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偽装請負は何が問題なの? 判断基準、事例、罰則を解説

偽装請負は何が問題なの?
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フリーランスとして働くなら、自分の身を守る方法を知っておく必要があります。とくに「偽装請負」によって搾取されるとフリーランス側の不利益が大きくなります。

偽装請負とは、実質的には派遣労働や労働者供給であるにもかかわらず、請負契約を偽装することです。

偽装により労働者派遣法などの法規制を逃れようとするのは「違法行為」なので、フリーランスの立場としては、違法な偽装請負に利用されないよう十分注意を払わねばなりません。

今回は偽装請負とは何か、問題点、判断基準などについて解説します。

福谷陽子
福谷陽子

元弁護士、法律ライター。弁護士時代は契約書作成やレビュー、不動産取引や債権回収、破産倒産、一般民事、家事事件など多種多様な事件を取り扱っていた。今はその経験を活かし、専門的な法律知識を一般ユーザーへわかりやすく解説する法律記事の作成に積極的に取り組んでいる。各種サイトで法律記事を執筆監修。実績は年間1000件以上。ブログやYou Tubeなどによる情報発信にも熱心に取り組んでおりチャンネルを運営中。

偽装請負とは

フリーランスの中には「偽装請負」という言葉を聞いたことがあっても、内容についてはよくわからない方が少なくありません。

偽装請負とは、実質的には「労働者派遣」や「労働者供給」であるにもかかわらず、「請負契約」や「業務委託契約」を偽装して法規制を逃れようとする行為です。

労働者派遣や労働者供給には、労働者を保護するための厳しい規制があり、きちんと法律を守ると雇用者側に負担が発生します。

そこで規制の及ばない「請負契約」や「業務委託契約」を偽装して、さまざまな規制を逃れようとするのが偽装請負です。

フリーランスや労働者側にしてみると、偽装請負に利用されてしまったら受けられる保護が受けられなくなってしまいます。不利益を避けるため、偽装請負の案件に巻き込まれないよう注意しましょう。

偽装請負と判断する基準

偽装請負に該当するかどうかの判断基準は、以下のとおりです。

発注者からの「指揮命令関係」があるかどうか

請負契約や業務委託契約の場合、当事者間に上限関係はありません。発注者が受注者へ仕事の進め方について個別的に命令しないのが原則です。

一方で雇用契約の場合には、雇用者が被用者へ仕事の進め方などについて指揮命令を行います。よって「指揮命令関係」がある場合、請負契約ではなく雇用契約となり、偽装請負の問題が発生します。

具体的な判断方法

指揮命令関係の有無は、現実の業務態様から実質的かつ総合的に判断します。

判定の際には以下のような要素が考慮され、該当するものがあれば偽装請負の可能性が高まります。

  • 仕事の進め方について個別的に指示が行われている
  • 勤務時間が決まっている
  • 受注者側に勤務に関する規則が適用されている
  • 仕事を行う場所が指定されている

フリーランスが請負契約で案件を受注するときに、上記のような条件がついていたら、偽装請負の可能性があるでしょう。

偽装請負と準委任契約の違い

請負契約と混同されやすいものとして「準委任契約」があります。請負契約と準委任契約の違いについても確かめましょう。

準委任契約とは

準委任契約とは、法律行為以外の事務を委託する契約です。業務委託契約の一類型として、準委任契約が締結される場合がよくあります。

準委任契約の場合、「仕事をしたこと」に対する報酬が払われます。請負では「完成物の納品」が支払条件となりますが、準委任契約では不要です。

たとえばコンサルティング業務などは、準委任契約を締結する例が多いです。

請負契約と準委任契約の違い

▲請負契約と準委任契約の違い

準委任契約と請負契約は大きく違う!

