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【FP解説】個人事業主・フリーランスはふるさと納税すべき? 限度額/確定申告方法/申請手順をわかりやすく紹介

フリーランス向けふるさと納税攻略ガイド
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年の瀬が迫ると、世間は慌ただしく動き出します。そんな1年の終わりに話題になりやすいのが「ふるさと納税」です。

ふるさと納税ガイド』によると、2022年に納税義務者のうち、ふるさと納税を実行した割合は約14.9%となっています。

かなり便利な制度ですが、大半の人はまだふるさと納税をしていないのが現状。さらに、フリーランスは会社員に比べてふるさと納税の計算が複雑になりやすく、まだ二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ファイナンシャルプランナーとしても活動する筆者が、フリーランスのふるさと納税をさまざまな角度からなるべくわかりやすく解説していきます。

執筆:齊藤颯人
執筆:齊藤颯人

FP事務所『トージンFP事務所』代表、ファイナンシャル・プランナー。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身も現役フリーランスで、当事者ならではの情報発信に強み。

ふるさと納税とは?

ふるさと納税 控除額計算の仕組み

▲控除額計算の仕組み(出典:総務省)

ふるさと納税とは、めちゃくちゃ簡単に説明すると自分が住んでいる以外の自治体への寄付制度です。

現代の日本は、進学や就職などで地元を離れることも当たり前です。そうなると、地元を出ていった人たちの納税先は地元ではなく、転居先の自治体になります。つまり地元の自治体は税金を払ってもらえないので、ある意味で「育て損」というのが現状。

こうした現状を変えるべく、「納税者がお世話になった自治体に納税し、恩返しする」というのが、ふるさと納税の理念です。

個人事業主・フリーランスがふるさと納税すべき理由

1. 節税効果が大きくなる場合が多い

ふるさと納税は、納税額から2000円の自己負担額を差し引いた額が、寄付金控除として控除扱いになり、所得税や住民税の節税になります。

実は、フリーランスは会社員よりも節税効果が大きくなるケースが多いです。

なぜなら仮に会社員と同じような収入でも、給与所得より事業所得のほうが金額が大きくなりやすく、フリーランスはふるさと納税の上限額が増えるためです(ふるさと納税の上限額は所得額に比例します)。

ただし所得額が増えやすいということは、そもそも「納税額が多い」こととイコールなので、必ずしもおトクかというと少し微妙かもしれません。

2. 返礼品ももらえて節約にもつながる

ふるさと納税で納税できる自治体は出身地に限りません。

縁もゆかりもない自治体にも納税できるので、返礼品が魅力的な自治体を選べばOK。

お米やお肉などの食料品から、トイレットペーパーなどの日用品まで、さまざまな選択肢があるため、選ぶ商品によっては節約にもつながるのは大きなメリットです。

3. 面倒な事務手続きは不要

フリーランスの場合は、会社員と違ってそもそも確定申告が原則必須。

そのため、必要な手続きである「確定申告書にふるさと納税額を書き足す」ことくらいなら大きな負担にもならないでしょう。その意味で、会社員より事務手続きがラクなのは間違いありません。

ただし、会社員でもふるさと納税が原因で確定申告をしなくて済むよう、「ワンストップ特例制度」という救済処置が用意されています。

ふるさと納税の限度額/計算方法

ふるさと納税はめちゃくちゃおトクな制度ですが、納税額に上限があります

フリーランスのふるさと納税限度額は「住民税所得割額の20%」が一つの目安といわれるため、この金額を軸におおよそのふるさと納税限度額を把握するといいでしょう。

※住民税所得割額

住民税の内訳には、「所得割(納税者の所得に応じて変動する税額)」と「均等割(全住民が均等に負担する税額)」があり、この言葉は前者を指す。計算式は(所得金額-控除額)×税率(原則10%)-(調整控除+税額控除)。

なお数は多くありませんが、フリーランス向けのふるさと納税限度額シミュレーターもいくつかあります。

【フリーランス向け 控除限度額シミュレーター】

個人事業主・フリーランスがふるさと納税する時の注意点

言葉を選ばずに言えば、ふるさと納税は「会社員のための制度」という側面があります。フリーランスにとってはデメリットが多いのも事実で、以下でそのあたりに触れていきましょう。

