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YouTuberなら配信した動画の再生回数を伸ばしたいものですよね。
しかし再生回数を求めるあまり過激な企画、発言による炎上を目にすることも多くあります。意図しない炎上によって活動停止やスポンサーが離れてしまうことも。
炎上はなぜ起こるのか、炎上が起きたらどう対処するべきなのか、ネット炎上に詳しい佐藤 大和弁護士に聞きました。
レイ法律事務所代表弁護士。多くの芸能人・アーティスト・
日々、どこかでYouTuberが炎上しています。炎上をきっかけにして、事務所とのマネジメント契約を解消されたり、刑事事件に発展したり、さらに誹謗中傷問題に発展したりする場合も……。
YouTuberが炎上する事例を見ると、おもに以下の理由が挙げられます。
1.は、動画の内容自体が法律に違反する可能性の高いものが多いです。虚偽の内容を配信したり、イタズラが行き過ぎた配信内容だったりとモラル違反につながるものも。その他、カップル動画であるにもかかわらず、別れたことを明らかにせず配信を続けていたなど、視聴者の信頼を裏切ったことで炎上した事例もあります。
2.は、動画以外の場面において問題があるケースです。たとえば自らのSNSにおいて差別的な用語を使ったり、人権侵害を助長したりとモラルに問題がある場合や、第三者の名誉を毀損する発言など、法律に違反する可能性のある場合が挙げられます。
炎上が起きたときの対策としては、以下の4つが鉄則になります。
鉄則1.のとおり、まずは「炎上が落ち着くまで、できるだけ動かない」ようにしてください。炎上した場合、状況を把握し対応方法を検討するのも大切ですが、まずは落ち着くまで何もせずに待ちましょう。
炎上が起きると「とにかく何か動きたい」衝動に駆られます。しかしここで中途半端に対応をしてしまうと、さらに炎上が拡大してしまう恐れがあります。それがメディアにも取り上げられ、炎上が長引き、事態が悪化することも……。何か対応をするにしても、鉄則2.のとおり「対応は1回で終わらせる」のが肝心です。
もちろん、炎上内容や企業案件の場合など、どうしても早急に対応しなければならないケースもあります。その場合には炎上対応を得意にしている弁護士などに相談し、対応をすすめてください。
なお、プレスリリースや動画で謝罪にするにしても、「外していけないポイント」があります。
例えば次のようなポイントです。
- 誰に対して、何について謝罪をしているのか明確にする
この点が明確でなければ、何に謝罪をしているのかわからず、「とりあえず謝罪をしているだけだ」と強い批判を受けます。- SNS上での批判などに事実誤認がある場合は、証拠に基づいて否定する
証拠に触れずに、単に否定した場合には、「嘘だ!」と攻撃される可能性があります。- 炎上を沈静化させたい場合は、反論を中心にしない
事実誤認を中心に発信した場合には、メディアで「徹底反論!」と取り上げられてしまい、炎上が長期化するケースもあります。
そして炎上の当事者は、鉄則3.のとおり「できるだけSNSを見ない」ようにしましょう。見てしまうと感情的になってしまい、何か動きたいという強い衝動に駆られたり、焦りが生まれて精神的に落ち着かなくなったりと、炎上対応の迷走が始まります。
これは、鉄則4.の「周りの意見に左右されない」にも繋がります。
筆者はこれまで、YouTuberもふくめ、文化芸術分野の炎上案件について何十件と対応してきましたが、当事者がSNSを見たり、周りの意見に左右された結果、炎上対応が迷走したり、感情的な理由のみで方針が何度も変更になることを経験してきました。
状況によっては柔軟な方針変更も大切ですが、炎上を早期に沈静化させるためにも、感情的になって悪い方向に迷走しないためにも、炎上対応を専門・得意にしている弁護士などに相談するのをおすすめします。
なお、ひとたび炎上すると、炎上当事者に対する誹謗中傷もよく起こります。誹謗中傷についても、毅然とした対応が必要です。できることなら炎上対応のみならず、誹謗中傷問題にも強い弁護士や専門家に相談し、誹謗中傷の証拠を確保するようにしておきましょう。
マネジメント契約をしているようなYouTuberの場合、まずはマネジメント事務所や顧問弁護士などと相談しながら、過去の炎上にもとづいて、各自が撮影・配信するうえでの「ガイドライン」や「指針」を作ることが大切です。
とくに炎上しやすいジェンダー問題や差別的用語などについては学ぶ必要があります。ガイドラインを作るのが大変という場合には、いままでの炎上事例の研究だけでもしておくべきでしょう。
次に、マネジメント事務所の法務や顧問弁護士などから、動画を撮影・配信するうえでの「最低限の法律」に関する研修を受けることが大切です。いちど動画が公開されてしまうと、その影響は計り知れません。法律を守ることは最低限必要です。
たとえば、下記の法令は知っておく価値があるでしょう。
法令名 | 押さえておくべきポイント |
著作権法 | 動画を編集・配信する際に、他人の著作権を侵害しないように勉強する必要があります。 |
刑法、軽犯罪法、迷惑防止条例違反 | 名誉毀損等も含めて、どのような行為が犯罪行為になるのか確認しておきましょう。 |
道路交通法 | 道路等での撮影もあるかと思います。屋外での撮影における注意点について押さえておきましょう。 |
そして、一番大事なのは「自制心」を持つことです。その他、施設内での撮影ルールをおさえるために、施設管理権も押さえておくとトラブル防止に役立ちます。撮影する際に第三者が写り込む場合もあるため、肖像権やプライバシー権も大切です。
再生回数が伸びなかったり、登録者数が伸び悩みしたりすると、どんどん過激になる傾向があります。しかし、その結果として逮捕されたり、炎上してしまったりすると、今後の活動が停滞してしまう恐れもあります。過激な動画に心がゆれたら、いちど立ち止まって、企画を見直してみましょう。
ちょっとだけ付け加えますと、多くのYouTuberは広告配信料だけではなく、いわゆる「企業案件」(企業の商品やサービスなどの宣伝動画)で収益化を図っています。健全な動画を配信しつづけることで、企業も安心して案件をお願いできます。将来のビジネスのためにも、ルールは守っていきましょう。
(執筆&協力:佐藤大和弁護士 編集:まつもと 提供元:レイ法律事務所)
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