エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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こんにちは。デザイナーのこげちゃ丸です。
「どうして、ママが作ったお味噌汁はおいしいの?」
「愛情がいっぱい入っているからよ」
昔のホームドラマやCMに出てきそうなシーンですね。もちろん、家族のために愛情込めて作るお味噌汁はおいしい。でも、そのおいしさの秘訣はダシと味噌のバランスなんです。家族の好みに合わせて、毎日つくるお味噌汁。ダシと味噌の美味しいバランスはお母さんが積み重ねてきた経験から生まれているんですね。
では、デザイナーがクライアントから「どうしてこのバランスでレイアウトしたのですか?」と質問された場合はどうでしょう。「愛情込めてキレイなレイアウトにしました!」と答えたら怪訝な顔をされますよね。何気なく行っているデザインを、言語化できることは、とても大事なことです。
今回は、レイアウトの言語化についてお話します。
クライアントワークを中心に活動している、描いたり書いたりしているデザイナー。商品デザインからビジネスコンセプトづくりまで、幅広い領域で悪戦苦闘の毎日です。(Twitter:@onigiriEdesign)
あるクライアントにプロモーション用のポスターを提案したときのことです。素材が良かったのでデザインはシンプルに、基本に忠実なレイアウトで提案しました。
「文字はどうして、この位置なのですか?」 その質問にぼくはきょとんとしてしまいました。あまりに基本的なことを聞かれてビックリしたのです。トイレが終わったあと、「なぜ手を洗うのですか?」と聞かれた感じに似ています。一瞬の間を置いて、ぼくはこう答えました。
「三分割法でレイアウトしているからです」
三分割法とは、画面を9等分し、その線上や線同士の交点を基準に配置すると、バランスが取れたレイアウトになるという平面構成の基本です。レイアウトする上で最も大事なセオリーとも言えます。
デザイナーが何気なくレイアウトした構図も、無意識に三分割法を使っていることがあります。デザイン経験の浅い人が、レイアウトの理由を聞かれ「これが一番きれいだと思ったからです!」と答える場面を何度か見たことがあります。でも、その説明ではクライアントも納得してくれませんよね。デザインの基本的なことこそ、しっかりと言語化しておく必要があります。
文字配置の理由をぼくに質問したクライアントも、「三分割法」という言葉を聞き安心していました。クライアントもデザインに文句を言いたかった訳ではありません。「キャッチコピー周辺の余白が多いな、なんでだろう?」と疑問に思っただけなのです。
その疑問にデザイナーしか分からない感覚的な言葉で答えるのはよくありません。相手が理解しやすい言葉で説明するのはプレゼンの鉄則。クライアントのOKを貰いやすくなる上に、デザイナーへの信頼感も増します。おろそかになりがちですが、基本をしっかりおさえるのはデザインの言語化でも、とても重要です。
セオリーどおりにデザインしても、いつも上手くいくとは限りません。毎回同じ構図でデザインしては、クライアントに既視感を与えますし、自分の表現力も上がっていきません。落ち着いた雰囲気から動きのある躍動感溢れる表現まで、クライアントの要望に合せて表現を変えられた方が仕事の幅も広がりますよね。三分割法は、バランスが良く落ち着いた印象を与えますが、逆に動きのある画面にするには工夫がいる構図です。
オーソドックスな手法は、注視点(前述の図の丸部分)を使って画面に強弱をつけるやり方があります。もっとも視線が集まるオレンジの丸部分に大きいモノを、黄色の丸部分に小さいモノを配置すると、画面に奥行と動きが出せます。セオリーに沿ったアレンジなので、失敗が少ないやり方ですが、大胆な構図にはなりづらい。
では、もっと大胆な構図にするには、どうしたらいいのでしょう? その答えのひとつが、セオリーを崩す事です。いわゆる「型破り」ですね。
このデザインはモチーフこそ最初のデザインと同じですが、随分印象が違いますよね。もちろん、地図を削除して文字数を減らすなど、よりミニマルなデザインにする工夫はしてあります。でも、最初のデザインと最も違う点は、三分割法のセオリーを崩している点です。
メインモチーフのスイーツの中心は、右上の注視点とズレています。左下のテキストもボックスの枠に収まっていません。このちょっとした崩しが、画面に動きを与えているんです。
セオリーを崩し過ぎると、バランスが悪いデザインになってしまう。程よい崩し方は、数式で求めることはできません。デザイナーの積み重ねた経験による「センス」から生みだされるものです。では、センスとはいったい、何なのでしょう?
「服装のセンスを磨きましょう」と言われたら、まず何をしますか? 多くの人が、センスが良いと言われている服を見まくると思います。雑誌やセレクトショップで流行の服の情報を集めて、センスが良いと言われているサンプルを収集することに必死になるはずです。でも、それだけじゃダメなんです。
センスを磨くにはいいものも悪いものも含めて、さまざまなサンプルを知ることが必要だとぼくは思っています。「センスがいい」と言われるモノは、多くの人が共感するモノ。つまり、その分野の平均値なんです。ファッションショーでしか見ない、奇抜で尖ったデザインの服を着て街を歩く人がいたら、「すごい!」とは思っても、センスがいいとは思わないですよね。
デザインのレイアウトも一緒です。誰も見たことがない尖ったレイアウトは、アート性はあっても一般の人に共感してもらえません。ぐちゃぐちゃした、バランスの悪いレイアウトは、当然ですが嫌われます。多くの人が美しいと感じる「レイアウトの平均値」が、三分割法に代表されるレイアウトのセオリーなのです。
デザイナー同士で話しをするとき、「どこまでデザインを飛ばそうか?」という会話をすることがあります。これも、その分野の平均値を知っていて、セオリーを共有できてるから成り立つ会話なんです。車を飛ばすにしても、一般道と高速道路では平均速度が違いますよね。一般道を100kmで走っては危ないし、高速道路を40kmで走ったら迷惑です。
クライアントから「飛ばしたデザインにしてください」と言われ、提案してみたら「もっとコンサバにお願いします」という場面はよくあります。これも、お互いが考える平均値の差から生まれるコミュニケーションギャップなんです。
先人が作った、その分野のセオリーに沿ってデザインすることは、「型」を覚えるうえで意味があります。でも、さらにその上を目指すならば、型を崩すことに挑戦しなくてはなりません。そのためのトレーニングとして、世の中に溢れるさまざまなデザインが、型どおりなのか、型破りなのかを普段から意識して見ることをオススメします。
デザインコンペで優勝するような優秀な作品は、みんながぎりぎり許容できる絶妙な距離でセオリーを外してるものです。逆に、もしあなたのデザインがダメ出しされてしまったのなら、少しセオリーから外しすぎていたのかもしれません。
レイアウトのセオリーには、三分割法以外にも「日の丸構図」や「三角構図」といったさまざまものがあります。いいデザインはどれくらいセオリーを崩しているのか? もしくはセオリー通りのデザインなのに感動するのはなぜか? セオリーとの距離感を意識してデザインを見る訓練をすると、センスが磨かれていくのではないかな、とぼくは思います。
(執筆&イラスト:こげちゃ丸 編集:少年B)
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