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「フリーランスや副業している人の確定申告って義務なの?」
「確定申告をすると、税金を多く支払わなきゃいけなくなる……」
フリーランスや副業をしているが、自分に確定申告が必要なのか分からないと悩んでいませんか? 中には、確定申告をすることで必要以上に多くの税金を払わなければいけないと、敬遠する人もいるようです。
しかし、納税義務があるのに確定申告をしなかったり、納税を拒んだりすると、罰則が生じたり、納税額が大幅に上がるケースも……。
今回は、そもそも「確定申告をしないとどうなるか」を解説し、確定申告が必要な基準、忘れてしまった場合の対処法もご紹介します。
目次
まず、皆さんが一番気になっているであろう「(確定申告が必要な人が)確定申告をしないとどうなるか」という点を解説していきましょう。
結論から言えば、一般人が1〜2回確定申告をしなかったところで、「脱税で逮捕される!」といった事態に発展することはまずありません。ただし、確定申告をしない状態でいれば、常に「税務署からお呼び出しがかかるかも……」という恐怖におびえることになるでしょう。
以下では、確定申告をしなかった場合の経過を段階別に見ていきます。
確定申告をしないということは、文字通り何もしない状態で過ごすことが可能です。税務署も全国民の確定申告状況を一瞬で把握できるわけではないため、しばらくは何も起こらない状態が続くでしょう。
この「何も起こらない」状態がいつまで続くかは、もはや神のみぞ知る領域です。一般的に、確定申告の不備や税務調査の連絡は7月ごろになることが多いと言われるので、短い場合は確定申告の締め切りから3ヶ月くらいで連絡が入りますが、人によっては一生税務署からの連絡はないでしょう。
後ほど紹介するように、取り締まりや税務調査の確率は収入額や経費率によって変化すると言われますが、ハッキリ言って税務署の裁量による部分が大きく、結局は「運次第」としか言いようがありません。
確定申告をせず、気楽に過ごしていたある日。税務署から「税金が納付されていないのですが……?」と連絡が入れば、事態は一気に動き出します。
税務署から連絡が入った時点で、確定申告をしていないことはバレていると考えていいでしょう。こうなったら抵抗するだけダメージが深刻になるため、税務署の指示に従うことが鉄則です。
ちなみに、所得税には時効(原則5年)がある一方、滞納期間が長ければ長いほど延滞税も高額になる傾向があり、税務署は一番税額が高くなる時効ギリギリまで寝かせておく、というケースも多いとされます。「忘れたころの連絡が一番怖い」ということです。
この時点で税務署へ出向き、確定申告していない期間の入出金明細やレシートなどを確認しながら確定申告作業を行うことになります。大半の場合は、この作業を終わらせて必要な税金を納付すれば、それ以上の罪が課されることはありません。
しかし、とくに悪質度が高い場合、脱税で逮捕・起訴されるリスクもあります。
2023年現在、日本の人口は1億2463万人です。「これだけの人がいる日本で、自分が確定申告していないことがバレるものなのか……?」と思う方もいるでしょう。
実際、統計などはありませんが、肌感として「確定申告をしていない(したことがない)」という人は一定数いる印象があります(とくに、副業者に多い気がします)。
何度も繰り返しているように、無申告がバレるかどうかは運次第です。さらに言えば、仮に無申告がバレたとして、税務署が狙う事業者には「事業規模が大きい」「売上や経費の変動が激しい」「不正が多い業種」など、一定の傾向があるといわれています。
ハッキリ言えば、事業規模の小さなフリーランスの無申告を、あえて指摘する可能性は高くないというのも事実です。
しかし、一方で無申告がバレるパターンは意外と幅広く、以下のケースなどが想定されます。
とくに、「匿名でのタレコミ」というのは非常に気になるところ。仮に無申告でけっこうな利益を上げていた場合、「この人はオレのことを税務署に売るかもしれない……」と、周りの人を疑いながら生活するのはなかなかの負担になりそうです。
ここまでの内容を見ると、「あれっ、意外と無申告でもなんとかなるんだな」と思われるかもしれません。確かにいきなり逮捕されたりしないのは事実ですが、問題になるのは「無申告/延滞による加算税」です。
ただでさえ高い複数年分の所得税に、加算税がさらに追加されることで、場合によっては破産につながりかねない負担となる可能性があります。
その他のリスクも含め、以下では無申告のリスクを具体的に解説していきます。
先ほども触れた「無申告加算税」や「延滞税」は具体的にいくらになるのでしょうか。
税金の種類 | 課せられるケース | 詳細 |
無申告加算税 | 期限までに確定申告書を提出しなかったとき | ■納税額が50万円以下:納税額の15%
