【社労士解説】ジョブ型雇用時代におけるフリーランスの生存戦略とは?
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読者のみなさん、ご無沙汰しております。2021年にフリーランスから法人成りし、株式会社を経営している夏野です。
会社を作ってから2年半が経ちました。今のところキャッシュもそれなりにあるので、無事に3周年も迎えられることでしょう。これもすべてお客様と、一緒にお仕事をしてくださるフリーランスの皆様のおかげです。
そんなわけで今回は、会社を作ってから2年半の歩みを「数値面」から振り返ってみました。売上や役員報酬、会社の規模はどのように変化したのでしょうか? 生々しい法人化のリアルをご覧ください。
フリーランスの編集者・ライター。コンテンツマーケティングやディレクション、マネジメントに仕事の幅を広げ、2021年7月に1人会社を設立。高等学校教諭一種免許状(国語)保有。京都大学大学院博士課程指導認定退学(博士論文準備中)。趣味はゲーム。(X:@Natsuno_Kaoru)
この記事を書くにあたって、ちょっと気になったのが「起業後の生存率」でした。何事も長く続けるのは難しいもの。この3年を乗り切ったのはどのくらい「すごい」ことなのか、素直に知りたくなったのです。
そこで調べてみたところ、中小企業庁の出している『中小企業白書:2017年版』という資料に、こんなグラフが載っていました。
このグラフによれば、起業後の企業生存率は1年後で95.3%、3年後で88.1%、5年後で81.7%となるようです。つまり、3年間で見れば、10社のうち9社は生き残る計算になります。
さらに、日本での開業率・廃業率は「ともに欧米諸国に比べて低い」といい、「起業する企業数は欧米諸国に比べて少ないが、一方で起業後に市場から退出することなく長期にわたり事業を継続させている企業の割合は、欧米諸国に比べても高い傾向」とあります。
かんたんに言うと、「起業する人は少ないけど、いっぺん起業しちゃえば、安定して経営される会社が多い」ということですね。
そう聞くと「あんまりすごくないかも」ですが、少なくとも100%ではないわけで、安定して経営できたことは評価に値するかなと思います。自分を褒めていかなくちゃね。
さて、みなさんが気になるのはズバリお金の話でしょう。そりゃそうです。「ぶっちゃけいくら儲けてんの?」が知りたいのは当然です。
夏野の場合、フリーランスの時期も含めてこのように売上が伸びていきました。
【フリーランス時代】
- 2018年:約273万円
- 2019年:約363万円
- 2020年:約566万円
【法人化後】
- 2021年度:約1653万円(※フリーランスとしても活動)
- 2022年度:約3204万円
- 2023年度:約1880万円(※上半期のみ)
2023年の下半期は、今のところ横ばいか、あとで説明する研究活動との兼ね合いで、多少は下がるかもといったところ。2024年度は、今のところ細々とやっていくなら食べるには困らない感触があります。
また、社長のお給料ともいえる役員報酬に関しても、以下の通りに推移しています。
- 創業当初:額面35万円、手取り27万5928円
- 2023年:額面60万円、手取り46万7326円
- 現在(2024年):額面120万円、手取り91万4532円
取引先に関しては、2年目の前半までは順調に増えていました。きちんと数えたことはありませんが、小口や単発のお取引も含めれば、少なくとも10社はあったでしょう。
当時は立ち上げ当初だったため、とにかく多くの企業と取引をすることでリスクに備えたい気持ちが強く、精力的に営業活動をしていました。
が、2年目の後半からは事情が変わりました。というのも、夏野は法人経営と研究者を兼任しているため、この時期から論文執筆で忙しくなり、多くのクライアントとこまめに連絡をとりながら仕事を進めていくことが難しくなったのです。
しかし、ご縁があった以上、すべてのクライアントに丁寧に対応したいもの。「今月はいけそうです!」「今月は学会が2つあるので一切お仕事を受けられません!」みたいな対応はしたくありませんでした。
そこで迷った末に、後任を探したうえで、いくつかのお取引を辞退させていただきました。
そんなわけで最近は大口のお取引を中心に、ごくわずかなお客様とやりとりをしています。これは研究のために必要なことでしたが、取引先の調子と売上が完全に連動してしまうため、会社としての安全性は著しく下がったのを実感しています。
投資のセオリーに「長期・積立・分散」というのがありますが、会社経営もまた、「多くのお客様と」「長期的にお付き合いをし」「少しずつ業務量を増やしていただく」のが安全だなと学びました。
「売上倍増」と書くと「すごい!」と言ってくださる方も多いですが、自分の力だけで成し遂げたわけではなく、多くのフリーランスさんのお力あってこその結果です。
夏野の場合、立ち上げ当初と今では、関わる人数は3倍になりました。具体的には以下の通りです。
【立ち上げ当初】
アシスタント1名、フリーランス5〜6名
【現在】
アシスタント3名、フリーランス15〜16名
(※繁忙期は+5名程度)
参画の頻度や担当範囲は人によって違うので、単純に仕事量が3倍になったわけではありませんが、規模が大きくなったのは事実。同時に、直接やりとりできる人数の限界がやってきた感覚があります。
関わる人数が増えると、「最近どうしていらっしゃるかな」「お仕事に不満はないかな」という機微をキャッチするのが遅くなってしまうからです。これは組織としてかなりまずい状態なので、根本的に手を打ちたいところですが、なかなか難しい。
というのも、1人でやってきたからこそ、「しゃーねーな、夏野のためなら受けてやるか」という“温情”に助けられてきた面があるわけで……。
中間管理職を置くと柔らかい部分がなくなってしまうので、合理的で不満のない仕組みづくりを本気でやらないとダメなんですね。それには多分、まったく新しい会社を作るのと同じくらいのエネルギーが要りそうな予感です。先は長い。
右も左も分からないところからアシスタントさんを探し、パートナーのフリーランスさんを探し、取引を拡大し……。ときにつまずきながらジタバタしていたら、この2年半は一瞬で過ぎていきました。
あまりにあっという間だったので、何かを積み上げてきた実感もありませんでした。ただ、いざ振り返ってみると、それなりに頑張ってきたのかなと。たとえ88.1%の「普通の会社」でも、なんとかやって来られたことに感謝してもしきれません。
というわけで今回は、数字まわりについて2年半を振り返ってきました。次回は精神面での変化など、より柔らかい部分の変化を振り返りたいと思います。
(執筆:夏野かおる 編集:少年B イラスト:あずさ)
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