シェルのロゴの歴史。じつは日本から始まった!?

シェル ロゴ 歴史

誰もが一度は見たことがあるシェルのロゴ。ガソリンスタンドの看板としてよく目にしますよね。赤と黄色で描かれる、色鮮やかなホタテの貝殻のイラストが特徴的ですが、最初はモノクロだったのです。

今回は、1833年から続くシェルの歴史を辿りながら、ロゴに隠された意味を明らかにします。

シェルの歴史

シェルの名前の由来

シェル ロゴ

▲出典:Shell in Japan

企業名とロゴにも使用されている「シェル」。シェル=貝殻がモチーフになった由来には、じつは日本が大きく関わっています。

シェル創業者であるマーカスサミュエル氏の父親が、商業を学ぶため日本の横浜を訪れた際、三浦海岸の美しい貝殻に商機を見いだし輸出販売を開始。貝殻を加工した商品はロンドンで評判を呼び、専門店が開かれるほどになりました。貝殻を扱っていたことから、その店舗は「シェルショップ」と呼ばれていました。

その事業は息子のマーカスサミュエル氏に引き継がれ、横浜を起点に雑貨などをイギリスへ輸出する『サミュエル商会』に発展します。そしてサミュエル商会が石油事業を始める際、貝殻を販売していたころの初心を忘れないようにと「シェル」を会社名とロゴに用いたのです。

シェルの1833年から現在まで

先に述べたように、シェルの歴史は輸出入・販売から始まります。

マーカスサミュエル氏の父親は、骨董品に加え、日本の貝殻を用いた商品の販売からビジネスをスタート。当時ロンドンでは珍しかったそれらの商品の売上は大きく、世界をリードするエネルギー企業となるビジネスの基礎を築きます。

そのビジネスを引き継いだマーカスサミュエルは、石油事業に挑戦し、成功を収めます。その要因となったのは第一次世界大戦です。シェルは、イギリス軍の主要な燃料供給者となったほか、輸出業のための船も提供。また、第一次世界大戦後、自動車とガソリンの需要が増加したことも受け、シェルの石油事業は急速に拡大しました。

第二次世界大戦後には、中東の情勢が不安定になったことで、石油価格の高騰が起こり、シェルも危機を迎えます。しかし、シェルは石炭や原子力の活用を進めるなどビジネスを多様化を進め、この危機を乗り越えました。この一連の動きによって、中東のビジネスにおけるシェルの存在感も拡大し、今日までの発展に大きな影響を与えます。

このように、変化を恐れず改革を繰り返す姿勢が現在のシェルを作りだしたのでしょう。

シェルのロゴの変遷

1900年

シェル ロゴ

▲出典:Shell in Japan

現在、シェルの黄色と赤のホタテ貝殻のロゴは、世界でもっとも有名なシンボルの一つです。しかし、最初のロゴは、白黒のムール貝の殻として誕生しました。

このデザインは1900年に商標登録されており、シェルが所有する2万2000以上の商標のなかでもっとも古いものです。

1904年

シェル ロゴ

▲出典:Shell in Japan

ロゴ誕生から4年後、モチーフがムール貝からホタテへと変更されました。

ホタテに変わった理由については多くの説があります。一つの説は、シェルの灯油をインドに輸入すると考えたビジネスマンにまつわるもの。そのビジネスマンの家計の紋章だったホタテなのではないかという説です。

1909年

シェル ロゴ

▲出典:Shell in Japan

1909年になると、ホタテのモチーフはそのままに、白地の背景にスケッチのようなシンプルなロゴに変化します。

1900年から数年単位で変更されてきたロゴは、このあと20年ほどは微調整程度であまり変化がありませんでした。

1930年

シェル ロゴ

▲出典:Shell in Japan

1930年、ロゴが大きく変更され、よりくっきりとしたフォーマルなデザインに。この変更にあわせ、パッケージ、看板、車両に適用されるようになりました。

白、黄、赤のように、カラーバリエーションが増えたのも大きな変化。また、1948年には「SHELL」の名前がロゴに導入されましたが、当時はあまり浸透しませんでした。

1955年

シェル ロゴ

▲出典:Shell in Japan

1950年代半ばに、印刷に適したよりシンプルなロゴが登場しました。

これにより、ガソリンポンプから店の看板まで、あらゆるものに簡単にロゴを適用できるようになります。

1971〜現在

シェル ロゴ

▲出典:Shell in Japan

1971年にインダストリアルデザイナーのレイモンド・ローウィ氏によってデザインされたものが、今日見るシェルのロゴの原型です。これまでのロゴに刻印されていた、SHELLというブランド名が取り除かれています。

このロゴに変更された当初、ブランド名はモチーフ下部に設置されていましたが、1990年代初頭には完全に姿を消しました。色味がより暖かい赤と黄色に変更されたのも、1990年代からです。

こうした変遷を経て、シェルのロゴはついにデザインが確立し、現在に至るまで使用され続けています。

シェルのロゴのデザイン要素

赤と黄色が選ばれた理由

正確な起源は不明ですが、黄色と赤はすでに初期の頃からシェルのブランドイメージとして確立されていました。黄色と赤の両方が海上信号で使用されているため、シェルの輸出業に由来する可能性があります。

また、競争相手であった石油会社『スタンダードオイル』の青に対して赤を選んだという説もあります。

型破りなマーケティング

1920年代、シェルはロゴデザイナーに、イラストレーターではなく工業デザイナーのレイモンドローウィを起用するなど、マーケティングの世界での型を破る挑戦を続けてきました。

その甲斐があったかは定かではありませんが、現在シェルのロゴは世界的に認知されるようになりました。

シェルのロゴが無くなる!?

出光興産 ロゴ

▲出光興産のロゴマーク(出典:idemitsu

日本では、シェル石油と昭和石油の両社が合併し、1985年に昭和シェル石油がスタートしました。

その後2019年に、出光興産と昭和シェル石油が経営統合。これにより、国内における「シェル」マークは徐々に終了とし、出光興産の「アポロ」マークへと一本化が進められています。

「シェル」のロゴが、サービスステーションから姿を消す日が近づいています。

(執筆:鈴木里菜 編集:泉)

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