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法人成りしたら、お金の扱い方がフリーランス時代と180度変わった話

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フリーランスとして仕事量が増えてくると、法人成りという言葉が頭をよぎりませんか? 法人化には「取引先から信頼を得られる」「節税対策ができる」「従業員を雇用できる」などさまざまな効果があります。

私自身、フリーランスのWebライターとして年間の売上が700万を超えた頃、思い切って法人成りしました。ただ、正直なところ「節税できたらいいな」「新しい仕事が増えるかも」と思っていただけで、何がどう変わるかまではいまいち想像できていませんでした。

そんな会社も4期目を迎え、あらためて思うのは、お金のつかい方がずいぶん変わったということです。じつはお金のつかい方に関しては、けっこう大きな失敗も繰り返しています。今回は法人成りしたあとのお金のことを赤裸々に語りますので、これから法人成りする方、あるいは法人成りして間もない方に、お金にまつわるあれこれを想像していただければ幸いです。

宿木雪樹
宿木雪樹

広告系の企画制作会社、教育事業会社での企画職を経て、2017年ライターとして独立。ビジネス領域のインタビュー記事執筆を中心に実績を重ね、2020年株式会社宿木屋を設立。チームで言葉を軸にした企業の発信支援を行う傍ら、個人名義でのコラム執筆や創作活動もしている。(X:@yuki_yadorigi

お金の感覚が狂いまくったフリーランス時代

法人成りしてからのお金の話を始める前に、すこし過去の話をさせてください。私は大学卒業後、いわゆる”ブラック”な会社で約6年間勤めてからフリーランスになりました。

過酷な残業に慣れて感覚がマヒしていたのと、ライター未経験で独立したことへの不安から、当初はけっこうなハードワークに明け暮れました。そのおかげか、1年も経たないうちに毎月の売上が会社員時代の給与額を超えたのです。

「稼げる!しかも時間が自由につかえる!」という解放感にしびれた私は鬼のように働いて、そのぶん趣味や飲食にお金をつかうようになりました。でもこの働き方だと、納税額がえらいことになります。いろいろ調べて法人成りという言葉に出合ったのも、この頃でした。

節税対策で法人化したら生活水準が下がった

きっかけは節税対策だったものの、法人成りすれば仕事の幅が広がりそうだし、今よりも安定した資金繰りを計画できそうです。私が読んだ法人成りについての記事にはいいことばかり書かれていたので、「よっしゃ、法人成りしよ!」と、ほぼ勢いで決意しました。

ネットで調べた法人登記の仕方を参考にしながら、司法書士の方に相談して手続きに関わる書類をつくってもらいました。そのとき、「資本金を決めて」と言われ、「1円じゃカッコつかないよなぁ。100万円くらいなら会社っぽいかな」と、深く考えずに100万円に設定しました。

冷静に考えたら当たり前のことなのですが、この資本金って出資者(私の場合は自分自身)のお金を会社のお金として口座に入れるんですよ。つまり、個人として自由につかえるお金が一気に100万円減ることにあとから気付いて、「しまった、1円にしておけばよかった……!」と反省したのを覚えています。

法人成りしたことで私は会社の代表取締役社長になったので、役員報酬をもらうことになります。つまり、自分で稼いだお金から、自分で決めたぶんの役員報酬を、自分に支払うんです。でも役員報酬は月々の売上に応じて変動させられないので、法人口座の残高から毎月確実に支払える金額を設定する必要があります。となると……そう考え始めたら、私はびびってしまい、かなり低い金額に設定しました。

結果として1期目は、個人として自由につかえる100万円を失い、自分の口座に毎月入る金額もガクンと落ちたので、生活水準は一変しました。「節税対策」というよりも「強制的に節約生活に追い込まれた」のほうが近い感覚です。

翌年以降は納税金額も下がりましたが、「なんだか想像していた生活とは違うなぁ」と当時は首をかしげていたものです。一方、周りから見たら私は“社長”なので、知人からは「やあ~、おごってくださいよ社長!」なんて冗談を言われたことも。社長になる前よりも貧乏になったとはとても言えませんでした。

余談ですが、私が法人成りした直後、ちょうどコロナ禍がやってきました。私もその影響で一時的に仕事が減ったため、法人口座にキャッシュを残す意識があったことに救われました。

また、法人成りしたてでも小規模事業者として持続化給付金を受け取れたことが印象に残っています。世界規模のパンデミックで仕事が減るなんて想像もしていませんでしたが、「法人成りしておいてよかった」と思いました。

仕事は増えたし仲間も増えた、けれどなぜか赤字になった

2期目以降は事業が軌道に乗り、たくさんお仕事をいただけるようになりました。自分ひとりでは対応しきれない仕事も多くなってきたので、業務委託契約で仲間を増やすことに。

ライターを中心に、カメラマンやデザイナーの方とも仕事でつながりを持つことが増えました。フリーランス時代よりも任せていただける仕事の領域が広がっていき、仕事が心底楽しくなってきたのがこの頃です。

また、1期目の決算報告書を自分で作ってみて「これはプロに頼んだほうがいい」と確信したので、2期目以降は税理士事務所と契約しました。担当の税理士さんから「これだけ売上があるなら、役員報酬をもっと出したほうがいい」「節税対策なら、経費を増やせばいい」とアドバイスをいただき、「そうか、もっと私はお金をもらっていいんだ」と役員報酬を大幅にアップし、経費にできるものはとにかく計上するようになります。

そうして順風満帆……のはずが、2期目の決算で出てきたのは「赤字」の二文字。こんなに働いたのに、なぜ!?

