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フリーランスの開業届の書き方とは? 提出のメリットなども解説!

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「開業届」。独立の第一歩であり、これを記入して晴れやかな気分になった……という人もいれば、「めんどくさい」「どうして出さなきゃいけないの」と感じる方もいることでしょう。筆者は後者でした。

でも、独立してから5年が経った今は、開業届を出していてよかったなぁと思うことも多いです。今回はフリーライターの筆者が、開業届の書き方、提出のメリットについてまとめました。

開業届とは

開業届とは、新たに個人事業を開始したことを税務署に届け出る書類で、正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。事業開始から1か月以内に提出することを推奨されていますが、未提出でも罰則はありません。

「じゃあ出さなくていいじゃん」という声が聞こえてきそうですが、確定申告で青色申告をおこなう場合、開業届の提出は必須です。また、銀行口座の開設やクレジットカードの契約、オフィスの賃貸借契約、融資の審査などのときには、事業をおこなっている証明として、開業届の控えの提示を求められることもあります。

フリーランスとして働くイラストレーターやデザイナー、エンジニアにライターなどといった職業の方々はもちろん、飲食店や理美容院の経営者など、数多くの個人事業主が開業届を提出しています。

開業届はどこで入手する?

開業届は管轄の税務署で受け取れるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。

平日にわざわざ税務署に行くのは大変なので、もし自宅に印刷できる環境があればダウンロードがおすすめ。また、家にプリンターがないという人は、USBメモリなどに保存して、お近くのコンビニで印刷する手段もあります。

開業届の提出期限

開業届の提出期限は、事業を開始した日から1か月以内です。提出期限が土・日曜日・祝日などに当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。なお、期限が切れたから受理されないということはありません。

ただし、開業初年度から青色申告をしたい場合、開業届と同時に「青色申告承認申請書」も提出する必要があります。青色申告は複式簿記での記帳が必要になりますが、最大65万円の特別控除が受けられるなど税制面で大きなメリットがあります。

新規開業と同時に青色申告承認申請書を出す場合、開業時期によって提出期限が次のように変わります。

開業時期 提出期限
1月1日~1月15日に開業した場合 3月15日までに提出
1月16日以降に開業した場合 開業から2か月以内に提出

基本的には、青色申告承認申請書は開業から2か月以内に提出しないと、初年度の青色申告ができなくなってしまいます。筆者は面倒くさがって放置していた結果、最初の2年間は白色申告になってしまいました……。

このようなケースを避けるために、開業日は最初に決めておき、1か月以内に開業届と青色申告承認申請書を同時に提出できるよう、準備を進めておきましょう。

開業届はどこで提出する?

開業届の提出方法には、以下3つの方法があります。

  • 税務署の窓口での直接提出
  • 税務署への郵送
  • e-Taxを使ったオンライン提出

それぞれの手続きの流れとメリット・デメリットは以下の通りです。

手続きの流れ メリット デメリット
窓口提出
  1. 開業届を印刷する
  2. 必要事項を記入する
  3. 窓口に提出する
不備や記入漏れなどにその場で対応できる 平日昼間に管轄の税務署まで行かなきゃいけない
郵送
  1. 開業届を印刷する
  2. 必要事項を記入する
  3. 簡易書類やレターパックなどで郵送する
書類を郵送するだけなので時間や手間がかからない 書類に不備があると、最初からやり直しになる可能性がある
e-Tax
  1. 利用識別番号を取得する
  2. 電子証明書を取得する
  3. e-Taxソフトをインストールする
  4. ソフトで開業届を作成する
  5. 送信する
自分の好きなタイミングで提出できる マイナンバーカードやカードリーダーが必要

e-Taxはマイナンバーカードやカードリーダーの用意が必要なので、準備がやや面倒ではあります。しかし、自宅から好きなタイミングで開業届の提出ができるのがメリットです。マイナンバーカードやカードリーダーは確定申告のときにも利用できるので、開業の機会に揃えておいてもいいかもしれません。

