エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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フリーランスとして働いていると、ちょっと気になるのが「ギルド型組織」。
専門性を持ったプロフェッショナルの集まりで、案件は組織で受注し、その内容によってメンバーがアサインされ、仕事に取り組む。しかもフリーランスのままでいられるので自由……そんな、会社とフリーランスのいいとこ取りのような働き方に惹かれるのは、僕だけではないはずです。
とはいえ、ギルド型組織で働く方は周りにいないので、あまりイメージがわかないのも正直なところ。フリーランスとしてギルド型組織で働くって、実際のところどうなんでしょう?
「そのリアルが知りたい!」ということで、今回取材を申し込んだのが、THE CREATIVE CAPITAL「NEWS」。クリエイター・事業家・投資家が手を組み、スタートアップ企業に対してクリエイティブを「投資」する、新しいモデルのクリエイティブスタジオです。
この「NEWS」の特徴のひとつが、コピーライターから編集者、戦略コンサルタント、ビジネスデザイナーなど、さまざまな分野のスペシャリスト11名が集うギルド型組織であること。
そんな「NEWS」を立ち上げた共同代表の一人である梅田哲矢さん、メンバーである最所あさみさん、カツセマサヒコさんに、フリーランスとしてギルド型組織で働くとはどういうことなのか、進路相談してみることにしました。
広告的発想を武器としたクリエイションと、実現するためのリレーションを併せ持つ新しいタイプのクリエイティブディレクター。クリエイターとスタートアップをつなぐ新たなモデルをつくるべく、2019年「NEWS」を創業。
大手百貨店入社後、ベンチャー企業を経て2017年独立。ニューリテールにまつわるコンサルティングや執筆、コミュニティマネジメント、イベントプロデュースを行う。
編集プロダクションでのライター・編集経験を経て、2017年4月に独立。取材記事や小説、エッセイの執筆・編集を主な領域としつつ、PR企画やメディア出演など活躍の場は多岐に渡る。
目次
―― 今日は「フリーランスの進路相談室」の取材ということで、僕も気になっている「フリーランスとしてギルド型組織で働く」という選択肢について、いろいろ伺えればと思っています。
カツセ:進路相談室、いいですね(笑)。
梅田:響きが懐かしい。
最所:よろしくお願いします。
―― よろしくお願いします。そもそも、梅田さんが仲間と「NEWS」を立ち上げた理由は何だったのですか?
梅田:一番の理由は「将来有望なスタートアップ企業と、いいクリエイターをつなげる仕組みを作りたかった」ということですね。スタートアップはお金もコネクションも無いので、たとえばあまり実績がない知り合いのデザイナーに会社のロゴデザインを頼んでしまって、あとで後悔するケースが結構あるんです。それなら最初から一流のクリエイターと組めるほうが絶対にいいですよね。
それにいいクリエイターも、本当はスタートアップと仕事をしたいと思っても、報酬が見合わないため難しいというジレンマがあります。
―― スタートアップとクリエイター、双方にジレンマがあると。
梅田:そこで、いいクリエイターがスタートアップにクリエイティブを投資して、現金の代わりにストックオプションで、将来の成長からリターンを得る仕組みを「NEWS」で提供しています。そうすることで、有望なスタートアップといいクリエイターのマッチングを実現しているんです。
―― なるほど。では、「NEWS」をプロフェッショナルの集まりであるギルド型組織にしたのはなぜですか?
梅田:それは、「弱いつながり」に価値があると思ったからですね。
―― 「弱いつながり」?
梅田:アメリカの社会学者であるマーク・グラノベッターが提唱している「ウィークタイズ (Weak Ties)」という考え方があって。ビジネスでは、親戚や家族など関係が濃い人からの情報よりも、パーティーで偶然出会ったような関係性の薄い人からの情報のほうが有益なんだそうです。知り過ぎた間柄の人とばかり接していると興味関心が広がらず、新しい発見がどんどん減ってしまうんですよね。
最所:週5日も会う社員同士では、つながりが強くなり過ぎるということですよね。
梅田:社員同士はもちろんだし、いまはギルド型組織がどんどん立ち上がっていますよね。そうしたギルド型組織も、仲の良い友達だけを集めると、つながりが強くなりすぎることがある。
―― だからギルド型組織のなかでも、「NEWS」では「弱いつながり」を意識していると。
梅田:そうですね。だから運営を担う3人のボードメンバーの「友達の友達」くらいまでの「弱いつながり」がある範囲内で、かつ編集やプロデュースなど、独自のスキルを持っている「強い人」を集めました。「弱いつながり」があるからこそ思いもしないような発見があって、「1+1+1=10」になる、みたいなシナジーが起こるのかなと。いまはまだ、そうなってないんですけどね。
カツセ:僕のイメージだと、「NEWS」って映画の「オーシャンズ11」っぽいですね(笑)。主人公オーシャンのようなボードメンバーのもとに、個性的なメンバーが集まって、同じお宝を目指してるようなところがある気がして。
最所:そうか、私たちオーシャンズ11だったのか(笑)。
―― カツセさんはフリーランスとして、これまでに地位を確立してきていたように思います。そんななかで、なぜ「NEWS」にジョインしようと思ったのですか?
