フリーランスと会社の付き合い方。従う義理はない、だけど育てる義理もない

フリーランスと会社の付き合い方

「フリーランス」をコトバンクで引くと、以下のように説明されています。

中世ヨーロッパで、主君を持たず自由契約によって諸侯に雇われた、主として騎士。(出典:コトバンク

つまりフリーランスとは、技能と引き換えに報酬を得る、現代を生きる騎士なのです。

ところが世の中を見渡してみると、面接時などに「お仕事を通じて成長したいです!」とおっしゃるフリーランスの方もそこそこいるようです。

いや、分かるんです。確かに、実際の仕事を通じてしか得られない経験や知見はありますし、それが成長につながる事実には100%同意です。でも、クライアントに直接「自分を育ててください!」って言っちゃうのは、なんか違うと思いませんか?

というわけで今回は、「フリーランスの仕事はスクールの授業じゃないぜ!」って話を、自戒を込めてしたいと思います。

夏野かおる
夏野かおる

フリーランスの編集者・ライター。コンテンツマーケティングやディレクション、マネジメントに仕事の幅を広げ、2021年7月に1人会社を設立。高等学校教諭一種免許状(国語)保有。京都大学大学院博士課程指導認定退学(博士論文準備中)。趣味はゲーム。(Twitter:@Natsuno_Kaoru

と、その前に。この話は「ちゃんとしたクライアントとのやりとり」について話します

この記事では、「クライアントさんに甘えるのはよくないぜ!」「ある程度、自分に厳しく行こうぜ!」って話をするつもりですが、中にはクライアント側の要求が異常に高かったり、そもそもの契約内容が不当だったり……なケースもあります。

ところが真面目なフリーランスだと、そういった不当要求にも「自分のスキルが足りないせいだ」「自分はまだまだ甘いんだ」と落ち込んでしまうことがあります。本題に入る前に、「いやいや、それは違いまっせ」という認識を共有させてください。

たとえば、私はぜ〜んぜん料理ができないのですが、レトルトを温めるくらいならできます。

この前提の上で、クライアントから「レトルトでいいから、カレー作って」と指示され、「あ、温め忘れてました! いまワキの下に挟んで温めますね(笑)」で済ませるのは非常にマズイですよね。これからするのは、こっちの話です。

てへぺろをする女性

▲図太く生き抜くスキルはフリーランスに必須。とはいえ、すべてを「てへぺろ」で済ませるのはマズイですぞ!

一方で、クライアントから「カレーっつったら3日かけてスパイスから仕込むのが当然だろ! 仕事舐めてんのか!? オォン!?」「レトルトに金は払わねえ!」って言われたら、それは不当要求ですよね。

ただ、後者のケースは本記事の趣旨から外れるところですので、こういった記事などを参考に、適切な場所に相談してください。

好条件バイトで「切られる瞬間」を目の当たりに

閑話休題、フリーランスの仕事の話に戻ろうと思います。現実の厳しさを伝えるために、ひとつ実話をご紹介しましょう。

かつての私はアルバイターで、塾講師をはじめ、さまざまなアルバイトを経験しました。中でも印象深かったのが、新幹線の列車内アンケートの仕事。まる3日拘束される代わりに実入りがよく、報酬はニコニコ現金払いとあって、金欠学生にはありがたい存在でした。

この条件から、自然と学生アルバイトが多い現場だったのですが、ある日、とある学生グループが大切な資料の置かれた机でお弁当を食べ始めました。いや、いや、いや、資料にソースがついたらどないしますねん。

ハラハラしながら見ていると、社員さんがやってきて、まずは優しく「ごめん、そこの机は困るんやわぁ」と声をかけました。

これで一段落……と思いきや、その学生バイト達は、同じく資料の置いてある、別のテーブルに移って食事を続けたのです。

お弁当を食べ始める学生グループ

▲怖いものなしかい!

いや、いや、いや。そう来たかあ、となりゆきを見守る私。

社員さんが再び「ごめんやけど、ここはちょっとアカンわ。控室で食べてほしいな!」と声をかけると、学生バイトは「ウッス」的な感じで退室。こうして学生バイトグループがいなくなると、

「もう、あの子らはナシや!!!!!!」

ブチ切れる社員さん。そりゃそうなりますよね。

おそらくですが、このグループは翌日のシフトから除外されたか、少なくとも、次回以降の案内は来なくなったでしょう。好条件のアルバイトだったのに、二度とチャンスを掴めなくなってしまいました。

クライアントには、あなたを育てるメリットはない

ここで、このエピソードを振り返ってみましょう。

学生バイトと社員さんのやりとりを見ると、注意をされているようでいて、本質的なコメントはもらえていないことに気付きます。

つまり、

「ちょっと困るわあ」
「よそで食べてんか(食べてください)」

と行動を指示されているだけで、「そもそも、なぜここで食べてはいけないのか」を教えてもらえていないのです。

もしも保護者や、学校の先生であれば、「大切な資料を汚す可能性があるので、同じ机で食事をするのは好ましくない」という、おおもとの問題を指摘してくれたかもしれません。そうすれば次回以降、同じようなシチュエーションで行動を改められるでしょう。

しかし、社員さんはお金で労働力を買っている立場。その場できちんと働いてくれるかどうかが重要なのであって、その学生バイトが社会に出て苦労するかどうかなんて、知ったこっちゃないわけです。

誰しも経験があると思うのですが、人の行動を注意したり、叱ったりするのには体力が要ります。相手の尊厳を傷つけないように、かといって回りくどくならないようにと考えていると、けっこう頭を使います。

