【社労士解説】ジョブ型雇用時代におけるフリーランスの生存戦略とは?
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「フリーランスは育成するのが難しい。だから仕事ができないなら、もう二度とその人には仕事を頼まない」。
フリーランスに仕事を発注する立場の人と話をすると、そんな意見をよく耳にします。
でも、みんなが同じようにふるまっていたら、やがて一部のフリーランスに仕事が集中して、その人たちの単価が高騰します。逆に経験の浅いフリーランスには、挑戦の機会すらなくなります。コストがかかるフリーランスには頼みづらくなるし、仕事のないフリーランスは廃業に追い込まれる。そうして仕事を頼む相手の選択肢が減ってしまうのは、誰にとってもよくない状況です。
でも、仕事を発注する立場の人が、たとえ経験の浅い人でも「最大限にパフォーマンスを発揮できる環境」を作ることができれば、この問題は解決しそうです。これまで活躍する機会に恵まれなかった人たちと良好な関係を築くことができれば、心強い仲間になってくれるでしょう。人気が集中する人に頼むよりも、柔軟な対応をしてくれるかもしれません。
自己紹介が遅れました。株式会社宿木屋というコンテンツ制作会社の代表を務める、宿木と申します。私はフリーランスのライターさんの力を借りながら、企業が発信するWebコンテンツの取材・執筆・編集をしています。いま弊社で活躍しているライターさんは、もともとビジネス系の記事が得意だったわけではありません。長く一緒に仕事をする中で、少しずつ改善を繰り返し、今は「より良いコンテンツを作ろう」とお互い切磋琢磨できる仲間になれていると感じています。
今回は、そんなちいさなフリーランスのチームを組んで事業を運営する立場から、フリーランスのスキルを伸ばす環境やコミュニケーションの取り方についてお話します。
広告系の企画制作会社、教育事業会社での企画職を経て、2017年ライターとして独立。ビジネス領域のインタビュー記事執筆を中心に実績を重ね、2020年株式会社宿木屋を設立。チームで言葉を軸にした企業の発信支援を行う傍ら、個人名義でのコラム執筆や創作活動もしている。(X:@yuki_yadorigi)
まず、フリーランスとの付き合い方について改めて見直してみましょう。フリーランスに仕事を任せるとき、あなたは無意識に「外の人」という線引きをしていませんか?
正社員雇用でもしない限り、たとえ一緒に仕事をしていても相手は確かに「外の人」ではあるのですが、働くときの心的な距離感をもうすこし近づけると、よりパフォーマンスを発揮しやすい環境をつくれるかもしれません。
フリーランスに仕事を頼むとき、多くの場合はある業務を切り出して部分的に任せることになります。そうすると、仕事を受注する側は、プロジェクトの全体像を知らないまま業務にあたることも珍しくありません。
ベテランだと、この全体像を経験値から予測して、うまいこと対応してくれることもありますが、多くのフリーランスにとっては、全体像を把握できないことはパフォーマンス低下の要因になります。何を求められているのか、どんな成果物であれば満足なのか考えるためには、情報が必要です。
そのため、仕事を発注する側がフリーランスを「チームの一員」と認識することが大切です。たとえ部分的な業務を任せる相手だとしても、プロジェクト全体のゴールは何か、今後何を改善していきたいか、他に誰が関わっているかなど、全体像がわかる情報を伝えるといいでしょう。
もちろん、守秘義務などの都合上、すべてを伝えるのが難しいケースもあるかもしれませんが、透明性高く情報を開示する姿勢があれば、仕事を頼まれているフリーランス側は、それらの情報をもとにより良い仕事を目指すことができます。
仕事を頼む相手のことを評価するとき、専門スキルだけでなくベーススキルも見るようにしましょう。
たとえばライターの場合、わかりやすい文章を書く力は確かに評価すべき専門スキルですが、それ以外にも好奇心、学習意欲、傾聴力、課題発見力などがあると、幅広い記事の要望に対応できたり、対話から趣旨を捉えて的確な構成を作ることができます。
