「僕が死んだら遺影をフリー素材に」“1円も儲からない”フリー素材モデルが生涯現役を誓うワケ

僕が死んだら遺影をフリー素材に

「フリーランスは専門性が必要な時代」と言われることが多くなりました。でも、専門性とは、いったい何なのでしょうか。わたしはライターをしていますが、グルメに旅行におもしろ記事まで、書けそうなものは何でも手当たり次第に書いています。自分の専門性って何だろう……そんな悩みを持つフリーランスも少なくないはず。

そんなとき、ふと気付いたのです。「ニッチだけどオンリーワンなお仕事をしている人の生き方に、専門性を身につけるヒントがあるのでは?」と。

今回お話をお伺いしたのは、自称「日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデル」の大川竜弥さん。“1円も儲からない”フリー素材モデルになった理由と現在についてお聞きしました。

大川竜弥(おおかわ たつや)
大川竜弥(おおかわ たつや)

自称「日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデル」。1982年生まれ、神奈川県出身。ユニクロ、Web制作会社、ライブハウス店長などを経て、2012年3月からフリー写真素材サイト『ぱくたそ』のモデルに。近年はウェブCMやTVにも出演している。

聞き手:少年B
聞き手:少年B

1985年生まれのフリーライター。モデルとは全く縁がないが、勝手にLINEスタンプを9種類も作られたり、コラ画像を作られハッシュタグとともに投下されるなど、本人の意思とは関係なくフリー素材と化している。

少年B:
今回は取材をお受けいただきありがとうございます。カメラマンもいますし、少し撮影してみてもいいですか?

大川:
はい、もちろんどうぞ。

大川竜弥 川辺

少年B:
これは……川辺にたたずむ男のフリー素材……!

大川竜弥 見つける

少年B:
あっ! 何かを見つけた!!!

大川竜弥 友達

少年B:
友達だ! 友達が船に乗ってやってきた! すごい、すべてがフリー素材に見える。これがプロの技なのか……!

大川:
とまあ、こんな感じです。本日はよろしくお願いします。

フリー素材モデルは出演料ゼロ

大川竜弥 真顔

少年B:
大川さんは「日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデル」を自称していますが、フリー素材モデルを始めてどれくらいになるんですか。

大川:
2012年の3月からなので、もうそろそろ9年になりますね。

少年B:
9年ですか!? 思った以上に長いことお仕事をされていた……! いきなりこんなことを聞くのも恐縮なんですが、フリー素材モデルって、儲かるんですか……?

大川:
いえ、モデルの出演料はゼロです。フリー素材がいくらダウンロードされてもサイトは儲かりませんよね。だから、100万回素材を使われたところで1円も入りません。

少年B:
ええ! それではいったいどうやって生計を?

大川竜弥 やや微笑み

大川:
最近では企業さんのCMなどにもモデルとして出演させていただいてますが、そちらでは報酬を頂いてます。あとはフリー素材モデルをやる前から個人でライターをしていて。コロナ禍で少なくなりましたけど、トークイベントの出演もあります。

現在はモデル業の収入が7~8割で、残りがイベント出演や執筆のお仕事ですね。数年前まではアルバイトもしていたし、最初のころはライターの比率が高かったです。

少年B:
ライターもされてるんですね!

大川:
もともと僕は専門学校を1年で中退して、ユニクロで4年くらい働いて、その後1年だけWebの開発会社にいたんですよ。そこの社内でちょっと記事を書いたりしてたのがライターになるきっかけですね。

少年B:
ちなみに、その後はどんなお仕事をしていたんですか?

大川竜弥 語り

大川:
その後はライブハウスの店長をしながら個人で執筆のお仕事を受けたり。で、ライブハウスを辞めたあとに「これからはITだ」と思って、派遣社員として家電量販店の携帯コーナーで働いたんですが……。ある日車に当て逃げされて怪我をしてしまい、怪我してる体では働けず、契約を切られてしまったんです。

少年B:
えええ!? 自分のせいじゃないのに!

