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UXデザイナーなら押さえておきたい、6つの心理学ワード

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優れたUXは、認知・行動心理学に基づいています。

ユーザーの意思決定の背景にある心理をより深く理解することで、より強力かつ魅力的で効果のあるオンボーディング体験を提供できるでしょう。

とはいえUXを改善するために、本格的な心理学を学ぶ必要はありません。本当に必要なのは、ユーザーがあなたの製品と接触する機会に影響を与える、いくつかの心理的法則への理解です。今回は6つの心理学用語に絞ってご紹介します。

1. 目標勾配効果:ユーザーに前進している実感を与えよう

目標というのは達成に近づけば近づくほど、最後の道のりも険しくなると言います。そこでレースの中間地点で、追い風やハイスコアを出す瞬間の高揚感を与えるよう意識しましょう。

私たちが実際に前進しているかどうかは関係なく、目標に向かって前進しているという思い込みこそが、早く目標に到達するための原動力となる場合があります。これは「目標勾配効果(目標勾配仮説)」として知られています。

世の中の多くの製品は、プログレスバーまたはチェックリストを用いてこの傾向を利用しています。達成度の可視化(例えば始めから一つスタンプが押されたコーヒーのポイントカードなど)や、実際の進歩を通じて、ユーザーがまずは挑戦するように支援することで、特定のタスクを完了できる可能性が大幅に高まります。

実践編

プログレスバーをユーザーに表示することで、ユーザーは既にある程度の工程を完了しており、ゼロから作業を始めている訳ではないと感じます。

これは、登録フォームであろうとオンボーディングチュートリアルであろうと、手元にあるタスクを完了させる動機となります。

例として『Quora』を見てみましょう。 Quoraに新規でアカウントを登録し、Eメールアドレスの確認まで完了すると、40%の作業が完了している状態のプログレスバーが表示されます。

ユーザーがこの進捗状況を見ることで、登録を途中放棄する可能性がかなり低くなります。これが目標勾配効果です。

2. 親密度ヒューリスティック:簡単な言葉を使おう

親密度ヒューリスティックスピークイージー効果)」とは、人間は自分がよく知っている言葉や製品、体験を好むという法則です。この原則は逆にも機能するため、新しい経験や言葉ほど不確実性やリスクと結びつきやすくなります。

ユーザーがある会社や製品に対して慣れ親しんでいる場合、それらの製品を本物だと認識し、利益をもたらすものだと感じやすいでしょう。ユーザーは指示があれば従い、割り当てられたタスクを完了する可能性が高くなります。

また人々は、複雑なフレーズよりも読みやすい言葉を信頼する傾向があります。例えばミシガン大学の研究によれば、名前が読みづらい食品添加物ほど「有害ではないか」と人は疑いやすい傾向があるそうです。

実践編

UXのコピーを簡潔なワードにしておくことで、ユーザーからの信頼を築くことができます。意味をストレートに伝えるためには、できるだけ少ない単語を使いましょう。

Dropbox』のマイクロコピーは単純化されており、ユーザーに一歩引かれてしまうことなくオンボーディングのプロセスとアプリの各ステップを説明しています。

Dropbox Paperは、ユーザーが新しいドキュメントを作成するたびに、空の状態に気の利いたプロンプトとサンプル見出しを表示することで、コピーに人的要素を演出しています。

ちょっとした手間ですが、これらは製品やブランドに対する親しみやすさと信頼を築くのに役立つテクニックです。

3. 授かり効果:ユーザーに自分の経験の所有権を持たせよう

例えば、私があなたに何かプレゼントしたとしましょう。それから私は、そのプレゼントを他の人と自由に交換してもよいと告げます。そのときあなたは、私が贈ったばかりのプレゼントを「あなたの所有物」として手元に置いておきたいですか?

もしくは遠い親戚から、莫大な財産を受け継いだ場合はどうでしょうか。同じように、手放したくないと思いますか?

どちらの質問にも「はい」と答えた方、それは決して珍しいことではありません。人々が「自分のもの」だと認識しているものにより価値を感じる傾向は「授かり効果」として知られています。

実践編

オンボーディングに顧客パーソナライゼーションの側面を付け加えると、オンボーディングの完了率が大幅に向上します。

UXをカスタマイズし、オンボーディングフローの早い段階でパーソナライズオプションを提供しましょう。これにより、ユーザーは製品に対する価値を早い段階から見出し、そこにアプリとの感情的なつながりが生まれ、製品への支払いを継続(または開始)してもらえる可能性を高められるでしょう。

Wealthfront』のモバイル投資アプリは、パーソナライゼーションの好例です。Wealthfrontはパーソナライズのための質問を早い段階で行うだけでなく、(銀行口座情報の入力などの)心理的摩擦が生じる瞬間にもそのカスタマイズしてユーザーを安心させ、自分の個人的動機を思い出させる仕掛けを設けています。