開業届の書き方

開業届はこのような書式になっています。

開業届の記入例

▲出典:国税庁

以下では、具体的に開業届の書き方を解説します。

1. 提出先・提出日

開業届を提出する管轄の税務署名と、提出する日付を記入します。 納税地の住所によって管轄の税務署が決まっているので、あらかじめ国税庁のホームページから調べておきましょう。

2. 納税地・住所

納税地の住所と電話番号を記入します。納税地は以下の3つのなかから選ぶことができます。

納税地にできる場所 説明
住所地 住民票に記載のある住所
居所地 住民票に記載されていない、一時的に住んでいる場所
事業所 事務所や店舗などの事業をおこなっている場所

事務所や店舗を借りていない場合、一般的には「住所地」を選択すれば大丈夫です。困ったときには、管轄の税務署に相談してみましょう。

3. 氏名・生年月日・個人番号

事業者(自分)の氏名と生年月日を記入し、押印します。印鑑は個人名でも屋号でもどちらでも構いません。個人番号の欄には12ケタのマイナンバーを記入します。

4. 職業・屋号

職業欄には自分がおこなっている事業を記入します。「ライター」「エンジニア」「Webデザイナー」など、わかりやすく具体的に書きましょう。

屋号の設定は必須ではないため、屋号欄は空欄でも問題ありません。ただ、事務所を開いていたり、店舗を経営をしていたりする場合には、屋号がそのまま店舗・事務所名となる場合が多いです。開業後に後から屋号を設定すると新たな手続きが発生してしまうので、開業にあわせて屋号を設定しておくと便利です。

5. 届出の区分

開業届という様式はなく、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」です。つまり、事業を廃止するときもこの書類をつかうことになります。

今回は開業届なので、届出の区分は「開業」を選択しましょう。

6. 所得の種類

フリーランスの場合、一般的に所得の種類は「事業所得」を選択することが多いです。ただし、不動産投資を主な活動にする場合は「不動産所得」を選択するなど、例外もあります。

7. 開業・廃業等日

一般的に、開業日は「事業をおこなう店舗のオープン日、もしくはWebサイトを開設した日」とし、日付を記入します。フリーランスで、とくにWebサイトや店舗の開設をしていない場合は、事業を始めた日で問題ありません。

とくにSNS以外のWebサイトなどを持っていない場合はややこしいですが、筆者は「初めて有償で仕事を請けた日」を開業日に設定しました。

8. 開業に伴う届出書の提出の有無

初年度から青色申告をするために「青色申告承認申請書」を同時に提出する場合は、上段の「有」を選択します。

下段は消費税課税事業に該当するかの確認です。フリーランスの場合、課税売上高が1,000万円以下であれば免税対象となりますが、2023年10月以降に予定されているインボイス制度の導入によって、課税事業者になったほうがいい場合も出てくるでしょう。

免税事業者として働いたほうがいいか、課税事業者として働いたほうがいいかは人によって異なりますので、インボイス制度の記事をチェックしたうえで、ご自身の判断で記入してください。

9. 事業の概要

あなたがどのような事業をおこなうのかを記入する項目です。プログラマーなら「システム開発」、Webデザイナーなら「Webサイトのデザイン」、ライターなら「記事の執筆」などのように、具体的にわかりやすく書きましょう。

10. 給与等の支払の状況

従業員がいない場合は空欄で構いません。青色事業専従者がいる場合は「専従者」欄に、それ以外の従業員がいる場合は「使用人」欄に従業員数を記入します。

税額の有無とは、給与から源泉徴収として所得税を天引きする必要があるかの確認をおこなう項目です。原則として、従業員の給与が月額8万8,000円以上の場合は「有」を選択します。