大川:
幸い入院するほどじゃなかったんですが、身体も動かないし、どうしようかなと思ってたところで「フリー素材」ってものを見つけたんですね。

フリー素材になったのは「顔を売るため」

少年B:
ここでフリー素材が出てくるんですね。

大川:
ほんとに偶然なんですけど、インターネットを眺めてるときに「使えるフリー素材サイト〇選」みたいな記事を見かけたんですよ。こんなのがあるのかと。そのなかに、いま僕がモデルをやってる『ぱくたそ』ってサイトがあって。

少年B:
なるほど。ほかのサイトもあったなかで、ぱくたそに注目したのはなぜですか?

大川:
立ちあがって半年くらいのサイトだったんですが、デザインがよくて、写真のクオリティも高かったんです。代表の方がTwitterをやっていて、気も合いそうだったし、家も近かったので、モデルとして応募してみました(笑)

少年B:
そんな理由だったんですか! ではなぜフリー素材モデルになろうと思ったんですか?

大川:
当時はフリー素材モデルって、役者や女優の卵みたいな人たちがしれっとやっているものだったんです。なのでキャリアを積んだら辞めちゃう人が多いんですよね。その中で、「フリー素材モデルです!」って堂々とアピールして活動したら、フリー素材の第一人者になれるんじゃないか、なんとか仕事になるんじゃないかと思ったんです。

部下を叱責する上司のフリー素材

▲大川さんのフリー素材には「部下を叱責する上司」といったものから……

大川:
本当は自分を認知してもらうためにはいろいろ営業しなきゃいけないけど、フリー素材ならみんなが勝手に使ってくれて、とりあえず顔だけは売れるぞと。で、顔を売って後から名前を一致させれば、仕事のチャンスが広がるかなって。

少年B:
先見の明がすごい……! 実際、大川さんの狙い通りになりましたね。

大川:
そのまま全然だめだった可能性もあるので、運もよかったと思いますけどね。

「UNOって言ってないー!」と指摘する男のフリー素材

▲「UNOって言ってないー!」と指摘するようなものまでさまざま

少年B:
フリー素材の撮影には、お金はかからないんですか?

大川:
はい、基本的には払うことも頂くこともないですね。運営の人と2人で、「こんな写真があったらいいよね」って相談したり、ユーザーから寄せられた要望の中から撮れそうなものを撮ったりしています。

少年B:
シチュエーションや費用の問題もあるし、要望があっても撮れるとは限らないですもんね。

大川:
そうなんです。ただ、ぱくたそには「企業コラボ」というものがあります。会社さんに「こういうものを撮ってほしい」と言われて撮影するものですね。それに関してはちゃんと予算を出していただくので、モデル料も頂けます。

活動初期に話題になった「私の年収低すぎ……?」のフリー素材

▲活動初期に話題になった「私の年収低すぎ……?」のフリー素材

大川:
また初期で言えば「年収低すぎ」のフリー素材がありますが、「ネットで話題になったものをすぐフリー素材にして出す」というのはよくやってましたね。その結果、メディアに取り上げていただいたり、SNSで拡散されたりで、少しずつ認知されていったと思います。

「自分が死んだら遺影をフリー素材に」と遺言

少年B:
企業のお仕事もするようになった大川さんですが、フリー素材は今でも定期的に撮っているんですか?

大川:
月に1~2回は撮ってますね。やっぱり自分の原点なので、大事にしたいっていう気持ちもありますし。初期のころは月に3~5回は撮ってました。最初はさっき言ったように狙いがあって始めたんですけど、途中からはこれが天職だなって思えてきたんです。

この仕事は人に感謝されることが多いんですよ。「いつも使ってます」とか「無料なのにこんな素材を提供してくれてありがとうございます」とか声が届くので……。嬉しさもあるし、やりがいもあります。だからもう本当、生涯現役でやろうと思ってます。

少年B:
生涯現役! すごい決意ですね。

大川竜弥 嬉しそう

大川:
はい。僕は全身デジタルタトゥーですから(笑) 行くとこまで行ってやろうと思ってます。ぱくたそにも「僕が死んだらお葬式や遺影、お墓もフリー素材にしていいよ」って言ってあるんで。

少年B:
お墓までですか!?

大川:
もう遺言に書いてるんですよ。「僕が死んだらフリー素材にしてくれ」って(笑) やっぱり、人がやってないことをやることにチャンスがあると思うんですよね。

少年B:
お葬式の写真を撮らせてくれる人はさすがにいなそうですよね。本人がよくても普通だったら遺族が怒りそうです。大川さんだから言えることだ……!

