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1893年にアメリカでうまれ、全世界で愛されてきた『ペプシ』ことペプシコーラ。会社の歴史とともに、ロゴも幾度となく変化を遂げてきました。
ペプシのロゴは、時の流れとともに変化する会社のカルチャーや目標に沿って、そのフォントや配色など姿を変えてきました。実は長い歴史の中で、名前や材料が変更されたこともあります。こうしたペプシの進化が、そのロゴにも大きな影響をおよぼしました。
姿を変えても人びとに「ペプシのロゴ」として認識され続けてきたデザインからは、多くの学びが得られるはず。今回はペプシと、そのロゴの歴史をご紹介します。
もともと、ペプシは開発者であるキャレブ・ブラッドハムの名前をとって『Brad’s Drink(ブラッドの飲みもの』とよばれていました。彼がペプシを開発したのは1893年で、そのわずか数年後である1898年にはすでに名前が『ペプシ』に変更されています。
いっぽう、ペプシのライバルであるコカ・コーラもまた、ペプシ同様に会社を成長させていました。当時はエレガントな筆記体のロゴが流行しており、両社の初期のロゴデザインは驚くほど似ています。「PEPSI COLA」のPとCがつながっているのが、初期のペプシロゴの特徴です。
1898年から1940年まで、ロゴに用いられていた色は白と赤のみでした。現在はこの二色に青が加わっていますが、白と赤は初期の約40年間、そのロゴデザインの主役だったのです。
1940年に、ペプシはロゴをよりクリーンでファンダメンタルなものに変更することを決定しました。これが現在知られている「円形ロゴ」の原点です。
円形のデザインは、キャレブ・ブラッドハムのオリジナルグループのスローガン「The Original Pure Food Drink」を取り入れたいという思いから採用されました。また、赤と白という配色を維持しつつも、はじめて青がデザインに加わりました。
青が加わった理由には、ペプシ自体の歴史というより第二次世界大戦が大きく関係しています。ペプシは軍隊への支持を表明するために、白と赤という伝統のカラースキームに青を加えたのです。
1943年に、ペプシはボトルキャップのデザインに「Bigger Drink, Better Taste」というスローガンを加えました。円の上から赤、白、青が配色されたこのボトルキャップのデザインは、1960年代まで続きました。現在親しまれているデザインの土台が築かれたのもこの時代です。
ペプシロゴは1960年代にも大きな変化を遂げました。ボトルキャップの色は赤と白と青のままですが、ベースとなる背景が白になり、ロゴからは「COLA」の文字が消えました。
この時期にはじまったのが「Pepsi Generation」という広告キャンペーンです。同社は世界のソフトドリンク市場に対する支配をあらわすために、「PEPSI」という文字に二つのブルズアイを加えました。
1970年になると、ペプシのロゴはよりミニマルになりました。いまのロゴと非常に近いデザインです。赤と青と白の円形のデザインからは、筆記体デザインも、コーラという文字も排除されています。
円の左右にも、円のなかと同じく赤と青が配色されており、ペプシのテーマカラーのひとつでもあった白は、文字の背景と円のまわりに使用されました。
伝統的なデザインから劇的にデザインが変わった理由は、文化の変化です。同社は時代の変化を敏感に感じ取り、技術とミニマルデザインを結びつけました。筆記体のロゴは時代遅れだと察知し、複雑な要素を排した、シンプルでクリーンなデザインを採用したのです。
このようなシンプルなデザインは、ほかにも利点があります。シンプルなデザインはさまざまな場所に配置しやすく、しかも視認性が高いのです。このような利点は、グローバルマーケットを意識する際にとても重要でした。
次にペプシロゴに大きな変化が起こったのは、1991年。同社は文字と円のデザインを分けて配置するようになりました。当時のロゴでは文字はラベルの上に、赤と青の円は右側に配置されています。文字があった円の中心には、波状の白い線が配置されました。文字をより重視したデザインになったといえるでしょう。
このロゴと文字の分離によって、ペプシのロゴはよりフレキシブルになりました。近年、同社はこの円と文字を分けたデザインをベースにして、さらなる変更を加えています。
