【漫画】フリーランスは“103万円の壁”にどう向き合うか?
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少しずつ増えているフリーランス人口。2015年には約910万人でしたが、2020年現在は約1200万人と、5年間で約300万人増加していると推計されています。
飽和しつつあるフリーランス市場は、今後どうなっていくのでしょうか?
いまは問題なく稼げているからといって、10年後も同じように稼げているかどうかは分かりません。不安を感じている方も多いでしょう。
そこで今回は『デジタルハリウッドSTUDIO吉祥寺』で「仕事を依頼されるフリーランスになるコツ」や「フリーランスとして生き残るために必要なスキル」について伺いました。
などなど、フリーランスにとって興味深い生存戦略をお届けします。
デジタルハリウッド株式会社 執行役員 xWORKS事業部長
企業にフリーランスチームを紹介する『ランサーユニット』の事業担当も兼任している。
フリーランスのWebデザイナー。デジタルハリウッド大学で非常勤講師、『デジタルハリウッドSTUDIO』ではトレーナーを務めている。
Twitter:@ono_picnico
ビジネス・キャリア系が得意なフリーの取材ライター。
Twitter:@kobutoriniki
目次
── 本日はよろしくお願いします!
早速ですが、企業にとってのフリーランス需要って増えてますか? とくに最近人口が増えている、Web系フリーランスについてお聞きしたいです!
齊藤:はい、増えてます。私は企業にフリーランスチームを紹介するサービス『ランサーユニット』を担当しているのですが、最近だとWeb業界以外からの依頼も多いです。
── Web業界以外と言うと、どんな企業でしょうか?
齊藤:たとえば不動産や金融などですね。自社PR用の動画作成や、SNSを始めとするWeb広告の運用を目的として求められている場合が多いです。
── 意外です。Web系フリーランスって、Web業界としかお仕事していないイメージでした。
齊藤:そのイメージは強いかもしれませんね。
ただ先に挙げた不動産や金融においては、社内にWebスキルを持ったスタッフがいない場合も往々にしてあります。そういった企業が新たにWebサービスをスタートするときに、必要なスキルを持ったWeb系フリーランスを社外から募集するケースは多いんですよ。
おの:またコストを抑えるために、フリーランスに仕事を依頼する企業も増えています。規模の小さいベンチャー企業などにとっては、正社員を採用するコストとリスクは大きいので、自然とそういった選択になる場合が多いです。
齊藤:ひとりの正社員を採用するのに、150万ほどのコストがかかると言われていますからね。Web事業を進めるためだけに採用コストをかけるくらいなら、その分をフリーランスの発注に回したほうが効果的だと考えるのは自然だと思います。
── なるほど……。専門人材の不足やコスト面の問題など、さまざまな理由からフリーランスの需要が高まっているんですね。世はまさに、大フリーランス時代ですね!
── これからとくに需要が増えそうなジャンルってありますか?
齊藤:モーショングラフィックスを用いた動画制作が今後のトレンドですね。実際に企業やサービス・商品のPRで動画を使うケースが増えています。
── やはり動画系はアツいんですね! ちなみに、モーショングラフィックスってなんですか?
齊藤:モーショングラフィックスとは、イラストや図形などを動かして作るアニメーションのことです。実写とは違い撮影する必要がありません。
▲モーショングラフィックスを利用した動画例
── YouTubeの動画にも、たまにモーショングラフィックスが使われているのを見ますね。
齊藤:これから急速にモーショングラフィックスのPR動画がさらに増えていくと思います。なぜなら実写に比べて費用が抑えられるうえ、分かりやすくサービスの内容を紹介できるからです。
実写は編集をするのにも多くの手間がかかり、その分だけ費用が高くなる傾向にあります。その反面、撮影する手間がないモーショングラフィックスは、費用を抑えられるんですよ。
── なるほど、「動画制作」と言ってもさまざまな種類があるんですね。これから新たに動画編集スキルを身につけるとしたら、モーショングラフィックスに挑戦してみるのはアリですね!
思わず魅了されるモーショングラフィックス10種類。活用シーンや事例も紹介
Workship MAGAZINE
── これまでに多くのフリーランスを見てきたと思いますが、フリーランスに必要とされる能力ってなんですか?
おの:単に仕事ができるだけではなく、応援される力があるか、何か起きた時に周りから「助けてあげたい」と思われるかどうかです。ワンピースのルフィみたいな。
── ワンピースのルフィ!
おの:ルフィみたいに、自分ができないことを把握して、かつ周りの人に助けを求められる人はフリーランスとして強いです。
おの:フリーランスはチームを組んで仕事することもあるので、自分の得意なこと・苦手なことを理解し、苦手分野は他の人にお任せすると割り切ったほうが、仕事の幅が広がります。
── ルフィも「おれは剣術も航海術も使えないから、お前らが必要なんだ!」と仲間に伝えてますよね。
おの:とくに「できないこと」を明確にしておくのは大切です。
たとえば私の場合は、Webサイトを作ることはできますが、そのWebサイトに難しいシステムを導入することまではできません。その部分は得意な人に頼んで分担することで、よりスピーディに仕事を進められています。
── しかし、なかなか他の人に仕事をお願いしづらいと思っているフリーランスも多いと思います。ルフィの場合は周りの人が勝手に助けてくれますが、僕たちが仲間を作るためには、まず何から始めればいいでしょうか。
おの:まわりのフリーランスと仲良くなろう、と働きかけることが大切ですね。仕事仲間としてはもちろん、友達としても仲良くなっておくと、いざ自分のできない仕事を頼みたいときに話を聞いてくれる可能性が高くなりますよ。
もちろん、そもそも人と会わないことには友達も増えません。なので交流会やイベントに参加して仲間をつくり、いざというときに仕事に繋げられるよう備えておくことも必要だと思います。
── 酒を酌み交わして、仲間を増やしていく! ルフィっぽいですね……(笑)。
── 反対に「こんな人はフリーランスに向いてない」という特徴はありますか?