例:納税額40万円のとき ■納税額が50万円以上:50万円との差額の20%(50万円以内は上記と同じ) 例:納税額60万円のとき ■税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をしたとき:納税額の5% 例:納税額60万円のとき |
延滞税 | 法定納期限までに税金を納めなかったとき | 期限の翌日から納付するまでの日×税率(年分ごとに異なる。原則年率7.3~14.6%) |
この通り、なかなかの加算額になることがよく分かるでしょう。できるだけ期限内に申告することをおすすめします。
納税義務があるフリーランスが確定申告をせず、所得税を納付しなかった場合も、広い意味で言えば「脱税(ほ脱)」にあたります。
しかし、実際は「脱税」にもいろいろと種類があり、私たちがニュースなどで耳にする「脱税」のワードは、「売上隠しや架空の経費を計上するなど、悪質かつ多額の税金を納めなかった場合」に使われることが多いです。
広い意味の「脱税」は、さらに細かく「申告漏れ」「所得隠し」「脱税(狭義)」の三段階で語られる機会が多いため、それぞれの意味も解説しておきましょう。
つまり、本記事で触れているような「確定申告をしなかった」というようなケースは、一番軽い「申告漏れ」にあたるため、逮捕までには至らないのです。
ちなみに、所得隠しを行った場合は、「35%~40%の重加算税」、脱税の場合はこれに加えて「5年以下の懲役もしくは最大500万円以下の罰金、またはその両方」が課されます。
確定申告を行うと、市区町村への納付が必要な「住民税」も同時に計算されます。確定申告を終えると、税務署から市区町村へ確定申告情報が届けられるのですが、確定申告をしていない場合、税務署からの情報が届きません。
その場合、市区町村からの納付通知も届かないので、確定申告をしていない人は住民税も納付していないケースが一般的でしょう(厳密には、確定申告をせず住民税のみを納付することも可能)。
しかし、無申告がバレてから確定申告をした場合、市区町村にもその情報が届き、住民税の納付漏れも発覚することになるでしょう。この場合、追加で住民税の納付が必要になるほか、住民税の延滞税もとられる可能性があります。金銭的なリスクは非常に大きいといえます。
確定申告というと、どうしても税金をとられるイメージが強いものの、実際は「戻ってくるお金」や「軽減される負担」が発生する場合もあります。
代表的な例が「源泉徴収の還付金」です。フリーランスとして報酬を受け取る際、大半のケースでは源泉徴収額として報酬から10.21%の所得税額が差し引かれています。
これは、まさに本記事で紹介したような「確定申告をしない人」対策の「前払い税金」ともいえるもので、じつは一切確定申告をしなくても一定の税金は納付しているのです。
しかし、年間所得が少ない年であれば、「源泉徴収額>実際の所得税額」となるケースもあります。確定申告をしておけば、この差額は「還付金」として手元に戻ってくるのですが、確定申告をしていない場合は、当然還付金もありません。
また、所得額に応じた国民健康保険税の減額が受けられなかったり、各種手続きや収入証明の際に使う確定申告書を準備できなかったりと、影響が出る範囲は広いです。
ゼロからわかるフリーランスの“源泉徴収”。必要な計算/還付金/納付方法などを解説【税理士監修】
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そもそも確定申告とは、「所得税を“確定”させて、税務署に“申告”する」ことを指します。
所得税の確定は、以下のような計算でおこなわれます。
基本的には、年間の課税所得額がプラス(黒字)のときに、確定申告の義務が生じます。
ただ、初めての方にはわかりにくいと思いますので、以下でもうすこしだけ噛み砕いて解説します。以下、いずれかの基準に1つでも該当する人は、確定申告が必要です。
フリーランスとして仕事をしている方は原則、「年間48万円の基礎控除(※)」と「社会保険料控除」を受けられます。
社会保険料控除は人によってやや差がありますが、基本的には、年間事業所得(事業で得た収入から経費を差し引いた金額)が48万円を超える場合は確定申告が必要と考えましょう。
本業が会社員(サラリーマン)の場合、副業所得が年間20万円を超えるとき、確定申告が必要です。たとえば以下のような人は確定申告の対象となります。
- 本業以外に、副業で所得を得ている人
- 本業以外に、株やFXなどで所得を得ている人(NISAや特定口座での取引などを除く)
- 本業以外に、不動産所得がある人
近年は複業(パラレルワーク、ダブルワーク)として、複数の企業から給与を受けとるケースも増えています。本業のほかに、アルバイトやパートをしている場合もここに含まれます。
そこで、年末調整が行われていない会社での収入合計額が年間20万円を超える場合、確定申告が必要となります。