1998年に100周年を迎えたペプシは、その功績を記念して新たなロゴを作りました。当時の時代を反映した立体的でさわやかなデザインでは、背景は青に、文字は白に変わっています。
このデザインは、2008年に変更されるまで10年間使用されていました。
2008年以降は円のデザインが主役となり、主に文字の上に配置されるようになります。新しいロゴでは赤と青のあいだの白い線が上に向かって広がるように配置され、どこかスマイルマークを思わせる陽気なデザインになりました。
円の上の色にもバリエーションがあり、ロゴを3Dの球体のように見せ、現代らしさを演出するのに一役買っています。現代の消費者は、遠近感などをうまく活用したロゴを好みます。
2008年のロゴはArnellグループによって100万ドルの費用をかけて製作されましたが、当初の評判はいまいちでした。しかし、新しいロゴがはじめから好意的に受け入れられることはめったにありません。新しいロゴとターゲットオーディエンスとの関係を構築するには、時間がかかります。
以上のように、ペプシのロゴは1898年の創業以来さまざまな変化を遂げてきました。トレンド、テクノロジーおよび消費者の期待にこたえて、時の流れとともに姿を変えてきたのです。
そして幾度となく姿を変えても、消費者にはペプシのロゴとしてきちんと認識されてきました。
ペプシロゴの特徴であるシンプルさは、最初期の筆記体のころから変わっていません。ディテールにこだわりすぎて、複雑になることはありませんでした。強いて言うなら、これまでで一番細かいデザインは2つのブルズアイ(1962年)でしょう。
しかし、このシンプルなロゴには多くの意味が隠されています。
ペプシの起源を辿ってみましょう。開発者であるケイレブ・ブラッドハムは、「薬局」でペプシを作って販売しました。薬局を意味する「pharmacy」は、ギリシャ語で魔術師を意味する「pharmakia」に由来しています。
彼は当時、薬局で売るための近代初のエナジードリンクを開発することを計画しており、その結果できたのがペプシでした。ペプシが開発された時代、化学はさまざまな分野において生活に魔法をかけはじめていました。そして彼も魔術師のように、ペプシを誕生させたのです。
ペプシが2008年にロゴを変更した際、隠れた意味をもつこのロゴのために多額の制作費が投じられました。担当したのは、Arnellグループのデザイナーであるピーター・アーネルです。
赤、白、青で構成されたこのロゴは、アメリカの国旗をあらわしています。しかしそれだけではありません。これらの色は地球の磁場、風水、ピタゴラスの地球力学、相対性理論、黄金比などもあらわしているのです。
ばかげて聞こえるかもしれませんが、アーネルがロゴ開発のために書き、ニューズウィークにリークされた27ページのメモには、実際にこれらの記載があります。
このロゴは確かに、パルテノン神殿、モナリザ、黄金比、空間と時間の相対性理論、そして磁場という概念と関係しています。ペプシロゴの「ペリメター・オシレーション(周囲の振動)」や、スーパーマーケットの棚にあるペプシの缶の「重力」の強調もまた意図されているのです。宇宙の膨張率とすら関係があるとされています。
デザインの論理的根拠があまりにも奇妙だったため、多くのデザイナーやデザイン会社がアーネルを嘲笑し、このロゴは間違いなく失敗だと考えました。しかしふたを開けてみると、結果的にロゴは消費者に気に入られたのです。奇妙な論理的根拠はあるにせよ、デザイン自体はよくできていました。
こうしてデザインされたロゴは、ペプシの缶、ビン、広告、レースカー、Tシャツ、トラックなど、ペプシと関連するあらゆる場面で活躍しています。消費者があまりにペプシのロゴになじんでいるため、韓国の国旗とペプシのロゴを間違える人さえあらわれたほどです。
ペプシのロゴには、時代の流れとともに変化してきた長い歴史があります。その歴史からは、文化やマーケットのトレンドが見て取れます。
しかしそれと同時に、ペプシは変化の中でもデザインの核を見失うことはありませんでした。それこそが、ペプシロゴの成功の秘訣ではないでしょうか。
(翻訳:Asuka Nakajima)
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