もっと言えば、文章を書く力は一緒に仕事をしながら磨いていけばいいのですが、好奇心や学習意欲をあとから伸ばすのは難しいです。
そのため、専門スキルのみに注目するのではなく、長い目で見たときに活躍できるベーススキルがあるかどうかも併せて評価するようにしましょう。
たとえフリーランスとしての経験が浅くて、専門スキルが不足しているように見えたとしても、ベーススキルが高い人であれば、経験を重ねればぐんぐん伸びていきます。長い目で見て一緒に働きたいと思える人であれば、経験の有無を問わず仕事を任せてみるようにしましょう。
次に、仕事を任せる相手が働きやすい環境を整えるための工夫について解説します。これはフリーランスに限ったことではありませんが、強みと弱みといった個性を把握し、それを仕事に役立てるのは、ビジネスパーソンにとって大切な視点です。
仕事をフリーランスに任せるときは、あまりこの視点が重視されていない傾向があるのですが、私は相手がフリーランスの場合、特にこの視点を活かすべきだと思います。
ひとつの職能を伸ばしている性質上、フリーランスの中には働き方や考え方に強いこだわりを持つ人もいます。
発注する側がそういった個性を「付き合いづらい」と突き放してしまうと、お互いにとって良い関係性が築けませんし、成果物のクオリティも下がってしまいます。相手のこだわりをどう活かすか、どこを妥協するか、丁寧にコミュニケーションを取りながらすり合わせましょう。
また、子育てや介護との両立など、仕事ができる時間や環境に制限があるからフリーランスを選んでいる人も少なくありません。そういった場合は、働く時間帯や、緊急の用事に対応する可能性など、条件に応じた柔軟な働き方を選べるように配慮するのが大切です。
仕事を通じて相手と信頼関係を築けてきたら、「相手がしたいこと(=Will)」を聞いてみましょう。その人に今まで頼んできた業務以外にも「こんなことがしてみたい」と言われるかもしれません。もしもそのWillに近い仕事を任せられそうなら、思いきって任せてみるといいと思います。
というのも、フリーランスという働き方は、新しい領域に挑戦する機会をつかむのがなかなか難しいものです。一度「この領域の仕事が得意(できる)」が明確になると、その領域の仕事が増えていき、それ以外のことに挑戦する時間は自然となくなっていきます。
発注する側が挑戦する機会を積極的に作っていけば、相手の新しい強みを発見できたり、モチベーション高く働いてもらうことができます。結果として相手がパフォーマンスを発揮しやすい環境をつくること、互いが心地よく働けることにもつながります。
フリーランスのスキルを伸ばすための環境づくりやコミュニケーションについて、いくつかのポイントをお伝えしてきましたが、そのすべてにおいて大切なのは、発注する側と仕事を頼まれる側、双方が信頼しあえる関係性を築いていくことです。
受発注の関係があると、どうしても発注する側が「上」、受注する側が「下」という上下関係が生じがちですが、本来お互いの関係性は対等であるべきだと私は思います。業務に対する対価を支払う側と、労働力を提供して対価を受け取る側は、対等に取引をしている間柄なのですから。
もちろん、フリーランスは会社員と違っていつでも仕事を辞めることができます。だからといって「いつでも辞めてどうぞ」と発注する側が上から目線で相手をぞんざいに扱っていては、心地いい関係性は生まれませんし、当然いい成果物も生まれません。
お互い対等に取引を継続するか、辞めるかを判断する権利があることを前提として、双方が「長く一緒に働きたい」と思える関係性を築いていくのが、一番いいですよね。
もちろん、仕事を頼まれる側が自分勝手にふるまうことを推奨しているわけではありません。ただ、発注する側がほんのすこし姿勢を変えたり、コミュニケーションに工夫を加えると、長く取引を続けられる、かけがえのないフリーランスの仲間を見つけられる可能性が高まります。
フリーランスと仕事をする際は、ぜひ今回紹介したポイントを意識しつつ、長く働ける最良の「仲間」を探してみてください。
(執筆:宿木雪樹 編集:少年B)
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