カツセ:「NEWS」に声をかけてもらった当時、僕はフリーランス2年目の終わりくらいだったんですが、消耗していく感じをどうにかしたいと思っていたんです。
―― 消耗していく感じ、というのは?
カツセ:SNSのフォロワーが多くなったから、「SNSで拡散させてください」っていう仕事の依頼がめちゃくちゃ増えたんですよね。でもそういう仕事って、プロジェクトの最終工程にしか関われないし、打率だけがひたすら求められる。消耗するのが目に見えるから、近い将来を見据えて、どうにかしたかったんです
最所:影響力が大きくなると、そういう依頼がきがちですよね。
カツセ:あと、もうちょっとスケールの大きい仕事をやりたいっていう気持ちがありました。普段、僕がやっている仕事って、たとえるなら「下北沢から上北沢」ぐらいのスケールでしかなくって。
―― 結構ローカルな範囲ですね(笑)。
カツセ:それを「47都道府県」とか、それ以上のスケールまでいける仕事をしたいとずっと考えていました。そんなことを思っていたら、元々知り合いだった梅田さんから恵比寿に呼び出されて、口説かれた(笑)。「今のメルカリみたいな会社を最初に見つけてお手伝いして、『あの会社は俺が育てたんだ』っていつか言えたら、カッコよくない?」って。
梅田:そんなこと言ったっけ?
カツセ:言ってましたよ(笑)。それで、「NEWS」のボードメンバーには梅田さんと高木新平さん、佐々木芳幸さんがいると知って、「この人達と一緒なら、多分スケールの大きいことができるだろう」とワクワクして、ジョインを決めたんです。
―― 主要メンバーが誰かというのは、関わる組織を選ぶ時の重要な基準ですよね。
カツセ:今のところは一人でも頑張れば生きていけそうだから、組織に求めるなら、「信頼、尊敬できる人たちがいるところで働く」くらいしか浮かばなかったですね。
―― 最所さんはどういったきっかけでジョインを?
最所:私も当時、「フリーランスになったのはいいけど、そのあとどうしよう」って悩みを持っていたんです。まさにカツセさんが言っていたように、プロジェクトの最終工程にしか関れないジレンマは大きかったです。
―― 最終工程にしか関れないジレンマは、多くのフリーランスが持つのかもしれないですね。
最所:たぶん、個人で影響力をある程度持っている人たちに共通する悩みだと思いますよ。たとえば企業から「これをバズらせてほしい」という相談をいただいても「ここまで話が固まった上でご相談いただいても、できることは限られます」とお返事しなくちゃいけないことがよくあって。
カツセ:難しいボールをパスされて、「これで絶対にゴールを決めろ!」というような依頼が多いんですよね。
最所:そうそう、「ちょっと私の身長じゃボールに届かなくて、ゴール決められないですよ!」みたいな。でも「そもそもゴールそっちだっけ?」と言いたくなるような、プロジェクトの前提から問い直した方がいい場合もあるじゃないですか。
そのためには企画立案のような、プロジェクトの上流から関わらせてもらう必要がある。でも、なかなかフリーランスだとそこから関わらせてもらえないんですよね。
梅田:フリーランスがビジネスの上流に関わりづらいというのは確かにありますよね。企業が企画立案の段階からいきなりフリーランスに発注することは、かなりレアケース。その点、法人格があると、企業と法人として向き合うことができるので、上流から関われる可能性が上がります。
最所:そうなんです。だから、「NEWS」にジョインしたら上流の仕事に関われると思ったことが、ジョインを決めた大きな理由ですね。もっと上流からプロジェクトに関わるために、起業を考えたこともあるんです。でも「NEWS」なら、フリーランスでいながら上流の仕事ができるので、フリーランスの新しい稼ぎ方を実現できるのではないかと思いました。
あとは苦手なことを人に任せられることも、もうひとつの理由です。
―― たとえばどんなことでしょう?
