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育休中に副業してもバレない?OKとNGの線引き【弁護士解説】

育休中の副業はOKなのか?
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「育休中に副業をしたい」

少しでも家計の足しにするために、そんな思いを持つ方も多いのではないでしょうか?

でも、勝手に副業をして会社にバレたら問題になるのでは……。そんな不安もあると思います。

そこで、そもそも育休とはどのような制度か、育休中に副業をすることが可能なのか。副業・兼業の実務に詳しい堀田 陽平弁護士に聞きました。

堀田 陽平(ほった ようへい)
堀田 陽平(ほった ようへい)

弁護士(日比谷タックス&ロー弁護士法人所属)。2020年9月まで経済産業省産業人材政策室に任期付き職員として就任し、兼業・副業やテレワーク定着等の柔軟な働き方の促進、フリーランスの活躍、人材版伊藤レポート策定等、生産性向上に向けた働き方改革の推進に従事。現在の法律事務所復帰後も兼業・副業の促進等働き方に関する寄稿やセミナー等を行う。

Q. そもそも育休とはどんな制度?

「育休」(正式には「育児休業」)は、その名の通り、子の養育のための休業で、育児介護休業法によって法律上定められた休業制度になります。

育休期間は原則として子が1歳になるまでですが、保育園に入園できないなどの事情がある場合には、最大2歳まで延長が可能です。

詳細は以下の厚生労働省ホームページをご覧ください。

厚生労働省「育児・介護休業法について

育休中は育児休業給付金が支給される

企業は育休中の給料を支払う義務はなく、その間の従業員の生活に必要なお金は、雇用保険から支給される育児休業給付金によって賄われるのが基本的な考え方となります。

育児休業給付金の支給要件は、下記のとおりです。

①育児休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月以上あること

②子が1歳6か月までの間に労働契約が更新されないことが明らかでないこと

※②は有期雇用労働者のみ適用される要件

①の要件を満たさない場合であっても、当該期間中に第1子の育児休業や本人の疾病等がある場合は、受給要件が緩和され、受給要件を満たす場合があります。

育休中は健康保険・厚生年金保険料は免除となりますが、この免除期間中も、被保険者資格は継続します。

育児休業給付金については、以下をご参照ください。

厚生労働省「育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します

トモニン

▲「仕事と介護を両立できる職場環境」の整備促進のためのシンボルマーク トモニン

Q. 育休中に本業の仕事をするのは可能?

副業の話に入る前に、そもそも育休中に本業の仕事をすることは可能なのでしょうか。

この点は、育休が「子を養育するための休業」であり、仕事をしないことを前提として育児休業給付金が支給されるわけなので、原則的には、育休中に仕事をすることは想定されていません。

ですが、厚生労働省は、当該従業員の同意の下で、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主のもとで仕事をすることを許容しています。

育児休業給付金との関係でも、育休中の仕事が月10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金が支給されることとなっています。

詳細は以下をご参照ください。

厚生労働省「育児休業中の就労について

Q. 育休中に副業の仕事をするのは可能?

さて、では育休中に副業をすることは可能でしょうか。

この点、育児介護休業法の施行通達では、「育休中の副業は、育児休業の趣旨にそぐわないこと、届出等をせずに副業を行うことは一般的に信義則に反するものと考えられることから、本業先企業が当該従業員を問責することは、許され得る」としています。

つまり、育休中に副業をした場合は、本業先の企業から責任を問われる可能性があります。

実際のところ、育休中に副業をしたことが争われた裁判例は現在のところ見当たりませんが、参考になるものとして病気休職中に無許可で副業・兼業を行った事案に関する裁判例があります。

たとえば平仙レース事件・浦和地判昭和40年12月16日では、病気休職中に、いわばリハビリとして短期間かつ短時間のみ副業をおこなったことで、企業からなされた懲戒解雇が争われました。しかし本業に何らの支障も与えていない等の理由で、懲戒解雇を無効とする判決がでています。

他方で、病気休職中にオートバイク店を開業したことを理由としてんされた懲戒解雇が争われたジャムコ立川事件・東京地八王子支判平成17年3月16日では、もはや本業先での仕事と両立し得ない程度にオートバイク店の営業が行われていたこと等を理由に懲戒解雇を有効としています(なお、病気休職にあたり手当も支給されており、いわば賃金の二重取りとなっていたことに対する他の従業員への影響も考慮されています)。

育休中の副業が可能であるかについては、結局のところケースバイケースというほかないですが、副業が原則として自由であることを考慮しても、育休後も継続的に行う可能性が高く、その態様も本業先の仕事とは両立し得ないような場合には、懲戒処分が有効とされる可能性も高いといえるでしょう。

Q. 育休中の副業 OKとNGのケースは?

上記の考え方を参考とすれば、たとえば、育休中にハンドメイド作品をオンラインで販売したようなケースでは、単発で終えることが容易であり、継続性がないと考えられるため、この副業を理由とする懲戒処分は無効となる可能性が高いでしょう。

他方で、育休中にYouTubeチャンネルを開設して収入を得たようなケースでは、上記のハンドメイド作品の販売に比べると、継続的にYouTubeの動画投稿を行うことが想定されるため、懲戒処分は有効とされる可能性は高まるといえます。

ただし、チャンネル開設をしただけで現実的には継続的に動画投稿を行っていないのであれば、やはり懲戒処分は無効となると思われます。

なお、育休中にいくらまでの副業でれば許容されるかという点についても、一律に「いくらまでならOK」というのは言い難いところですが、一般論としては副業の収益が多いほど副業に従事する時間や労力は大きいものとなるため、本業への支障を推認させる事情となるでしょう。

Q. 育休中に副業をしたことは会社にバレる?

上記のとおり育休中であっても社会保険の被保険者資格は継続しますので、育休中ではない場合の副業と同じように、本業先での副業が発覚するリスクはあります。

したがって、住民税の特別徴収との関係で、自社での給与に対して住民税が高すぎる場合、他に収入を得ていることが発覚することがあります。

また副業でも社会保険の加入条件を満たす場合には、「二以上事業所勤務届」を提出することとなり、本業先には健康保険・厚生年金保険資格取得確認、二以上事業所勤務被保険者決定及び標準報酬決定通知書」が送られ、企業に副業が発覚する可能性があります。

まとめ

育休中の副業については、裁判例がなく判断の難しいところですが、育休後も継続する可能性が高く、本業との両立が困難であるような場合には、懲戒処分の対象となる可能性が高いといえます。

また、育休中は子の養育のための休業制度であるので、隠れて副業をすることは本業企業との信頼関係を損なう可能性が高いといえます。仮に副業を行うとしても、本業先にも申告することが適切でしょう。

(執筆&協力:堀田 陽平弁護士 編集:まつもと 提供元:日比谷タックス&ロー弁護士法人

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