注意点1. ふるさと納税限度額を把握する必要がある

たとえば2022年のふるさと納税では、2022年末までの1年の所得額を予測し、予測額に応じた上限額を計算しなければいけません。

会社員の場合、1月の時点で12月の収入はだいたい見えており、予測を立てるのはカンタンでしょう。

しかしフリーランスは会社員と異なり、フリーランスは売上や経費、控除額が変動しやすいため、ふるさと納税限度額を把握するのが難しくなるのは注意すべきポイントです。

注意点2. 売上がブレると限度額もブレる

前述したように、フリーランスは年初の予測と100万円単位で売り上げがブレることも珍しくありません。

そのため、フリーランスのふるさと納税上限額が固まる(=売上の見通しが立つ)時期は、9月~12月くらいになるのではないでしょうか。

これより早くふるさと納税をしてしまうと、売上が急落or支出が急増した場合に所得が減り、上限額をオーバーしてしまう可能性が高くなります。

注意点3. 返礼品の選択肢が限られるかも

ふるさと納税の返礼品は、意外と時期によって変わってきます。野菜や果物、魚などは旬の時期が変わるためです。

しかし、フリーランスは売り上げの目処が立っていない年初にふるさと納税することが難しく、年初限定の返礼品を受け取りにくくなってしまいます。

また、いちいち返礼品を選ばなくても、定期的に返礼品を送ってくれる「定期便」も人気の返礼品ですが、やはりフリーランスの立場としては選びにくいといえるでしょう。

注意点4. 節税対策をガチガチにすると上限額が減る

ふるさと納税の上限額は、所得に左右されます。先ほど「フリーランスは所得が大きくなりやすいから上限額が上がりやすい」と言いましたが、逆に言うと節税対策を徹底し、所得額が抑えられると上限額は減ってしまいます。

節税対策をガチガチにしたほうが効果は大きいのですが、節税対策をすることで上限額が減ってしまうのは、気持ち的に少しガッカリするのも確かです。

個人事業主・フリーランスがふるさと納税で損をしないためのポイント

フリーランスのふるさと納税は、注意すべきポイントがやや多いです。ここでは、改めてフリーランスがふるさと納税で損をしないためのポイントをまとめてみました。

ポイント1. 見込み住民税額の算出精度を上げる

フリーランスがふるさと納税で損をしないためには、住民税額の予測制度を上げることが重要です。未来予測なので100%になることはありませんが、以下のように工夫すると算出精度が向上します。

  • こまめに収入と支出を記録する
  • 自分の控除額をしっかり把握する
  • クラウド会計ソフトの「損益レポート」機能を活用する

ポイント2. なるべく遅い時期にふるさと納税する

上とも重なりますが、ふるさと納税はギリギリまで待ってから納税するのが安全です。当然ながら年の瀬近づけば近づくほど、算出した上限額と実態が一致する可能性は上がるからです。

ただし、12月後半に差し掛かると、万が一トラブルなどが発生した際にふるさと納税が間に合わなくなったり、駆け込み需要の増加で返礼品の選択肢が限られたりするリスクもあるため、12月頭までには納税しておくのが無難です。

ポイント3. フリーランス向けのふるさと納税シミュレーターを活用する

先述したとおり、会社員向けに比べると数は少ないですが、フリーランス向けのふるさと納税シミュレーターも提供されています。自分で計算すると手間がかかるだけでなく、ミスをするリスクも高くなるので、素直にシミュレーターを活用することをおすすめします。

ただし、シミュレーターによって算定に使う計算式が異なる場合があり、同じ金額を入力しても結果がズレる可能性があります。その場合、自己負担を増やしたくなければ上限額が一番低いシミュレーション結果を活用すれば安全です。

【フリーランス向け 控除限度額シミュレーター】

個人事業主・フリーランスのふるさと納税の流れをシミュレーションしてみた

ここまで、フリーランスのふるさと納税についてまとめてきました。

しかし、「細かい話が多すぎてよく分からない……」「結局、具体的にどうやったらいいの?」と思う方も多いかもしれません。

そこで、以下では架空のフリーランスであるAさんが、2022年にふるさと納税を行ったと仮定。実際の流れを再現する形で解説してみます。

【Aさんの基礎情報】

  • 30歳、既婚で共働き(扶養者なし)
  • 青色申告特別控除(65万円)の対象者
  • 所得はすべて事業所得
  • 社会保険料控除など、基礎控除以外の控除額を47万円と仮定
  • 寡婦、障がい者などの特殊条件に該当しない

手順1. 現状の所得額を把握する

まず、ふるさと納税を行うタイミングで自分の総所得がいくらあるのかを確認しなければいけません。ここでは、Aさんが11月にふるさと納税を行った際、2022年1月~10月までの所得額が約250万円だったと仮定しましょう。