忙しすぎて気付きませんでしたが、振り返れば売上計画をろくに立てず、経営者が見るべき数字も無視して、ただただ「ご依頼いただいた仕事を信頼できる仲間たちとやるのが楽しい!」という気持ちだけで突っ走った1年間でした。つまり、人件費や経費をつかいすぎたのが赤字の最大の原因です。節税対策と言って浪費した結果、赤字になるなんて本末転倒ですよね。

フリーランスだろうと、法人成りして経営者になろうと、私自身がお金のつかい方について真剣に考えない限り、根本的な問題は解決しない。それを身に染みて初めて、苦手な数字に向き合うようになりました。

お金のつかい方を考え、ようやく方向性が見え始めた4期目

とはいえ、一度回り始めた仕事の仕方をそう簡単に変えることはできません。「今まで仕事をお願いしてきた、お世話になっている方々への報酬は下げたくない」と頭を抱えたり、「新しいことに挑戦するための資金を残しておけばよかった……」と後悔したり。3期目は思うように変われないまま仕事に追われる日々を送ります。

そんな中でも、管理シートをもとに売上状況を把握することや、提供する成果物の質を高めて取引先に発注額を見直していただくといったところには取り組めました。

そうして迎えた4期目、有料ツールの見直しや人件費の最適化にも取り組み始めたことで、ようやく健全かつ新しいことにも挑戦しやすい環境が整いつつあります。

試行錯誤をしているうちに気付いたのは、「節税対策」を目標にしてはいけなかったということです。何か為したいことがあるうえで必要な経費は使って、それでも支払うべき税金は支払う。そのほうが健全な考え方だよな、とあらためて思います。

この4年間で、法人格として挑戦したいことや共に働く仲間が増えました。フリーランス時代は生きるために働かなければ、人生を楽しむ資金は多いほうがいいという個人的な考え方に囚われていたなぁ、と思います。そういう考え方が悪いわけではありませんが、その考え方のまま法人成りすると、押し寄せるギャップに苦しむことになります。

私の場合「会社や事業を育むこと自体、めちゃくちゃ楽しいのでは?」と気付いて、法人として何ができるのか、何を生み出せるのか、そしてそのためには何にお金をつかったらいいのか、どれだけ予算が必要かといったことを初めて考えるようになりました。

考えたことのない、しかも正解がないことだらけで、法人成りしたことを後悔した日もありました。しかし、そういう考えに至れたおかげで、たくさんの出会いや挑戦の機会に恵まれているので、お金には代えられないものを得られたのだと今は思います。

フリーランスと会社の「お金のつかい方」の違い

ところで、私は自分自身の給与を振り込むようになって初めて、厚生年金保険料は労使折半負担(※会社と加入者本人が半分ずつ負担する仕組み)になっていることを自覚しました。

たった1人雇うにしても、義務づけられた手続きや納税などの業務がたくさん発生していることを、自分が当事者になってようやく知ることができたのも法人成りしたからです。また、共に働く人材の育成・マネジメントにも一定のコストがかかります。

会社員だった頃、「たくさん働いているのに、どうして給与はこんなに低いんだろう」と疑問に思っていました。もちろん、その会社の仕組み自体にも問題はあったのでしょうが、私ひとりが雇われることに対して、これだけ裏でコストがかかっているのだと当時知っていたら、捉え方が違ったかもしれません。

組織でしか挑戦できないこと、出せない利益があること、そして会社を存続させていくことの大変さが理解できて、あらためて個人の給与としては妥当な金額だったのかもしれない、と思い返すようになったのです。

そしてフリーランスの頃は「いっぱい稼げる」と安易に思っていたけれど、チームで働くことや法人を育むことの楽しさを知らずにあのまま生きていたら、私はきっとお金のつかい方について真剣に考えることはできませんでした。

何が「豊か」なのかは個人によって異なると思いますが、私は自分のお金に対する考え方を変えるきっかけになったので、法人成りして良かったと思います。

フリーランスが法人成りするきっかけとして、非常によく聞く「節税対策」ですが、それは本質ではありません。

仕事が軌道に乗っているフリーランスの方であればあるほど、お金のためだけに法人成りすることを安易におすすめしたくないと個人的には思います。法人成りするとお金のつかい方が変わり、新たに考えることが増えますし、どうせひとりだったら個人事業主とたいして変わらないはず、という想像はおおいに裏切られるからです。

一方で、法人成りすれば自然とお金のつかい方や出会える人、できる仕事は変わっていくし、そこで自分自身が成長できることは間違いありません。私はこのポイントにおいて、法人成りに挑戦することを心からおすすめできます。

今後法人成りを検討している方は、ぜひ金銭的なメリット以外のところも視野に入れて、ご自身がどうするか慎重に検討してみてください!

(執筆:宿木雪樹 編集:少年B)

【連載】個人事業主/ひとり法人で生きていくために大切なこと

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