【社労士解説】ジョブ型雇用時代におけるフリーランスの生存戦略とは?
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フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケート(2019年)では、回答者の約62%がパワハラ被害、約37%がセクハラ被害を受けた経験があると回答しています。
ハラスメントの被害に遭ってしまった時、どのように対処するのが適切か。フリーランスの働き方問題に詳しい佐藤 大和弁護士に聞きました。
レイ法律事務所代表弁護士。多くの芸能人・アーティスト・
目次
企業におけるフリーランスの需要が高まるに連れて、フリーランスをめぐる紛争も急増しています。
仕事の発注と引き換えに性的な関係を強要してくるセクハラに関する相談や、契約解除をめぐる裁判において脅迫めいたパワハラ発言が問題になったケースもあります。
フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケートでは、下記の事例が挙げられています。
- イラストの権利を主張した際、金の亡者と言われ謝罪させられた。それからも、執拗に媚びるよう強要され、人格否定に相当する言葉も長期間にわたって言われた。(女性20代、イラストレーター)
- 社長から打ち合わせ後にホテルのバーに連れていかれました。早めに帰ろうとしたら、手を握られました。拒否して帰りましたが、以来、それまでべた褒めだった私の原稿をことごとくけなすようになりました。(女性20代、脚本家)
ここで挙げられた典型的なハラスメントの事例以外にも、次のような相談を受けることはよくあります。
- 納品した成果物を合理的な理由なく受け取られず、再度作成することを命じられた
- 値切られた
- 成果物を一方的に取り上げられた
- 法律上の根拠に基づく正当な取扱いをしてほしいと主張したことを理由に不当な評価をされ、業界に吹聴されたことで信用がなくなり業務に支障が出た
大切なのは「証拠化」です。裁判ではハラスメントの有無が争点となり、「言った」「言わない」の水掛け論になりやすいからです。
ハラスメントが予想される状況になった場合、会話を録音しましょう。心身の不調が生じた場合には、医療機関から診断書も得ておくべきです。
フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケートを見ると、ハラスメント経験が「ある」と回答した方の半数近くが被害について「相談しなかった」と回答していました。
同アンケートでは相談しなかった理由について下記の回答が並びます。
- 相談しても解決しないと思った(56.7%)
- 人間関係や仕事に支障が出る恐れ(53.7%)
- 不利益を被る恐れ[仕事がなくなる/キャストを外される等](42.8%)
仕事上の立場があるため、このような考えに至ってしまうことも理解できますが、ハラスメント被害が深刻化した場合、精神疾患を患ってしまうこともありえます。
最悪の事態を想定し、ハラスメントの可能性を感じた場合には次の手順で対応を進めましょう。
ハラスメントに遭ったとしても環境改善をしたうえで取引先との関係を継続するには、以下の方法が考えられます。
取引関係を維持するためにハラスメントを我慢したり、泣き寝入りしたりしてはいけません。
企業の窓口、弁護士や各種団体が設置している相談窓口に相談をしながら、対応してください。
【公的機関の相談窓口一覧】
名称 | 電話 |
フリーランス・トラブル110番 | 0120-532-110 |
ハラスメント悩み相談室(厚生労働省委託事業) | 0120-714-864 |
こころの耳(厚生労働省委託事業) | – |
女性の人権ホットライン(法務局) | – |
性暴力救援センター・東京 | – |
総合労働相談コーナー(厚生労働省) | – |
日本司法支援センター法テラス | 0570-078374 |
法務省インターネット人権相談受付窓口 | |
みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル) | 0570-003-110 |
よりそいホットライン | 0120-279-338 |
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ハラスメントに関する法律は下記の2つです。
しかし、これらの法律は「労働者」を対象にしています。フリーランスは「個人事業主」であり、会社に使用される労働者ではありません。そのため、基本的には上記労働法令の適用はありません。
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)では、フリーランスに対しても、パワハラ防止の措置を講ずることについて触れていますが、「望ましい」という記載に留まっています。
では、フリーランスを守ってくれる法律はないのでしょうか?
フリーランスには独占禁止法や下請法などの経済法が適用されます。
また、2021年3月26日には、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を公表しています。
しかし、筆者の経験上、実際の取引において、これらの法律がただちに適用されることは少なく、公正取引委員会に報告をしても、フリーランスに対するこれらの法律違反が認められることは多くありません。
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上述のとおり、ハラスメントに関する法律はありますが、フリーランスは直接の対象となっておらず、フリーランスの働く環境を守る法律は少ない状況です。
そこで大切となるのが以下の3点です。
実際に取引をした第三者からのネガティブな噂が多い場合には、取引先として選定することは避けた方がよいでしょう。
また、契約関係については、受注者であるフリーランスの権利を著しく制限したり、一方的に過度な義務や制限を設けるような契約書を取り交わしたりすることは避けなければなりません。
そのうえで、フリーランスがハラスメントから自衛するのにお勧めの方法は契約書に「ハラスメント規定」を入れることです。実際に、私が顧問をしているフリーランスの業務委託契約書をレビューする際には、契約条項に「ハラスメントをしないこと」「ハラスメントがあった場合には契約を解除できること」等を明示することもあります。
より万全な準備をするのであれば、弁護士と顧問契約をすることもお勧めします。フリーランスの背後に顧問弁護士の存在があれば、取引先も不要な発言が抑制され、ハラスメントの予防につながります。
また、ハラスメント問題が発生しやすい環境に身を置かないことも大切です。特に、女性のフリーランスの場合には、取引先との食事等に一人で参加しないなど、一定の距離感を保つことも大事になってくるでしょう。
現在、政府の「新しい資本主義実現会議」では、フリーランス保護法制の制定を提言しています。しかし、実際にはいつ法律が制定されるか不透明です。上述のとおり、保護する法律が少ない以上、フリーランス自身がみずからの働く環境を保護していく必要があります。
(執筆&協力:佐藤大和弁護士 編集:まつもと 提供元:レイ法律事務所)
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