エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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「キャリアを築くには専門性が必要」と言われることが多くなりました。でも、専門性とは いったい何なのでしょうか。わたしはライターをしていますが、グルメに旅行におもしろ記事まで、書けそうなものは何でも手当たり次第に書いています。自分の専門性って何だろう……そんな悩みを持つ人も少なくないはず。
そんなとき、ふと気付いたのです。「ニッチでオンリーワンなお仕事をしている人の生き方に、専門性を身につけるヒントがあるのでは?」と。
今回お話をお伺いしたのは、モーションアクターとして活躍する明香里さん。その異色のキャリアや目の前の仕事に全力を尽くす大切さを教えてもらいました。
実の姉・夕香里との踊り手コンビ「ATY」としてニコニコ動画等で活躍。現在はフリーのモーションアクターとしてさまざまなゲームキャラクターの「中の人」を演じるほか、バックダンサーや振付師としても活躍中。ダンス歴は25年。(Twitter:@akari_ATY)
Twitterに生息するオタク気質のフリーライター。ニコニコ動画はγ時代から愛用しているそこそこ古参のユーザー。母はベリーダンスの講師をしていたが、父に似たためかリズム感が致命的にない。(Twitter:@raira21)
少年B:
はじめまして! 明香里さんといえば姉妹踊り手コンビ「ATY」として長年ニコニコ動画等で活動されていますが、近年はモーションアクターとしても活躍されているそうですね。
明香里:
はい、ありがたいことにATYを知ってくれている方がたくさんいて……。最近はATYの活動があまりないので、「あいつらどこ行った?」と思われてるかもしれませんが(笑)
少年B:
いやいや、そんなことはないでしょう(笑) それではさっそくモーションアクターというお仕事についてお聞かせください。
少年B:
まず、モーションアクターとはどういうお仕事なんですか?
明香里:
主にゲームやアニメのキャラクターの「中の人」ですね。その名の通り、キャラクターに「動き」をあてていく仕事です。もちろんダンスもありますが、それ以外の動きもあります。歩いたり、手を振ったり、歌に合わせて手ぶりをつけたり……。
少年B:
最近のゲームの3Dキャラクターはやけにスムーズに動くなぁと思っていたんですが、あれって中に人がはいってたんですね!
明香里:
はい、わたしは『プロジェクトセカイ』や『マジカルミライ』、『D4DJ』などのお仕事で関わらせていただいていますね。
名前を出せないお仕事も多いんですが、最近では声優さんと同じようにクレジットしていただくこともあります。たとえば「#コンパス」のポロロッチョとか。
少年B:
ムービーを見ましたが、すごく滑らかな動きですね。まさかポールダンスまでされていたとは!
明香里:
ポールダンスはめちゃくちゃ難しかったですけどね(笑) 特徴的なキャラなので、現場のスタッフさんをどれだけ動きで笑わせられるかと思って演技しました。
少年B:
さまざまなキャラを演じてこられたと思うんですが、キャラごとの体型や性格に合わせて動きの違いも意識されているんですか?
明香里:
そうですね。たとえば、ヤンキーのキャラならスタンスを広めにして肩を揺らすとか、子どものキャラなら子どもっぽくとか意識してます。
明香里:
事前にいただく資料とかイラストを見て、キャラクターをまず自分の中でかみ砕いて表現するようにしています。
少年B:
こういう言いかたは失礼かもしれませんが、ほぼ役者さんですね……!
明香里:
役者よりも幅広いんじゃないかって自分では思っています。シルエットや背の高さまで変わりますからね。場合によっては性別も変わりますし。
少年B:
確かに……! ポロロッチョのように男性のキャラクターを演じることも多いんですか?
明香里:
制作会社さんによって考えかたはさまざまですね。「男性キャラは男性のアクター」とこだわってる会社さんもありますし、「男性もいけそうですね」と男性の役をいただくこともあります。
私はやったことないんですが、動物やモンスターをやっている人もいます。
少年B:
えっ、モンスターの動きも人がやっているんですか!? モーションアクターの世界、奥が深すぎますね……!
少年B:
モーションアクターという仕事の苦労はありますか?
明香里:
どうやったら可愛く見えるとか、キャラっぽく動けるか、といった部分は本当に難しいですね。スタジオによってカメラの配置や数も違えば、モーションを認識する玉の数も違うので、毎回考えながらやっています。
実際の動きとキャラクターの動きには、意外とズレがあるんです。たとえば手を重ねると、球がかぶって、機械がモーションをうまく読み取れなくなっちゃうんです。
少年B:
「この仕事ならでは」の技能が必要になってくるんですね……!