この場合、見込み所得の軸として「所得250万円」を使って計算を進めていくことになります。

手順2. 残りの月の見込み所得を出す

ふるさと納税の限度額を知るためには、未来の2022年11月~12月分を含めた年間の所得額を知る必要があります。すでに11月~12月の売上が固まっていれば話は別ですが、そうでない場合に残りの月の所得額を予測するためには、先に見た所得250万円を月割した所得額を使うことをおすすめします。

Aさんの例でいえば、250万円÷10ヶ月で25万円/月。つまり、11~12月の所得はおおよそ50万円(25万円×2ヶ月)と予測できます。

手順3. 見込み住民税額を出し、限度額を求める

上記で求めた11月~12月の見込み所得を、1~10月の確定した所得と足し、年末までの見込み所得額を求めます。

今回の場合は、250万円+50万円で300万円。300万円が所得と分かれば、ここから青色申告の特典である特別控除の65万円を差し引いた「235万円」が年末までの見込み所得となります。

ここから、ふるさと納税限度額の計算に欠かせない「住民税所得割額」を計算していきます。居住地を東京23区と仮定し、住民税所得割額を計算すると以下のようになります。

式:(所得金額-控除額)×税率(10%)-(調整控除+税額控除)

235万円-90万円×10%=14.5万円

※基礎控除43万円、他控除47万円と仮定
※調整・税額控除は少額なので0円と仮定

この14.5万円が「住民税所得割額」となります。そしてこの「住民税所得割額」を、以下の早見表にあてはめて計算することで、おおまかな限度額が算出できます。

課税所得金額 上限額
~195万円 住民税所得割額×23.559%+2,000円
195万円~330万円 住民税所得割額×25.066%+2,000円
330万円~695万円 住民税所得割額×28.744%+2,000円
695万円~900万円 住民税所得割額×30.068%+2,000円
900万円~1800万円 住民税所得割額×35.520%+2,000円
1800万円~4000万円 住民税所得割額×40.683%+2,000円
4000万円~ 住民税所得割額×45.398%+2,000円

Aさんの場合、145,000×23.559%+2000=約36,000円と算出されます。繰り返しになりますが、ここで出てきた「36,000円」という数字は、あくまでおおまかな目安の限度額です。11月~12月の業績次第で限度額は変動します。

あとはAさんがどれくらいギリギリを攻めてふるさと納税するか(=上限額オーバーのリスクを覚悟するか)次第ですが、このケースであれば25,000~30,000円くらいのふるさと納税で様子を見て、もし枠が余るようなら、追加で年末にふるさと納税するのがベストかなと思います。

手順4. ふるさと納税する自治体と返礼品を選ぶ

限度額を把握するまでが最大の難関なので、ここから先はボーナスタイム。各社が提供するふるさと納税のポータルサイトを見つつ、ふるさと納税する自治体と返礼品を選びましょう。文字通り地元の自治体に納税しても、返礼品が魅力的な自治体に納税しても大丈夫です。

余談ですが、筆者の場合は返礼品を重視し、趣味の旅行を活かして「魅力的だった旅先のグルメ」を返礼品としている自治体に寄付することが多いです。2021年に九州1周旅行をしたので、2021年は指宿のカツオ、2022年は博多の明太子を返礼品として貰いました。

手順5. 自治体から送付される受領証明書を確認する

ふるさと納税が無事に終わると、自治体から「ふるさと納税受領証明書」が送付されてきます。ここに書かれた金額がいわゆる「ふるさと納税額」になるので、実際に支払った金額と間違いがないか確認し、証明書は必ず保管しておくようにしましょう。

手順6. 確定申告書にふるさと納税額を反映させる

ふるさと納税額が確定したら、確定申告書の「寄付金控除」欄にふるさと納税額と、寄付先の自治体の情報などを反映させましょう。あとは確定申告書を送付すれば、ふるさと納税は完了です。

まとめ

ふるさと納税を行えば、納税額を最小限に抑えられます。

ここまで、フリーランスに向けたふるさと納税について解説してきました。会社員に比べると上限額の把握は難しいですが、ギリギリを攻めなければふるさと納税で損をする可能性は低いです。

所得が上がると税金も高くなってくるので、多少の手間をかけてでもふるさと納税にチャレンジすることをおすすめします。

(執筆:齊藤颯人 編集:宮﨑駿)

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