最所:私の場合、クライアントから無理難題を依頼されたら「この企画でバズらせるのは無理ですよ!」とストレートに伝えてしまう。でも、本当は相手に不快な思いをさせることなく、上手に対応しなくてはいけないですよね。その交渉のさじ加減が私はすごく苦手なんです……。その点、「NEWS」のメンバーには交渉が得意な人もいて。
梅田:そういうコミュニケーションは僕が上手く対応しておきます(笑)。
最所:そんな風に、苦手なコミュニケーションや事務作業を得意な誰かに任せることができるのは、ギルド型組織のメリットだと思いますね。
―― スケールが大きい仕事をするのも、ビジネスの上流に関わるのも、ある意味で会社員になればできることですよね。それでもギルド型組織でそれらをやる意義は「フリーランスとしての自由を保ったままでいられること」なのかなと思いますが、どうでしょう?
梅田:そうですね。でも、フリーランスがみんな自由ってわけでもないと思います。たとえば、フリーランスって働き方の自由さだけじゃなく、本当はお金の貰い方も、もっと自由になっていいはず。「NEWS」の報酬は現金ではありません。スタートアップのストックオプションを渡していて、そうした報酬の貰い方が一つの選択肢になればいいなと。
カツセ:ストックオプションって、個人にとって短期的な収入にはならないけど、長期的な「保険」のような役割になるんですよね。不安定なフリーランスにとって、大事なリスクマネジメントになりうる。
梅田:なるほどね。その発想はおもしろい。
最所:あとは海外で仕事をするフリーランスが自由だと思われがちですけど、年齢のことを考えると、必ずしも自由だとは言えないと思っています。
結局は海外にいても、日本のクライアントの仕事をしていたりするじゃないですか。本来はある程度不労所得が入ってくるとか、海外に行ったら海外で仕事を取ってくるというふうに仕事の自由度を広げていかないと、この先自由でいられない。だって、歳を取って体力が落ちてきたら、東京で仕事をするよりも海外に行って日本の仕事をするほうが大変になるんですよ。時差もあるし。
カツセ:フリーランスの年齢問題ってありますよね。体力のことを考えると、だんだんと仕事の量を減らしながら収入は安定させていかないといけない。
僕はわりと本気で妄想してることがあるんですけど、いずれ山奥に住んで、「カツセさんにどうしても書いて欲しいんです」って若い営業マンがわざわざ会いに来て、「じゃあわかった。1本600万な」って言って原稿を書いて、その報酬で1年間暮らす……みたいな働き方をしたいなと(笑)。
―― それはいい生活ですね!
カツセ:そう。今はそうなるまでの道を組み立てているんです。
―― 最所さんやカツセさんが言うように、仕事の自由度を広げることが今後フリーランスとして生きていくためには大切。そのための場としてギルド型組織に関わることは有効なのでしょうか?
カツセ:僕はそう思います。僕みたいなライターだったら、記名の仕事はできるだけ「ホームラン記事」ばっかりにして実績をつくりたいですし、体力があるうちしかできないような、手動かす「労働」じゃなくて、体力がなくなってもできる、頭を使う「仕事」を増やしていきたい。その点、「NEWS」での仕事はスケールも大きいし、プロジェクトの上流から関わって頭を使う案件があるので、年齢を重ねてもその経験は生きてくるかなと。
最所:あと「NEWS」では、自分の強みを客観的にみてもらったうえで、プロジェクトにアサインしてもらえるんです。強みって自分では意外と分かっていなかったりするじゃないですか。だから梅田さんから「この案件だったら最所さんはこういうスキルを活かせるんじゃないか」とアサインされることは、すごくありがたいんですよね。
カツセ:たしかに、実績のない分野でも「これやってみない?」とポテンシャルを見て仕事を振ってもらうことで、自分の可能性を拡げる。これってギルド型組織に所属する大きなメリットだと思います。
―― ギルド型組織はフリーランスにとってすごく魅力的だな、と思えてきたのですが、きっと大変なこともありますよね?