個人的な情報を追加し、好みに応じてカスタマイズすることで、ユーザーはWealthfrontアプリを「自分のもの」と認識し、高い価値を感じるようになります。

4. 選択のパラドックス:ユーザーの選択肢を少なくしよう

あなたはレストランに来たとします。その時、メニューに並ぶ多すぎる選択肢に、圧倒されたことはありませんか? それがまさに、選択のパラドックスに苦しんでいる状態なのです。

選択のパラドックス」は、選択肢が増えるにつれて発生します。私たちは多すぎる選択肢には圧倒され、決定を下すことが困難になります。さまざまな選択肢の中から一つに絞り込むことは精神的に疲れるだけでなく、「もっと良い選択があったのではないか」「重要なことを見逃しているのではないか」などと後々悩む原因になってしまいます。

実践編

納税申告書を記入するときに、どのページがあなたの税務情報に関係あるのかを見つけるのは、なかなか困難でしょう。『TurboTax』は、ユーザー個人についていくつかの簡単な質問をすることで、納税申告書を提出する際の複雑なプロセスから、本人には無関係なオプションを消去してくれます。

不要なオプションを排除するよう設計された別の事例として、瞑想&睡眠アプリ『Headspace』が挙げられます。オンボーディングの流れ全体を通して、Headspaceはパーソナライズのための質問を単純に、率直に、そして限定的に行っているのです。

例えば以下の画面では、過去の瞑想経験に関する質問をしています。もっと多くの選択肢をユーザーに示することも可能なところ、3つの大まかな選択肢を表示するだけにとどめています。その結果、質問への回答が簡単になり、ユーザーがチュートリアルをすばやく進められるようになりました。

5つの質問で済むときに、20の質問をしないこと。インターフェースは簡単にして、ユーザーの満足度をあげること。ユーザーに提供する選択肢は、可能な限りシンプルにするよう心がけましょう。

5. ツァイガルニク効果:未完了のタスクを強調する

ソビエトの心理学者にちなんで名付けられた「ツァイガルニク効果」は、完成したものよりも未完成のものに興味をもつという人間の傾向を示しています。不完全な状況下における心理的緊張は、仕事をこなすのにしばしば必要とされるあらゆる情報を思い出す際にも役立ちます。

実践編

ブログプラットフォーム『Ghost』は、ある特定のタスクを達成した新規ユーザーは、していないユーザーよりも有料アカウント加入率が10倍も高いことに気が付きました。驚くべきことにそのタスクとは、ブログ投稿を公開することではなく、ブログのカスタムテーマを追加することでした。

そこでGhostは、ユーザーにカスタムテーマの追加提案を含む簡単なオンボーディングシーケンスを作成しました。 くわえて、まだテーマを追加していないユーザーにはリマインドのメールを送信しました。

リマインドメールを開いて添付のチュートリアルビデオを閲覧したユーザーの26%がカスタムテーマを追加したのに対し、新規ユーザー全体でカスタムテーマを追加したのは7%でした。

未完了のタスクとして演出することによって、Ghostはより多くのユーザーに行動を起こさせ、最終的にはアカウントの有料化を促すことに成功しました。

6. ピーク・エンドの法則:覚えているのは「頂点」と「最後」

人々は経験を、「強い印象の連続」として覚えています。それはまるでスナップショットのようです。私たちは出来事の経験を平均化する傾向がありますが、その平均の中でも「最も激しい瞬間」「最後の瞬間」は強く印象づけられています。

これは「ピーク・エンドの法則」として知られており、オフボーディング(ユーザーが離脱するとき)にプロダクトデザイナーが利用できる法則です。ユーザーの中でも何人かの人々は、必然的にあなたの製品を離れるでしょう。そして最後に良い印象を演出できるかは、あなた次第なのです。

実践編

MailChimp』がどのようにしてオフボーディングを行うかを見てみましょう。

ユーザーに自分のアカウントを一時停止または完全に削除するオプションを与え(そしてこれらのオプションを見やすくしています)、完全に削除する前にもアカウントからデータをエクスポートする方法のサポートリンクを提供します。またプロセス全体が簡単でナビゲートしやすく、ユーザーにとっては最後まで好印象です。

ユーザージャーニーの最も激しいタイミングの改善を繰り返すことで、UX全体に大きなプラスの影響を与える可能性があります。そして顧客が解約した後でも、積極的なレビュー、紹介、または将来の再購読など、利益をもたらしてくれることも忘れないでください。

まとめ:効果的なUXは心理学に根ざしている

人間という生き物の心理は、複雑どころの話ではありません。しかし同時に、特定の行動パターンに関しては、私たちは驚くほど予測可能な生き物なのです。

ユーザーが自分たちの意思で行動する理由の背後にある心理学を理解することで、より効果的で楽しい製品体験をデザインできることでしょう。

(原文:Katryna Balboni 翻訳:Tomomi Takei)

 

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