控えの記入も忘れずに

開業届を提出するときは、必ず開業届と開業届の控えの両方を提出します。開業届と控えは用紙が別になっているため、それぞれに記入が必要です。

また、提出時にはマイナンバーがわかる確認書類と本人確認書類の提出が必要です。マイナンバーカードがある場合はマイナンバーカードが1枚あれば大丈夫です。

マイナンバーカード 必要書類
マイナンバーカードがある ・マイナンバーカード
マイナンバーカードがない ・マイナンバーが確認できる書類(通知カード、住民票の写し、住民票記載事項証明書など)

・顔写真付きの本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)

開業届を出すメリット

出さなくても罰則がないのであれば、そんな面倒な手間をかけてまで、開業届を出す意味はあるのでしょうか。ここでは開業届を出すメリットを説明します。

メリット1. 青色申告で節税が可能

青色申告ができるようになることが最大のメリットです。青色申告をおこなうと、最大で65万円の特別控除(青色申告特別控除)が受けられるほか、赤字を3年間繰り越しできるなど、多くのメリットがあります。

とくに、事業所得からの控除を受けると、経費として計上できる金額が大きくなるので、結果的に支払う税金が少なくなります。

とはいっても、青色申告って面倒くさそうだし、白色申告じゃダメなの? と思う方もいるかもしれません。白色申告のほうが簡単なイメージがありますよね。

しかし、平成26年以降はすべての事業者に記帳義務が課されることになりました。つまり、青色申告だろうが白色申告だろうが、誰もが会計帳簿を作成しなければならないということです。帳簿を作成しなければならなくなった時点で、「申請が簡単」という白色申告のメリットは大きく減ってしまいました。

反面、弥生やfreee、マネーフォワードなどの会計ソフトや、税務署に行かずに確定申告ができるe-Taxの整備により、青色申告のハードルはどんどん下がっています。そのため、青色申告ができるようになることは、開業届を出す最大のメリットといっても過言ではありません。

青色申告をおこなうには、開業届とともに「青色申告承認申請書」も必要になるので、忘れず一緒に出しておきましょう。

メリット2. 屋号で銀行口座が作れる

開業届を出していると、屋号で銀行口座が作れるようになります。

屋号で銀行口座を作るメリットは、確定申告のときに便利ということ。確定申告では、事業での収入や経費のみを申告しなければなりません。

プライベートの口座ひとつを仕事と兼用すればいいのでは? と思うかもしれませんが、そうすると確定申告のときに個人で使ったお金か、仕事で使ったお金かを一つひとつ分けなければいけません。あまりにも支払いが多くなると、後から見たときに「これって何の支払いだったっけ……?」となることもありますよね。

プライベートの口座と事業用の口座を分けることで、仕事で得た収入、仕事に使った支出がはっきりとわかるようになります。そうすると、確定申告の手間を大きく省くことができます。

もうひとつのメリットは、顧客を安心させられること。

たとえばネットショップを利用した場合を想像してみてください。振込先の名義が個人だったら、ちょっと心配になりませんか? とくに不特定多数の顧客を抱える小売りなどの業態だと、屋号の口座があれば、顧客に安心して使ってもらえるというメリットがあります。

メリット3. 初年度から小規模企業共済に加入できる

小規模企業共済とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する、個人事業主(フリーランス)や小規模会社の経営者・役員のための退職金制度です。個人事業主や企業経営者は、会社員と違って退職金がありません。そこで、個人事業主が廃業したときや、小規模企業の経営者・役員が退職したときのための制度が作られました。

簡単に説明すると、毎月一定額を積み立て、個人事業を廃業したときや65歳以上になったときに共済金を受け取るというもの。掛金の納付期間に応じて、限度額の範囲内で事業資金を借りることも可能です。

この小規模企業共済に加入するには、確定申告書の写しが必要になります。しかし、まだ確定申告を済ませていない初年度には確定申告書の写しがないため、代わりに開業届の写しを提出することになります。