齊藤:フリーランスに限ったことではありませんが、できない理由を並べて行動しない人には仕事を依頼しにくいですね。
おの:まったく同じことを思っていました(笑)。行動量が少ない人は、なかなかチャンスを掴めないイメージがあります。
これまでいろんな生徒の方にWebデザインを教えてきましたが、自分で考えて行動し、自主的に勉強する人ほどフリーランスとしてうまく立ち回ってますね。
── なるほど……ルフィも「海賊王に俺はなる! 」と言って、常に行動を止めないですもんね。海に出るリスクを怖がってずっと村に引きこもっていたら、どんなチャンスも巡ってきませんよね。
── 齊藤さんはランサーユニットの担当者として、フリーランスに仕事を依頼する立場でもあると思いますが、仕事をお願いしたくなる人の特徴ってありますか?
齊藤:前提として、仕事を問題なく完遂できるスキルを持っているかどうかがもっとも大事です。
それを除くと「人に好かれやすいタイプかどうか」も重視していますね。最後まで責任を持って仕事をし、周りから信頼されていると感じる人には、積極的に仕事を依頼したくなります。
── おのさんが先ほど仰っていた、フリーランスに向いている人の特徴にも通じますね。人から好かれやすいタイプは同時に、「応援したい」「助けてあげたい」と思われやすいタイプ。
齊藤:そうですね。とても些細なことですが、知り合いを見かけたら名前を呼んで挨拶をしに行くとか、進捗報告を含めた小まめな連絡を怠らないとか。小さなことを徹底しているWebフリーランスは好かれやすいと思います。
私はいろんな企業にお邪魔する機会が多いのですが、向こうから「齊藤さん」と名前を呼んで挨拶してくれたら、嬉しいですからね。
── Webフリーランスだと、デジタルのメッセージだけでやりとりが完結してしまうことも多いので、とくに気をつけないといけませんね。
齊藤:あとは仕事を持っている人に、「いま暇なので仕事ありませんか?」と連絡するのもいいと思います。
── え……そんなメッセージ送っていいんですか? フリーランスが暇と言ってしまうと、「こいつは仕事がない奴だ」と思われてしまいそうで、怖いんですが……。
齊藤:大丈夫ですよ(笑)。
齊藤:依頼する側も「誰にこの仕事を依頼するか?」を選定するのが結構大変なんです。
フリーランス側から「何か仕事ありませんか?」と連絡をもらえれば、仕事内容がマッチした時点でそのまま依頼へ移れますから、選定の手間がかかりませんよね。お互いにメリットだと思います。
── なるほど!
齊藤:ただ「暇なので何か仕事ください!」と言える関係性は、前もって築いておく必要があるでしょうね(笑)。
── いざというときに助けてもらえるような関係を日頃から作っておくことが重要なんですね。
── いまは順風満帆だけれど、今後稼げなくなるかもしれない、危ないジャンルなどはありますか?
おの:明確に「このジャンルが危ない」ということは分かりませんが、ひとつのスキルしか持ってないフリーランスは危険です。
── それは……なぜですか?
おの:いまはどんどんフリーランス人口が増えていますから、ひとつのスキルに特化しているだけだと、他のフリーランスに仕事を取られる危険性があるからです。
なるべく複数のスキルを持ち、戦える場を増やしておくべきだと思います。
齊藤:たしかにそうだね。たとえばWebデザイナーにしても、デザインスキルだけではなくマーケティングスキルも持っているほうが重宝されます。そのほうが、よりクライアントの目的に沿ったデザインが作れますよね。
従来のWebデザイナーはデザインさえできればよかったかもしれませんが、これからは武器が多いほど重宝されます。
おの:デザインスキルやマーケティングスキルと合わせて、イラストが描けるWebデザイナーも需要が高いです。イラストが描けるとわざわざ新しい素材を探す必要もありませんし、デザインの世界観に沿ったイラストを1から作れますからね。
── なるほど! ひとつのスキルに特化するのではなく、一緒に活用できる「補完スキル」を身に付けるべきなんですね。一方で、「今後どんなスキルを身に付ければいいか分からない……」と悩んでいる人はどうすればいいでしょうか?
齊藤:確実に需要が増える「トレンドスキル」を身に付けるのがおすすめです。
いまなら、先ほど挙げた動画編集やモーショングラフィックスの動画作成にチャレンジするといいと思いますよ。これからさらに求められるスキルですから、持っておくに越したことはありません。
── なるほど……。ここまでの話をまとめると、
といえそうですね。本日はフリーランスの生存戦略をお話しいただき、ありがとうございました!
(執筆:小太り 編集:Kitamura Yuu アイキャッチ:T)