じゃあ、それを、アルバイトの雇用主が負担する義理はあるのか? はっきり言って、ないんですよね。

優しく切られる、それがフリーランスの現実

これと同じことは、フリーランスにも言えます。というか、案件完結型なことが多いぶん、フリーランスのほうがもっと容易に切られます。

とくに最近ではフリーランスの発言力が上がっているので、こちらとしては丁寧に注意したつもりでも、Twitterで「こんな人格否定発言をされました! 株式会社〇〇には注意してください!」と“注意喚起”されたら、会社の名前に傷がつくかもしれません。

そんなリスクを負ってまでフリーランスに注意するメリットって、はっきり言ってゼロです。

注意喚起によって会社の評判が下がるかも

▲額に汗して育てたのに会社の風評が不当に下げられたら……心情的には、訴訟して済む問題ではありません。

※念のために書いておきますが、Twitterを使った告発自体を否定する意図はありません。ここで挙げたのは、偏った立場から、必ずしも事実とは言えない事柄を針小棒大に書き立てるケースです。

この前提に立った上で、スキル不足や、ビジネスマナーが身についていないフリーランスは、どうなるでしょうか。

誰からも注意してもらえず、「ふんわり契約を切られる」ことが続きます。自分では何が悪かったのか分からないので、行動を改められません。だから、次のクライアントにも同じことをして、またふんわり切られる。この繰り返しです。

因果応報から抜け出したい!成長のコツはこれだ

では、フリーランスがこの悲しき因果から解き放たれるにはどうすればよいのでしょうか。

個人的には、以下の3つがポイントかなと思います。

ポイント1. お金をもらう以上、プロ意識を持つ

いきなり精神論になって恐縮ですが、やはり、プロ意識があるかないかは何よりの前提。ですから、あえて書きました。

というのも、(私のメイン業務である)Webライターの仕事だと、「空いた時間でスマートにお小遣い稼ぎ♪」みたいなトーンで捉えられていることも多いんです。

でも、発注する側は、フリーランスに「お小遣い」をあげたいわけではありません。あくまでもプロとして依頼し、プロとして報酬を支払っています。

たとえば誤字・脱字がひどかったり、固有名詞が誤っていたりする、完成版とは言えない原稿では……。ちょっと、プロ意識があるとは言えませんよね。

フリーランスの「納品」=完成版をお渡しすること。この意識を持っていないと、継続してお仕事をご依頼するのは難しいのかな、と思います。

ポイント2. 他人の失敗談から学ぶ

どんな業界でも、仕事をしていると、取り返しのつかない失敗をしてしまうことがあります。だからこそ、次回以降は気をつけようと学べる一面もあります。

でも、できれば失敗は未然に防ぎたいもの。この二律背反を、どう解決すればいいのでしょうか。

その答えのひとつが、「他人の失敗から学ぶ」です。たとえば、私はカメライターなので、カメラマンさんの仕事論に関する本をいろいろと読みました。そして、

  • 現場について、SDカードが入っていないことに気づいた
  • バッテリーの充電を忘れていた
  • 白い服を着てしまい、いろいろなところに反射で映り込んでしまった

……など、駆け出しカメラマンがやりがちな失敗を知ることができました。

みなさん、ドジっ子なことは隠したがるものなので、失敗談がスムーズに見つかることは少ないかも知れません。でも、気心の知れたフリーランスの先輩などであれば、「ここだけの話」として教えてくれることもあるでしょう。

「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」。人様の失敗から、ありがたく学ばせてもらいましょう。

ポイント3. 長期的なクライアントをつくり、フィードバックをもらう

最後は、私が実践している方法です。

クライアントとの取引が長くなると、だんだんと気心が知れてきます。願ってもないチャンスを与えていただけることもあれば、こちらが無茶振りを聞くこともあるでしょう。そうやって関係を深めた上で、「今後のために、私に足りないものや、直すべきところを教えて欲しいです」とお願いするのです。

もちろん私だって人間ですから、指摘をもらって楽しいはずはありません。図星がクリティカルヒットして吐きそうになったこともあります。

でも、繰り返しになりますが、クライアントがフリーランスに注意するメリットってまったくないんです。それでもわざわざ対応してくださっているのだから、理不尽な人格否定でない限りは、しっかりと対応しなければいけません。

そのようにして改めていけば、「この人は向上意欲がある」と判断され、「ふんわり切られる」よりも前に注意してもらえる可能性が上がるはず。ぜひ実行してみてください。

やけ食いをする夏野

▲人間ですから、注意されれば落ち込みます。そんなときはカロリーで解決だ!

経営者には「切る」スキルが必須

私はこれまで、いちフリーランスとして活動してきました。しかし7月からは経営者となり、規模こそ小さいものの、フリーランスさんにお仕事を依頼する立場となりました。

そんな中で、ビジネスの先輩から言われるのが、「フリーランスはスキルを売っている存在。甘やかしてはいけないよ」「いつか必ず『切る』経験もするはず」というアドバイス。人情にほだされず、一定のクオリティに達していない納品物にNOと言う勇気は、経営者に必須の能力なのだそうです。

フリーランスのメリットは、それぞれのポリシーに合わせて仕事を選べること。「なんかフィーリングが合わないな」で断ったって咎める人はいません。

しかし、その一方で、フリーランスは簡単に切られることも自覚しなければなりません。私もいつかはフリーランスを「切る」ことになるでしょう。それこそ、冒頭のように「仕事を通じて学びたいです!」と言われたら、「うちの仕事を勝手に教材にせんといて」と考えてしまうと思います。

フリーランスという働き方を選ぶなら、自分で自分を育てる意識を持ちましょう。私もまた、気をゆるめずに、謙虚に働き続けたいと思います。

(執筆:夏野かおる 編集:少年B イラスト:あずさ)

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