準委任契約は、そもそも請負契約とは別物です。適切な方法で締結すれば適法あり、偽装請負にはあたりません。

一方、偽装請負は請負契約を偽装するものであり、違法行為です。両者は大きく異なります。

偽装請負の何が問題なのか

偽装請負では何が問題となるのでしょうか。以下で偽装請負の法的な問題点をみていきましょう。

問題点1. 中間搾取の禁止に違反する

労働者派遣や労働者供給が行われるときには、労働者がとくに保護されなければなりません。中間に入る業者が、労働者から利益を搾取する可能性があるからです。

そこで労働基準法は、基本的に「中間搾取」を禁止しています。その上で派遣を行う際には、特別に労働者派遣法などの法律による規制が行われています。

たとえば派遣業者が労働者派遣業を行う際には、厚生労働省で許可を受けなければなりません。くわえて許可を受けたらどのような行為をしても良いというわけではなく、労働者派遣法による規制を守る必要があります。

▲出典:厚生労働省「労働者派遣制度について」

また職業安定法では、労働者供給を原則として禁止しています。

▲出典:厚生労働省「労働者供給事業とは」

ところが偽装請負をされると、労働者派遣法や職業安定法が適用されず、業者側の好き放題になってしまう恐れがあります。

問題点2. 労働基準法の規制が守られない

労働基準法は、労働者保護のために各種の規制を及ぼしています。

たとえば以下のような規定があります。

  • 労働時間の上限を設定
  • 割増賃金を設定
  • 賃金の支払い方法について規制
  • 休憩時間や休暇などについての規制
  • 有給休暇制度を設定

雇用者が労働者を解雇できる条件も非常に厳しく設定されており、労働者が労災に遭ったら補償を受けられます。

ところが偽装請負になると、雇用者は上記のような労働者保護の規定を守りません。労働者側は残業代も請求できず休暇ももらえず労災に遭っても補償を受けられないのです。

偽装請負を認めると、労働者の保護に欠ける点が大きな問題といえるでしょう。

偽装請負の罰則

偽装請負が発覚すると、雇用者側に以下のような罰則が適用されます。

罰則1. 労働者派遣法違反

無許可で労働者派遣事業を行うと、派遣元の事業主には「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金刑」が科されます(労働者派遣法59条1号)。

法人の代表者や代理人、使用人その他の労働者が偽装請負を行った場合、法人に対しても「100万円以下の罰金刑」が科されます(労働者派遣法62条)。

罰則2. 職業安定法違反

職業安定法は労働者供給を禁止しています。

偽装請負が労働者供給となれば、供給元と供給先の事業主双方に「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金刑」が科されます(職業安定法64条9号)。

法人の場合には「100万円以下の罰金刑」が科されます(職業安定法67条)。

罰則3. 労働基準法違反

労働基準法は中間搾取を禁止しています。

中間搾取の禁止に該当すると、供給元の事業主に「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」が科されます(労働基準法118条1項)。

事業主の代表者や代理人、使用人などが中間搾取を行うと、事業主にも「50万円以下の罰金」が科される可能性があります(労働基準法121条1項)。

偽装請負の事例

事例1. 所属企業とは別の会社で業務

床材やカーペット等の床敷物の製造販売などを目的とする事業者(A社)が、業務請負先の会社(B社)からB社従業員の派遣を受けた事例があります。

B社の従業員はA社の工場で製品の製造業務をしていましたが、A社とは直接契約をしていませんでした。

従業員はこれが「偽装請負による労働者派遣」であり、従業員とA社との間に雇用契約が成立するとして、A社に対し労働者としての地位確認を求めました。

裁判所は違法な偽装請負であることを認め、従業員らとA社との間に雇用契約が成立していると認めました。

(参考:https://www.tenma-lo.jp/case/labor-problem/working-conditions/working-conditions01/2523

事例2. 請負契約で指示命令

大手電気機器メーカーにおいて、偽装契約がもとで長期的な裁判に発展した事例もあります。

とある通信会社では、請負契約と称してエンジニアを受け入れて指示命令していたため、「偽装請負」を疑われて労働局の指導が入りました。

(参考:https://offers.jp/media/sidejob/contract/a_810#outline-2

偽装請負を避けるために

偽装請負を避けるには、受注者側(労働者側)が「どういったケースが違法になるのか」について正しい知識を持っていなければなりません。

たとえば東京労働局は、偽装請負の代表的なパターンを4つ紹介し、注意喚起しています。こういったサイトを見てフリーランス側も知識をつけておきましょう。

また違法な偽装請負に巻き込まれた場合の対処方法も知っておくべきです。「労働基準監督署や労働局に告発する」「弁護士に相談する」などの対応を考えておきましょう。

フリーランスはただでさえ発注者より立場が弱く、搾取されがちといえます。自分の身は自分で守るのが基本ですが、困ったときには専門知識を持った第三者へ相談してみましょう。

(執筆:福谷陽子 編集:まつもと)

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