大川流・仕事の取りかた

少年B

少年B:
先ほど、天職という言葉がありましたが、具体的にどういうところが向いていると思ったんですか?

大川:
僕は、自分自身にあまり関心がないんです。接客業みたいに、お客さんが来た状態で何かをアピールするのはすごい好きだし得意だったんですけど、自分の長所と言われてもよくわからない。

たとえば昔やってたライブハウスでは、イベントのブッキングという営業の仕事があったんですよ。気になるにバンドに「こういうイベントがあって、うちはこういうハコで、出るとこういうメリットがあって……」って声をかけるんですけど、それがすごく苦手だったんですよね。

少年B:
なるほど……! ということは、今までモデルとしても営業したことはないんですか?

大川:
はい。SNSとかブログで半分冗談、半分本気で、「仕事ください!」ってちょくちょく言うんですけど、それぐらいです。直接どこかに営業するってってことはないですね。

大川竜弥 ろくろ

大川:
ただ、SNSを使って「この企業とお仕事をしたい」って自分からアピールすることでお仕事いただいたってのは、結構あって。アピールをした会社さんとのお仕事は9割がた実現してるんです。

少年B:
えっ!? 「仕事欲しいな~(チラッチラッ)」で9割も実現するんですか???

大川:
それにはちゃんと理由があって。ネットに広告費をかけて、なおかつ僕みたいな変なやつをキャスティングしてそうな「ネット文脈」に理解のある企業さんの公式SNSに、その企業や商品が好きというのをアピールするんです。

少年B:
確かに! 大川さんが一緒にお仕事をされているキングジムさんや日清さんは、公式SNSの使いかたがおもしろい企業さんですよね。

大川:
なんとなく「自分が好きな企業だから」とアピールしても実現する可能性は低いので、自分と合致する企業さんを見極めるのが大事ですね。

あと、企業の公式SNSって、顔が見えないじゃないですか。でも公式SNSの向こうには必ず担当の方がいるので、絶対見てくれてるんですよ。仕事が決まって、現場でお会いしたときに、「あの時のやつ覚えてます」って言ってくれるんです。変な絡みかたはだめですけど、適切に絡んでいくことは大切ですね。

大川竜弥 手を組む

少年B:
SNSだとつい忘れがちですけど、企業アカウントでもちゃんと「裏に人がいる」んですもんね……。

大川:
やりすぎはよくないですけど、ある種ピンポイントで「自分、あなたの商品が好きです」って言うほうが、営業して歩くよりよっぽど可能性高い気がするんですよね。

「無個性」が僕の強み

少年B:
大川さんといえば自称「日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデル」ですが、どうしてこんなに素材が使われているのでしょうか。他のフリー素材モデルと何が違うんですか?

大川:
単純に9年間もやってるのでと、枚数が多いんですよね。色んなシチュエーション、真面目に使えるものからふざけた写真まで、バランスよく撮ってますし。

あとはよく言ってるんですけど、僕の外見って「可もなく不可もなく」なんですよ。顔に特徴もないし、イケメンでもない。すごく背が高いわけでもなければ、太ってるわけでも痩せてるわけでもない。

大川竜弥 嬉しみ

少年B:
はいと言ってしまっていいのか若干迷いますが、はい。

大川:
個性的な見た目の方だと、使うシチュエーションが限られちゃうんです。たとえば男性だったら、すごいごっつい人とか、ぽっちゃりしてる人とか髪の薄い人とか。どのシチュエーションでも使えるわけじゃないんですよね。

少年B:
確かに、そういう見た目だと「ジム」「ダイエット」「育毛剤」みたいな専門的な分野が頭に浮かびますね……。

大川:
そうすると、「広く使われる」のは難しいんです。僕は「可もなく不可もなく」をすごく意識していますし、「使いやすい」ことを突き詰めています。体型もそのために、適度にスマートになるよう維持しています。

あとは、「意見を言わない」ってのも意識してますね。好きなものは言いますが、主義主張や嫌いなものは言わない。「見た目も言動も無個性である」ということを強く意識しています。

大川竜弥 険しい顔

少年B:
プロ意識がすごい……!