開業届を出していない場合、開業届の写しも用意できないことになるため、初年度は小規模企業共済に加入することができません。

メリット4. 融資やオフィス契約に必要になる場合がある

自宅でできる仕事であればとくに気になりませんが、店舗や事務所を構える場合は、開業時に多額の資金が必要になります。

準備・設立資金はもちろん、開業後も売上が入金されるまでの家賃や光熱費などの経費をまかなう資金も必要です。

そういったときに使えるのが融資です。個人事業主が融資を受けるためには、原則として開業届を提出している必要があります。開業届を出していないからといって審査が受けられないわけではありませんが、求められるハードルはかなり高くなります。

オフィス契約に関しても同様です。個人事業主は会社に雇用されているわけではないため、収入や雇用について証明できる書類がほとんどありません。そのため、開業届の写しを提出し、個人として事業をおこなっている事実を証明する必要があります。

開業届を出していないからといって必ずしも契約を結べないわけではありませんが、信用を担保するためには開業届を提出しておいたほうがいいでしょう。

メリット5. 補助金や助成金など給付金の申請に必要

個人事業主が資金調達するときに、補助金や助成金などを利用できることがあります。そのような給付金を申請する場合、「開業届を提出していること」が条件として定められているケースも多いです。

たとえば、コロナ禍で支給された「持続化給付金」も、申請に必要な書類として、開業届が入っていました。開業届を出していなかったために補助金や給付金を受け取れなかった……! というパターンもあるので、後悔しないためにも、開業届を出しておいたほうが無難でしょう。

開業届は出さないほうがいい?

インターネットを検索していると、「開業届は出さないほうがいい」という意見もあります。デメリットとして上げられているのは、主に以下の3つです。

  1. 扶養に入れなくなる可能性がある
  2. 失業給付を受けられない可能性がある
  3. 帳簿付けの手間が増す

デメリット1. 扶養に入れなくなる可能性がある

配偶者などに扶養されている場合、扶養者の健康保険組合に加入していれば、自分で健康保険料を払わなくても健康保険に加入できます。

しかし、扶養として認められるための条件は各健康保険組合が定めることができます。所得金額で条件を定めているケースもあれば「個人事業主は扶養対象と認めない」としているケースもあります

場合によっては開業届を出すことで、扶養者の健康保険に加入していられなくなるケースが出てきます。もちろん、独身の方や、自分が配偶者を扶養しているという方には関係がありません。

デメリット2. 失業給付を受けられない可能性がある

失業保険とは、失業者が次の仕事を見つけるまでの支援をおこなう保険です。そのため、個人事業主は基本的に対象になりません。開業すると「再就職の意思がない」とみなされて、失業給付を受けられなくなる可能性があります

とはいえ、ポジティブに「会社を辞めて独立したい!」と思っている方が、失業給付を受け取って、しばらくのんびりしようとするケースはあまりないような気がします。そのぶん、早く働いて仕事を取ったほうが有利だからです。

デメリット3. 帳簿付けの手間が増す

経理業務における帳簿付けには「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があります。開業届を出すことによって可能となる青色申告を利用して、65万円もしくは55万円の控除を受けるためには、複雑な複式簿記での帳簿付けが必要になります。

「開業届を出さずに白色申告をすれば、簡単な単式簿記で済む」という部分が開業届のデメリットとして受け取られているようです。しかし、開業届を提出し、青色申告をおこなう場合にも、10万円の控除で構わないという場合には単式簿記による帳簿付けもできます。

また、先ほどもいったように、平成26年からはすべての事業者について記帳義務が課されることになりました。「申請が簡単」という白色申告のメリットは大きく減っているため、個人的にはあまりデメリットととらえなくてもいいような気がします。

まとめ

以上のことから、「フリーランスは開業届を出したほうがいい」というのが結論になります。もちろん、開業届を出すデメリットもあるんですが、それ以上に「開業届を出さないデメリット」のほうが大きい印象です。ちゃんと開業届を出して、しっかり働きましょう!

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開業届を出したあとは、ぜひフリーランス向けお仕事マッチングサービスなどを活用して、働いてみてください!

(執筆:少年B 編集:北村有)

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