明香里:
そうなんです。多くの作品では「前」から見られるので、肘を重ねないように配置したり。拍手もそのままだと動きがおかしくなっちゃうので、手をぶつけないようにするなど、日常生活では気にしない部分を気にする必要があります。
少年B:
えええ! 普通に拍手するんじゃダメなんですね!?
明香里:
ゲームだとモーションの修正があるんですが、リアルタイムだとそうはいかないので気を遣います。
あとゲームやアニメのキャラクターは腰の位置が高いので、腰に手を当てるときは脇腹に当てています(笑)
少年B:
なるほど……。確かにゲームのキャラクターって、現実ではありえないようなスタイルをしてますもんね。
少年B:
ちなみに、一回の収録時間ってどれくらいなんですか?
明香里:
この仕事はけっこう極端で、3〜4時間ぐらいでさっと終わることもあれば、12時間スーツ着てみっちり踊ることもありますね。そういう意味ではかなり体力もいるし、ハードな仕事ではあるかもしれません。
少年B:
スーツを着て12時間動きっぱなし!? 運動量ヤバくないですか???
明香里:
いや、ホントめちゃくちゃ疲れるんですよ!!! なのにね、意外と痩せないっていう!(笑)
少年B:
逆に、モーションアクターの仕事で楽しい部分はどうですか?
明香里:
やっぱり、かわいく見せる方法や表現の仕方など、単純に「演じること」がおもしろいですね。とくに歌唱モーションを撮る時は、自分が歌が上手くなったような感覚になってすごく楽しいです(笑)
モーションの撮影は本当に奥が深くて、何度現場に行っても新しい学びばかり。追求が終わらないし、追求すること自体が楽しいです。
少年B:
現在のお仕事はモーションアクター1本なんですか?
明香里:
いえ、他にはバックダンサーやダンスの振付師もやっています。最近だとアイドルのダンスの振り付けを考えたりとか。でも、収入は半分以上がモーションアクターですね。
少年B:
そもそも、明香里さんがモーションアクターになったきっかけは何なんですか?
明香里:
はい、元々はニコニコ動画で行っていた姉妹ダンスユニット「ATY」の活動がきっかけでした。
少年B:
お姉さんの夕香里さんと一緒に「踊ってみた」動画を上げていたんですよね。
明香里:
はい。そしたらドワンゴさんの『ニコニコ超パーティー』でボカロライブに呼んでいただけて……。それがモーションアクターの第一歩でした。
少年B:
そうか、ボーカロイドのキャラたちがライブをする動きって、あれこそまさにモーションアクターのお仕事なんですね!
明香里:
そうなんです。ちなみにライブの後半にはキャラクター全員が踊るシーンがあるのですが、姉と2人で十数人のモーションアクターをやりました。
少年B:
たった2人で十数人分……!?
明香里:
さっき話した『#コンパス』もドワンゴさんのゲームなんですが、ニコニコ超パーティーでモーションアクターを務めてからだんだんお仕事が増えてきましたね。
少年B:
じゃあ、ニコニコ動画がきっかけで人生が変わったようなものなんですね……! ニコニコ動画に投稿した時はそういう未来を想像していたんですか?
明香里:
いや、それが全然だったんです! 当時は漠然と「ダンスで食べれるようになりたい」しか考えてなかったですね。
少年B:
では、ニコニコ動画に投稿したきっかけというのは……?
明香里:
地元の先輩たちがやっているSLH(SHARE LOCK HOMES)ってダンスグループがいて、「一緒にニコニコ動画に投稿してみない?」と誘われたんです。姉もすごく乗り気だったので、じゃあ一緒にやってみるかと。
少年B:
どちらかと言えば周りに乗せられた感じだったんですね! 意外でした。
明香里:
やりたいとかじゃなくて、「ここでやると決まったんだからやるしかない!」って気持ちでした(笑)
少年B:
そうやって始めた動画投稿、ATYのお二人は「オールジャンルおばけ」と呼ばれるなど、当時からダンスの上手さにはすごく定評があったように思うんですが……。
明香里:
私は16歳で東京に出てきて、18歳のころからダンスの仕事をしていて……。あの頃はジャニーズの振り付けアシスタントやバックダンサーもしてたんです。
私たちの基本はジャズダンスなんですが、バックダンサーとして活動すると、やっぱりいろんなジャンルのダンスを踊らなきゃいけない。だから、ダンスの幅は広くなりましたね。それが動画投稿や、いまの活動にも活きてると思います。
少年B:
なるほど……。ダンサーとしての仕事歴はすでにかなり長かったんですね!