大川:
それから、僕は「自分で自分の素材を使ってみる」ことをずっとやっています。ライターの仕事に繋がるんですけど、記事を書いてるとフリー素材って結構使うじゃないですか。そういう時に、どういう構図でどういう表情、ポージングの素材があればいいのかって、実際使ってみるとすごいわかるんですよ。

少年B:
ユーザー目線ですね! ちなみに、フリー素材のポージングとかシチュエーションみたいなものって、大川さんがお考えになるんですか。

大川:
僕の場合は自分からの提案が多いかもしれません。物理的な距離が近いってのもあるんですが、定期的に「あれ撮りましょう」「これはどうですか」って提案してるから撮る回数が多いってのもありますね。

大川竜弥 警戒

▲撮影になった瞬間表情が変わる大川さん

少年B:
なるほど、ユーザー目線で欲しい素材をたくさん撮っているんですね。そりゃあ使われるわけだ……!

体験がないと、専門性は身に付かない

少年B:
今後の夢は何かありますか?

大川:
もちろん金銭的な面で言えば、もう少しゆとりのある生活をしたいですが、見てくれてる方が喜んでくれる仕事がしたいです。

個人的な話だと、この歳にして、去年やっと車の免許を取ったんですよ。だからクルマのフリー素材を撮りたいですね。それをきっかけに、ちょっとしたクルマのWeb CMとかもいただけたらいいなと思います。

少年B:
もしかして、フリー素材のために免許を……!?

大川竜弥 喜び

大川:
そうです。僕の行動ってほぼフリー素材のためにあるので。たとえば骨折しても「これで写真が撮れるぞ」って思っちゃう。ちゃんとした病院のロケーションがあって、点滴とか包帯がしっかり巻かれた状態の素材なんてなかなか撮れないので。

そういう意味では、もうめちゃくちゃ稼いで、撮影にすごくお金のかかるフリー素材を撮りたいですね。フリー素材をやって生まれたお金ですから、フリー素材に還元したいです。

少年B:
すごい……! 最後に、フリー素材に人生を懸ける大川さんだからこそ伝えられる、「自分だけのスキル」を見つけたい人に一言お願いします。

大川:
自分の性格とか考え方に合った仕事をすることが大事なんじゃないかなと思います。自分がしたい仕事やなりたい人物像が、必ずしも自分の性格に合ってるとは言えないですよね。僕がフリー素材モデルを無理せず続けられているのは、自分の性格に合ってるからなので。

少年B:
なるほど……。

大川竜弥 ろくろ回す

大川:
僕も最初はよくわからないことから始めて、続けた結果いまのような専門性がつきました。ある程度見極めができるとこまで続けるってことが大事だと思いますね。1年で結果が出る人もいれば、5年10年かかる人もいるので、そこのタイミングに関してはなんとも言えないですけど。

ただ、ひとつ言いたいのは「体験としての経験がないと、専門性って身に付かない」と思っています。

少年B:
本を読んで知識だけ身につけてもだめってことですね。

大川:
やっぱり継続している姿勢に応援してくれる人が集まってくると思うんです。

たとえば最近だと筋トレが流行ってて、トレーナーさんもたくさん出てきてますよね。その中でも、いわゆるボディービルの大会とかに出て、結果を残してるトレーナーさんはやっぱり信用できますよね。得た知識を実際に活用して、結果を出して信用がついてくる。もちろん仕事もよるんでしょうけど。

少年B:
確かに……。説得力という部分でも大事ですよね。

大川:
あとは仕組みの部分もありますよね。フリー素材はいくら使われても1円も入らないので、誰でもできるけど誰もやりたがらない市場なんです。だから大手も入ってこない。参考になるかわかりませんが、そういう分母の少ない、ニッチな場所を開拓していくのも大切じゃないかなと……。こんな感じでどうでしょうか。

少年B:
連載テーマで綺麗にまとめていただきました。ありがとうございます!

大川竜弥 少年B

【記事のまとめ】

  • 「先に顔を売る」という手段もアリ
  • 「無個性」も突き詰めれば個性になる
  • ユーザー目線で欲しいものを考えよう
  • 人がやっていないところにチャンスがある
  • 実体験がないと専門性とは言えない

(執筆:少年B 編集:齊藤颯人 撮影:じきるう)

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