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著作権譲渡ってしなきゃいけないの?譲渡したら何がおきる?【弁護士解説】

著作権譲渡ってしなきゃいけないの?
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デザイナーやライターなら、誰しも必ず発注者に納品した自分の作品を大切に扱ってほしいですよね。

ところが、発注者に対して著作権を譲渡すると、特定の目的のために納品した作品を勝手に配信されたり、改変されたりする可能性があります。

著作権の譲渡をする際にクリエイターが気をつけておくべきポイントについて、唐津 真美弁護士に聞きました。

唐津 真美(からつ まみ)
唐津 真美(からつ まみ)

高樹町法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士。早稲田大学法学部卒。ハーバード大学ロースクール(LL.M.)修了。アート・メディア・エンターテイメント業界を主な顧客とし、企業法務全般を取り扱う。特に、著作権等の知的財産権に関する相談と、国内外の契約交渉やトラブル案件に関するアドバイスが多い。文化庁文化審議会・著作権分科会の専門委員も務める。

Q. 著作権の譲渡とはそもそも何?

著作物が創作された場合、原則として著作物を創作した人、つまり著作者が著作権を持ちます。(※法人著作や映画の著作物の著作権などの例外はあります)

しかし、著作権は譲渡することができる権利です。

物の売買と同じように、著作権を持っている人と譲受人との間で合意が成立すれば、今度は譲受人が著作権者となります。

著作権の譲渡について考える場合、次の2つは別であることを理解する必要があります。

  • 有形のモノ=「所有権」の譲渡
  • 無形の財産権=「著作権」の譲渡

たとえば、あなたがイラストレーターで、顧客から注文を受けてイラストの現物を納品したとします。

この場合、絵の著作者は、創作者であるあなたです。顧客から料金を受け取って絵を引き渡す場合、イラストという「モノ」の所有権を引き渡したことを意味しますが、必ずしも著作権を譲渡したことにはなりません。

作品自体が発注者の手元に移っても、著作権の譲渡を行わない限り、イラストレーターであるあなたは著作権者であり続けます。

フリーランスが発注者と制作委託契約を締結する場合、成果物の著作権が発注者と受託者のどちらに帰属するのか、必ず確認するようにしましょう。

Q. 著作権の譲渡を行うと何ができなくなるの?

発注者が、イラストやデザイン、音楽、記事、コンピューター・プログラムなどの著作物の制作を第三者に委託する場合、発注者は納品される成果物を利用したいと考えています。受託者も、発注者が納品物を一定の範囲で利用されることは了承しているはずです。

問題は「発注者はどんな権利に基づいてその成果物を利用できるのか?」という点です。

発注者が成果物を利用できるようにするため方法の1つが「著作権譲渡」です。

制作委託契約のなかで「発注者から受託者に対して対価が支払われることにより、成果物の著作権が受託者から発注者に移転する」と規定されているようなパターンです。

このような契約の規定にしたがって著作権の譲渡を受けた発注者は、基本的には納品された成果物を自由に利用できることになります。

一方受託者は、著作権を譲渡した後はもはや著作権を持っていないので、発注者の許諾を得ないで次のような行為をすると著作権侵害になってしまいます。

  • 成果物を著作権者(発注者)に無断で複製する(私的利用目的の複製等は除きます)
  • 成果物に手を加えて別の作品の制作に利用する(翻案といいます)
  • 過去の作品として自身のSNSに画像をアップする(公衆送信といいます)

つまり、受託者が成果物の著作権を発注者に譲渡すると、自分の作品であるにもかかわらず自由に利用できなくなってしまうのです。

Q. 著作権の譲渡をしたくない場合どうすればいいの?

制作委託を受けて発注者のために成果物を作る場合、著作権譲渡をしなくてよい方法もあります。

それが「ライセンス方式」です。

ライセンス方式をとると、制作された成果物の著作権は受託者が保持し、発注者は受託者から許諾を得た範囲で成果物を使用する権利関係になります。

この場合、発注者に独占的に利用権を与えた範囲では受託者が成果物を利用することはできなくなる点に注意が必要です。

ライセンスといっても、発注者に対して、著作権の保護期間中、著作権すべての独占的利用権を許諾すると、実質的には著作権譲渡を変わらなくなってしまいます。

ライセンス方式だからといって油断せず、許諾の範囲に十分注意しておく必要があります。

Q. ライセンス方式の契約が難しい場合はどうすればいいの?

受託者の今後の制作活動や受託者自身による成果物の活用のことも考えると、成果物の著作権を譲渡せずに、発注者に成果物の利用を許諾するライセンス方法の方が、基本的には受託者にとって有利です。

しかし、ビジネス上、著作権譲渡を拒否する交渉が難しい場合もあるでしょう。

そのような場合にも、受託者にはまだできることはあります。

たとえば、デザイナーやイラストレーターが自分の過去の作品としてSNS等に画像をアップしたいのであれば、その範囲での利用について発注者からあらかじめ許諾を受けておく方法があります。

コンピューター・プログラムの開発委託の場合であれば、完成したプログラムすべての著作権をユーザー企業に譲渡するのではなく、その案件の前からベンダー側が保有していたような、プログラムの中で汎用性がある部分についてはベンダーが著作権を保持し、その後の別ユーザー向けの開発にも利用できるようにしておく方法があります。

ビジネス上、ライセンス方式での交渉が難しい場合には、下記の点を意識して発注者に確認してみましょう。

  • 自分がどうしても確保しておきたい権利がないか確認する(自分の過去作品として紹介する権利や、コンテスト等に応募する権利、成果物のうち契約締結前から保有していた部分の著作権など)
  • 確保しておきたい権利の部分だけでも確保できるように交渉してみる

Q. 著作者人格権を行使しないと何ができなくなるの?

著作者の権利には、著作権のほか「著作者人格権」もあります。

著作者人格権とは著作者の人格的利益を保護する権利のことで、公表権や同一性保持権を含みます。

公表権 未公表の著作物を公表するかどうか等を決定する権利
同一性保持権 著作物の内容や題号を著作者の意に反して改変されない権利

著作権は譲渡できますが、著作者人格権は著作者に一身専属的に帰属する権利で譲渡することができません。

したがって、たとえ受託者から発注者に成果物の著作権を譲渡しても、著作者=受託者は引き続き著作者人格権を持ち続けることになります。

そうなると、たとえば発注者が受託者の意に反して成果物を改良した場合、受託者から同一性保持権の侵害だと主張されるリスクが残ります。

そこで、制作委託契約に「受託者は著作者人格権を行使しない」という規定を入れる場合が多く見られます。

しかし、この規定だと、たとえ発注者が受託者の予期していなかったような改変を成果物に加えても、受託者としては何も言えないことになってしまいます。

受託者として想定外で許容し難い改変には文句を言いたいのであれば、制作委託契約の中に発注者が成果物をどのように利用する予定なのか記載して、「発注者が所定の目的の範囲で成果物を利用する場合には、受託者は著作者人格権を行使しない」と限定的に規定するなどの工夫も考えられます。

(執筆&協力:唐津 真美弁護士 編集:まつもと 提供元:高樹町法律事務所

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