明香里:
だからこそ、当時はけっこう叩かれた部分もありましたね。「はいはい、ガチ勢ね」とか「ニコ動に上げんなよ」みたいなことも言われたり……。
でも最近は、プロとして活躍している人たちもダンス動画を上げるのが当たり前になってきているし、そういう人たちが投稿するきっかけの一つになれていたらうれしいなって気持ちもあります。
少年B:
明香里さんがダンスを始めたきっかけは何だったんですか?
明香里:
両親が市民ミュージカル団体に所属していたんです。そうすると連れて行ってもらった稽古場で、大人たちがみんなで泣いたり怒ったりするじゃないですか。だから漠然と「私も大人になったらこういうことをやんなきゃいけないんだ」って思ってたんですね(笑)
少年B:
歌って踊ってが、すごく身近な環境だったんですね。
明香里:
そこで、4歳のころですね。姉がダンスを習いたいって言いだして……。そこで、自分も一緒にバレエを始めました。
バレエは正直嫌いで……。途中で辞めてジャズダンスに行こうとしたんですが、「ジャズダンスをやるためには基礎のバレエが必要だ」と気づいてバレエを再開しました。
結果的にはその通りで、基礎のバレエをしっかり練習したことが、ジャズダンスを始めてからも活きたんです。そんなこんながありながら、ずっとダンスは続けてます。ダンス歴だと25年になりますね。
少年B:
逆に現在はモーションアクターとして、ダンスというより、子どものころ身近にあった「演技」に戻ってきてるみたいな感じがありますね。
明香里:
そうなんですよ! 人生の伏線回収というか……最近すごく感じますね。
あと、いつか自分が体力的に踊れなくなったらどうしようかなって部分もありますよね。将来のことはいろいろ悩んできたのですが、演技モーションなら何歳になってもできるなと考えていて。
少年B:
確かに! 歳を取っても、キャラの演技ならできるわけですもんね。
明香里:
だから、いままで続けてきたダンスを活かしつつ、演技ももっともっと勉強して、たくさん経験を積んでいきたいなと思っています。
明香里:
繊細な演技もおもしろいんですよ。たとえばゲームのホーム画面に「立ってこっちを向いているだけの女の子」とかっているじゃないですか。ゆらゆら動いたり、しばらく時間を置いたら動いたり。実はあれって、息遣いとかが本当に難しくて。
少年B:
これまであまり注目してなかったけど、あれってそんなに繊細な演技だったんだ……! 今度から注目して見るようにします!
少年B:
モーションアクターという新しい分野で仕事をしている明香里さんですが、「何者かになりたい」と思う人や「自分だけのスキル」を見つけたい人に対して、何と声をかけますか?
明香里:
「自分を信じてあげて」って伝えたいです。「やってみたいけどできるのかな」とか「将来食べていけるかな」って不安や疑いも全部認めて、それでも「自分のやりたいことをやってみたらいいんじゃない?」って。
少年B:
明香里さんのお話をうかがっていると、目の前のことに全力で取り組んだ結果が現在のお仕事に繋がってるように感じますよね。
明香里:
そうですね。私が10代のころは「若いからまだどうにでもなるよ」って言われてたんですけど、「いや、若いから今しかできないことがあるよ」って内心思ってたんです。10代だから感じることだってあると思うし。
「数年先とすごく先の未来、両方見なさい」って話もよく聞きますけど、私は当時まったく先を見てなかったんですよ。もちろん将来を不安に思う気持ちはすっごくわかるんですけど、自分で自分にバツをつけないほうがいいなって思います。
少年B:
自分の可能性にフタをしないというか……。
明香里:
だって働こうと思えば、たとえばコンビニでも何でも働けるわけじゃないですか。やってダメならやめればいい。ただし、目の前の仕事はなんでも全力でやる。
私はたぶん、コンビニで働いても店長を目指すタイプです(笑) 実際に昔ガールズバーで働いてたことがあるんですけど、そこでもチーフまで行きました。
少年B:
その考えかた、めちゃめちゃポジティブでいいですね!
明香里:
別に、その先に何があるかなんてわからなくても、目の前のことを一生懸命やっていれば、拓ける未来もきっとあると思うんです。私も踊ってみた動画をアップしてた頃には、こんな仕事をしてるなんて想像もしてなかったので(笑)
【記事のまとめ】
- モーションアクターは動きでキャラクターの個性を表現する仕事
- 「やる」と決めて、目の前のことに向き合ったことで道が開かれた
- 基礎練習はやっぱり大事
- 「若いからどうにでもなる」ではなく「若いときにしかできないこともある」
- あまり先の未来を見なくても、未来は拓ける
(執筆:少年B 編集&撮影:じきるう)
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