最所:そうですね。とくにギルド型組織と個人の関わり方の度合いは、その人次第であることの難しさはあるかもしれないですね。他の仕事と、ギルド型組織から頼まれる仕事のどちらを優先するかなど、自分で判断しなきゃいけない。
―― 「NEWS」でも、人によって組織との関わり方の濃度が違うのは、仕方がないという感じなんでしょうか?
梅田:学校でも会社でもないので、集まりに来ないメンバーがいてもいいと僕は思います。一方でそれが過剰になると「なぜあいつは来ないんだ」と思う人が生まれてきてしまうので。そのあたりの最低限のバランスだけ考えつつ、今は「やりたい人がやればいい」と思ってマネジメントしています。
―― メンバーの自由に任せていると。そうなると、組織のビジョンや価値観など、メンバー同士の目線合わせはどうしているのですか?
梅田:このスペース(渋谷のコワーキングスペース「Laugh Out」)を借りた理由のひとつが、まさに目線を合わせですね。単純に業務を進めるうえでは、オンラインのコミュニケーションでやりとりが進むので、僕らには”場所”は必要ありません。でも、場所があれば顔を会わせて話をする回数が増えますし、表情やトーンといった細かいニュアンスまで共有できます。つまり会話の量と質が格段に上がるのです。一見無駄に見えて、実は合理的! 実際、僕らは週に1回、朝9時半に集まっているんです。みんなに「ヤダ」と言われますが(笑)。
カツセ:僕は自宅が遠いので、マジできついです(笑)。
梅田:いつも眠そうだけど、参加率が高いのはさすがだよね(笑)。でも、一方で会いすぎにも注意すべきだと思います。会社ならそれで良いのですが、せっかくのギルド型組織の強みが消えてしまいます。だから、無駄を減らす「効率化」と無駄をあえて増やす「非効率化」のバランスが重要だと思いますね。
―― なるほど。組織の意思決定はボードメンバーだけではなく全員で決めているんですか?
カツセ:全員にフラットで情報を渡されているので、みんなで考えていますね。
梅田:全て多数決にすると物事が進まないし、だからといって独裁的にやると不透明になってしまう。これもバランスが大切だと思います。
―― ここまで話を聞いて、フリーランスがギルド型組織で働くことの魅力が伝わってきました。そういう人に「『NEWS』に入れてください」と相談されたら、どうしますか?
梅田:うーん……難しい。個人的な意見ですが、組織の側から声がかかるまで待ったほうがいいんじゃない?って言いますね。
―― それはどうしてでしょう?
梅田:あくまでも「NEWS」の場合ですが、ギルド型組織はメンバーが相当実力のあるプロフェッショナルじゃないとやっていくのは難しいんですよ。即戦力の集まりなので。自分から「入りたい」という人は、まだ実力を養う段階なのかもしれません。成長すればメンバーの目にとまって、組織の側から「うちに入ってください」と声が掛かるはずです。
カツセ:確かにそうですね。僕は「憧れの人に自分から会いに行ってはいけない」と思っているんです。
最所:その感覚、すごくわかります!
―― え? 憧れの人には会いたくならないですか?
カツセ:会いたいですよ。でも、「会いたいです」ってお願いして会っても、その人にとってただのファンにしかなれないじゃないですか。「いつも応援してくれてありがとね」っていう関係になっちゃう。向こうから連絡が来るまでの力量に自分が達してないと、その後フェアな関係になれないんですよ。
最所:私も相手から来るまで、自分からは連絡しないですね。どうしたらあの人から会いたいって連絡が来るか、すごく考えてますもん(笑)。それは個人対個人の話ですけど、対ギルド型組織についても、まずはフリーランスとしてギルド型組織に入らなくてもやっていけるだけの地盤を作った方がいいですよね。
カツセ:ギルド型組織には色々なパターンがありますけど「NEWS」は少なくとも数年後にしかお金が入って来ない仕組みですから「それまでは自分で食ベていかないといけない」という条件があります。だからそれぞれが強いメンバーである必要があるんです。
―― なるほど……。フリーランスにとってギルド型組織に入るメリットはたくさんあるけれど、まずは自分でスキルを身につけ、経験を積むのが大前提ですね。梅田さん、カツセさん、最所さん、リアルなお話をたくさん聞かせてくださりありがとうございました!
(執筆:山中康司 構成:都田ミツ子 編集/撮影:Huuuu 撮影協力:Laugh Out)
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