年間所得が2000万円を超える場合は、残念ながら会社員でも年末調整の対象にはならず、自ら確定申告をする必要があります。
先に述べたとおり、確定申告が必要となるのは「年間の課税所得額がプラス(黒字)のとき」です。逆にいうと、「年間の事業所得がマイナス(赤字)のとき」は確定申告は不要です。
しかし、赤字の場合マイナスでもあえて確定申告を行うことで、以下のようなメリットが得られる場合があります。
- 青色申告をしている純損失に限り、翌年以降3年間の所得の金額から繰越控除が受けられる
- 青色申告をしている年分のものであるかどうかにかかわらず、所得から控除できなかった雑損失(営業外費用に属する経費の中で、他のどの勘定科目にも分けることができない経費のこと)の金額を、翌年以降3年間の所得の金額から繰越控除を受けられる
赤字をくり越す目的で、確定申告をするのはアリでしょう。
フリーランス/個人事業主は青色申告すべき! 控除額/メリット/条件などを解説【税理士監修】
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本業が会社員(サラリーマン)で、副業がアルバイトやパートの場合、その年間収入が20万円以下なら確定申告は不要です。
なお、副業としてクラウドソーシングや個人事業を営んでいる場合、経費を差し引いた所得が20万円以下なら確定申告は不要です。
微妙な違いですが、「最終的に得たお金が、本業以外に年間20万円以上あるか否か」がポイントとなります。
フリーランス・副業者なのに確定申告してないとどうなる!? 無申告リスクや申告忘れの対処方法
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源泉徴収された報酬のみを企業から受け取っている場合、確定申告は不要です。
もっとシンプルにいうと、「副業をしていない会社員」は確定申告が不要です。
確定申告を忘れた場合は、一刻も早く自主的に申告しましょう。先述のとおり、確定申告を遅らせれば遅らせるほど、支払わなければならない税金が増えていきます。
なお以下のケースをすべて満たす場合は、「無申告加算税」が免除されます。
- 法定申告期限から1ヶ月以内に、自主的に行われる場合
→おおむね毎年4月15日前後まで- 期限内申告をする意思があったと認められる場合
1. 申告期限後に、納付すべきすべての税額をおさめている
2. 期限後申告をおこなった前日から起算して5年前までのあいだに、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ期限内申告をする意思があったとみとめられる場合の無申告加算税の不適用をうけていない
(1、2の両方の条件を満たす必要あり)(出典:国税庁)
たとえ遅れた場合でも、できる限りはやく申告することをおすすめします。
「今回の記事を読んで、確定申告しないといけない理由が分かった」という方もいるかもしれません。確かに無申告がバレない可能性はあるものの、「確定申告をしていない」という心理的な負担や、バレた際のコストを考えると、当然ですが確定申告はしっかりやっておくべきです。
ただ、「そうは言っても、確定申告ってめんどくさいよね……」という思いは否定できません。そこで、最後にできるだけ確定申告をラクに済ませる方法を考えてみます。
昨今急速に普及しているクラウド会計ソフトを利用すると、確定申告に関する作業時間や手間を大幅に削減することができます。「フリーランスがクラウド会計ソフトを使う以外の方法で確定申告をする選択肢はない」と言い切ってしまってもいいくらいです。
クラウド会計ソフトは「freee」「マネーフォワード」「弥生」の3社が90%以上のシェアを獲得しており、原則はこの3サービスのいずれかを利用することになります。会計初心者の場合、個人的にはfreeeかマネーフォワードの利用がおすすめです。
個人事業主におすすめのクラウド会計ソフト14選比較【FP監修】
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一番ラクで節税効果も高く、かつ間違いのない確定申告をするための方法が、税理士への外注です。当たり前ですが税理士は税務のプロであり、私たちでは思いつかなかった節税対策を、適切なタイミングで助言してくれるでしょう。
さらに、昨今の税理士事務所は単に記帳を代行するだけでなく、経営のアドバイスまで行ってくれるケースも多いです。
しかし、税務のプロを頼る関係上、とにかくネックになるのが外注費用。本業フリーランスの場合、最安値でも「10万円~/年」が相場となり、駆け出しフリーランスが支払う額としては現実的とは言えません。
事業が軌道に乗り、お金に余裕が出てきた段階で税理士への外注を検討するのがおすすめです。
(執筆:上塚千恵子 編集:鈴木里菜、齊藤颯人 取材協力:福岡税務署)
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