリースした『魂斗羅』は、8つの難解なステージを突破する必要があり、当時もっとも難しいゲームのひとつとされてきました。
実は初期の任天堂のゲームは、魂斗羅のように難解なものが多かったのです。任天堂の旧代表である岩田聡は、「開発過程での欠陥がゲームを難しくしていた」と語っています。これは現在のゲーム開発の現場でもいまだに起こっている問題です。
岩田氏は以下のように語っています。
NES(Nintendo Entertainment System)世代のゲームは非常に難解でした。ゲームが得意な人間ばかりがゲームを作っていたからです。
ゲーム開発者にとっては簡単でも、ユーザーにとって難しいことは多々あります。自身の能力や経験を切り離して、ユーザーが直感的に使えるデザインを心がけましょう。プロダクトの専門家向けではなく、その分野に精通していないユーザーに向けてオンボーディングをデザインをすることが重要なのです。
【応用事例】HubSpot

『HubSpot』は、新しいユーザーのオンボーディングをデザインする際にユーザーテストを行い、実際のユーザーを開発プロセスに組み込みました。開発チームの内部でテストを行うのではなく、組織外のユーザーに試してもらうことで、より初心者にも分かりやすいオンボーディングをデザインすることができたのです。
HubSpotの元UXリサーチャーであるRachel Deckerは、ユーザーが失敗しやすい行動を徹底的にリサーチし、彼らがつまずきやすい状況を開発者に説明することを心がけていました。ユーザーが直面する困難は、内部の専門家だけでは気付かないことが多いものです。
ここから学べること
全てのデベロッパーは、ユーザーテストを行いながら開発を行うべきです。ユーザーテストの際は、共感を高めるためにユーザー各個人のインサイトを得ることからはじめましょう。テストユーザーに対して最初に自己紹介やプロダクトに関する説明をし、テストの内容をユーザーに伝え、タスクベースのウォークスルーを行って、ユーザーがどこでつまづくかを確認しましょう。
以下、テストの際に気をつけたいポイントです。
- 組織外の人にテストをしてもらう
UserTesting.comなどのツールや、企業とユーザーをつなぐUser Test Festといったサービスを活用し、会社の組織外のユーザーにアプリをテストしてもらいましょう。 - 専門外のユーザーにリーチする
専門外のユーザーにテストしてもらうことで、組織内では見落としがちな部分にフィードバックがもらえます。Customer.ioなどのコミュニケーションツールを活用しましょう。 - オンボーディングのフローもテストしてもらう
質問するだけでなく、プロダクトを実際に触ってもらい、オンボーディングのプロセスを観察しましょう。完成品でなくとも、InVisionなどのツールを使ってプロトタイプやモックアップを作成し、ユーザーに触ってもらいましょう。
教訓3. レベルアップへのやる気を持たせる

「達成したい」という気持ちは、ゲームをプレイする上で主要なユーザー心理です。1989年にリリースされた『テトリス』が分かりやすい事例でしょう。
テトリスは、空から落ちてくるブロックピースを上手く組み合わせて消すゲーム。上手く組み合わせなければ画面がブロックピースで一杯になってしまい、ゲームオーバーとなります。このシンプルなルールが、ユーザーの「達成したい」という気持ちを刺激するのです。
1930年代、ロシアの心理学者であるブリューマ・ゼイガルニクは、レストランのウェイトレスが複雑な注文をよく暗記していることに注目しました。しかし、注文をキッチンに伝え、食べ物をテーブルに届けるなり、ウェイトレスはそれらの注文を全て忘れてしまいます。ゼイガルニクはこのことから、「未完了のタスク」は記憶に残りやすく、完了したものに関しては容易に忘れてしまう人間の心理を発見しました。
テトリスは「未完了のタスク」を上手く使用した中毒性のあるゲームです。完了したタスク(=組み合わせに成功したブロックピース)は消え、未完了のタスクである新しいピースが、空からどんどん落ちてきます。
オンボーディングをデザインする際にも、このユーザー心理は重要なポイントです。
【応用事例】Ghost
ブログのプラットフォームである『Ghost』は、オンボーディングのプロセスでユーザーがカスタムテンプレートを選ぶと、ほぼ100%の確率で有料会員になってくれることに気づきました。では、ユーザーにカスタムのテンプレートを選んでもらうには、どうすればよいのでしょうか?
Ghostは、オンボーディングのフローに簡単なプログレスバーを採用しました。「デフォルトのテンプレートからカスタムテンプレートを選ぶ」ことで、5つあるステップのうちの1つがクリアできる仕組みです。
各ステップを完了するごとに、プログレスバーの色で進捗を確認できます。未完了のタスクがあると、プログレスバーにネガティブスペースが残ることになります。
プログレスバーを使用する前は、試用期間中にユーザーの7%しかカスタムのテンプレートを選んでくれませんでした。それがプログレスバーを導入することで26%に上昇し、有料会員のコンバージョン率が4倍にも上昇したのです。
ここから学べること
- オンボーディングのプロセスに、進捗状況がわかるプログレスバーなどの指標を導入する
ユーザーに視覚的なフィードバックを与え、タスクを完成させたいというやる気を持たせてくれます。 - 未完了のタスクをユーザーにリマインドする
プログレスバーをアプリ上に導入し、視覚的に見えるようにするのがおすすめです。Customer.ioなどのツールを使用し、リマインダーメールを送信するのも良いでしょう。 - ユーザージャーニー全域で進捗状況をリマインドする
オンボーディングだけでなく、ユーザージャーニー全体に渡って、現在進行的にタスクを完了させていくプロセスをデザインし、ユーザーのエンゲージメントを促しましょう。
まとめ

「人々はプロダクトを購入するのではなく、より良い自分自身を購入するのだ」と、UserOnboardのSamuel Hulickは語っています。
ゲームを購入したのなら、小さいマリオをファイアマリオまで成長させたいのがユーザー心理です。任天堂のゲームからオンボーディングの極意を学び、ユーザーがのめり込みやすいプロセスデザインを心がけましょう。
(原文:Jackson Noel 翻訳:Mariko Sugita 編集:Workship MAGAZINE編集部)
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