ニュースで話題の「国保逃れ」は何が問題?怪しげなスキームに潜むワナ【社労士解説】
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昨今、政治家が「国保逃れ」をしていたことがニュースを騒がせています。
「国保逃れ」とは?
国民健康保険(国保)に本来加入すべき立場の人(例:地方議員など)が、一般社団法人や合同会社の理事・役員に就任して少額の役員報酬を得ることで、保険料負担が相対的に軽い健康保険に入るスキーム。
関西テレビが入手した指南書では「保険料負担を最低水準に落とす」「80万円程度のコスト削減」などをうたい、理事が700人以上登記されている法人の存在も報じられた。
一部の政治家の不祥事として報じられている「国保逃れ」。
遠い世界の話だと感じている方も多いかもしれませんが、実はこの問題、フリーランスを活用する企業や、個人事業主と仕事をしている現場にとっても決して無関係ではありません。
今回は、この「国保逃れ」問題を手がかりに、社会保険や労務の専門家である社労士の立場から、フリーランス活用に潜むリスクを整理します。

開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo)
2026年に入り、世間を騒がせている「国保逃れ」問題。一部の政治家が「一般社団法人の理事」に就任し、不当に健康保険料を安く抑えていたとされる疑惑です。
このスキームの何が問題なのか。
通常、所得が1,000万円を超える高所得層の場合、国民健康保険料は上限(賦課限度額)にあたる年額約110万円に近い金額となります。
ただし、今の制度では、複数の所得がある場合、「社会保険に加入している先」を本業とみなして保険料を算定します。
そこで今回の議員たちは、月額1万円程度の「報酬」を受け取って一般社団法人の理事を務め、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しました。
その結果、一般社団法人の理事が「本業」とみなされることになり、月額1万円程度の収入に応じた負担分として、年間の保険料負担をわずか十数万円ほどに抑えていたのです。
これがただちに違法行為になるかというと、現行法ではなかなか判断が難しいところです。ただ、今回は「社会保険料の削減」を掲げる政党の所属議員が当事者であったことから問題が表面化。
結果として、政党側が「現行制度の趣旨を逸脱した脱法的行為」として処分を下す事態となりました。
これは単なる政治スキャンダルに見えるかもしれませんが、実は、フリーランスを活用する企業にとっても極めて示唆に富む問題です。
業務委託として発注しているフリーランスを「労働者」のように扱う「偽装フリーランス」も、見え方によっては「社会保険料を逃れる行為」(社保逃れ)になるからです。
フリーランスへの発注であっても、実態が「雇用(労働者)」に近いと判断されれば、いわゆる「偽装フリーランス」として企業側が重いペナルティを課されることになります。
「偽装フリーランス」とは?
形式上は業務委託契約や個人事業主として扱われているものの、実態としては勤務時間や業務内容、指揮命令系統などが企業に強く拘束され、労働者に近い働き方をしている状態を指す。
企業側が社会保険料の負担や雇用責任を回避するために「偽装フリーランス」を活用するケースが問題視されている。
具体的にどこからが「労働者」と認められるのかについては、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(厚生労働省)第6章などの指針を確認しましょう。
認識が甘いままフリーランス人材を活用していると、後になってから「労働者」と認定され、過去2年間にわたる保険料をさかのぼって徴収される(遡及徴収)リスクを負うことになります。
参考:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(令和8年1月1日改定)
例えば、月額報酬50万円のフリーランス1人が「労働者」と認められた場合。会社負担分と本人負担分を合わせた社会保険料は月額にして約15万円となり、2年分の遡及額は360万円にのぼります。同じような実態で10名を活用していたなら、一気に3,600万円もの支払いをしなければなりません。
金銭的な損失以上に恐ろしいのが社会的信用の失墜です。
上場やM&A、あるいは大手企業との新規取引といった重要な局面において、外部パートナーとの契約実務は厳格にチェックされます。そこで「社保逃れ」のようなコンプライアンス上の疑義を指摘されることは、企業価値を大きく損なうマイナス要因となるでしょう。
なお、最近はマイナンバーによる当局の捕捉精度も格段に上がっています。もはや、不適切な処理を隠し通せる時代ではありません。
偽装請負は何が問題なの? 判断基準、事例、罰則を解説
Workship MAGAZINE
これからの経営者がとるべき「コスト最適化」とは、「いかに保険料を浮かせるか」を考えることではありません。あくまでも正攻法のビジネスで、自社・フリーランスともに稼ぎ続けられる環境を整えることです。
法的にグレーなスキームの検討にコストを掛けるくらいであれば、その分を報酬に上乗せした上で、フリーランス自身が小規模企業共済やiDeCoを活用することを促すべきでしょう。
法の趣旨を逸脱した手法で「節税」しても、利益は一時的なものに留まります。
怪しげなスキームに頼るのではなく、合法的な資産形成を支援することで、フリーランスが長期的に安心して働ける基盤を整える。その結果として、「この会社と長く働きたい」と感じてもらえる強固な関係性を築いていく。
こうした遠回りに見える戦略こそが、実は最も“コスパのよい”選択ではないでしょうか。
(執筆:もひもひ、編集:夏野かおる)
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