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法人成り経験者が語る、法人化の大きな8つのデメリット

法人成り経験者が語る法人化の大きなデメリット
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こんにちは。2021年7月にフリーランスライターからの法人成りを経験した、新米経営者の夏野かおるです。

前回の記事では、法人化のメリットを事実/気持ちの面に分けて解説しました。続いてのテーマはずばり、「法人成りのデメリット」です。

いやあ、前回の記事は本当に大変でした。いろいろな数字が登場して、書いている本人も相当つらかったです。「フクザツな税金まわり」、これこそが法人化の最大のデメリットかもしれませんね。(完)

……なんて、ここで終わるわけにはいきません。今回もしっかりと解説させていただきます!

夏野かおる
夏野かおる

フリーランスの編集者・ライター。コンテンツマーケティングやディレクション、マネジメントに仕事の幅を広げ、2021年7月に1人会社を設立。高等学校教諭一種免許状(国語)保有。京都大学大学院博士課程指導認定退学(博士論文準備中)。趣味はゲーム。(Twitter:@Natsuno_Kaoru

【事業面】フリーランスが法人成りするデメリット

フリーランスが法人成りすると、どのようなデメリットがあるのでしょうか。おおよそ予想がつくものもありますが、ひとまず全体を見てみましょう。

デメリット1. 会社設立費用がかかる

法人を設立するには、所定の費用がかかります。日本公証人連合会のWebサイトによると、株式会社の場合、費用の内訳は以下のとおりです。

【実費(法定費用)】18万2000円〜

株式会社を設立するのに、最低限必要な費用の目安は次のとおりです。

ア 認証手数料3万円ないし5万円
イ 謄本手数料1枚250円。おおむね8枚2000円くらい
ウ 印紙代4万円。ただし電子定款のときはなし
エ 設立登記に必要な登録免許税15万円か出資額の1000分の7のいずれか高い額。
オ このほか、募集設立の際には、払込保管証明書約2万5000円
カ これに加えて、代表者印の作成費用、印鑑登録証明書代がかかります。

なお、このうち「登録免許税」については、国の「特定創業支援等事業による支援」を利用すれば半額(75,000円)にしてもらえます。けっこう大きな金額なので、利用しない手はありませんね。

また、定款の認証手数料はこれまで「5万円」でしたが、令和4年(2022年)1月1日からは、資本金100万円未満の場合は「3万円」、100万円以上300万円未満の場合「4万円」、その他の場合「5万円」と改められています。

フリーランスからの法人成りの場合、資本金が100万円を超えることはそこまで多くないかと思いますので、「2万円安くなった」と考えていいと思います。

【会社の資本金】1円〜(おすすめは10万円〜らしい)

かつては、株式会社の資本金は最低1000万円〜でしたが、2006年5月からは1円でもよいこととなっています。

私は司法書士さんから「まあ、10万円くらいはあったほうが格好がつくんじゃないでしょうか」とすすめられたため、なんとなく15万円にしました。

【司法書士さんへの依頼費】約10万円 ※依頼する場合のみ

約10万円。正直相場は分かりませんが、すべてを代わりにやってくださったので、非常に助かりました。

司法書士への依頼費用内訳

▲司法書士への依頼費用内訳(夏野の場合)。上の枠は司法書士さんへの報酬、下の枠は法定費用(司法書士さんが一時的に実費を立て替えてくれた分)です

【そのほかの費用】約1万円

  • ハンコの作成費:約5000円
  • 印鑑登録証明書:300円×必要枚数
  • 登記簿謄本:500円×必要枚数

【合計】約40万円

ここまでを合計すると、私の場合は約40万円ほどかかりました。

金額を自由に決められるものや、「〜の場合は不要」なども多数あるため一概には言えませんが、大体40万円くらい用意しておけば、司法書士さんの手を借りた上で会社を作ることができるでしょう。

まずは自治体に相談するのがおすすめ!

登録免許税(15万円)が半額になる「特定創業支援等事業による支援」。これは何かというと、「自治体のサポートを受けながらいい感じに起業して、将来的にいっぱい税金を納めてね!」みたいな事業です。

サポート内容は自治体によってさまざまですが、事業計画書を作ったり、事業に関するセミナーを受けたりするパターンが多いようです。条件を満たすと証明書が発行され、それを添えて創業すると「登録免許税」がディスカウントしてもらえる仕組みです。

特定創業等支援事業による支援を受けた証明書

▲渋谷区の特定創業等支援事業による支援を受けた証明書。区長がハンコを押す関係上、簡単には事業を追加できないので、あらかじめ幅を広めにして申請しておくことをおすすめします

私は上記のおトク情報を、埼玉県の創業サポートで知りました。どこの自治体にも類似のサポートはあると思いますので、一度調べてみることをおすすめします。

私の体験でいくと、埼玉の創業・ベンチャー支援センターはオンライン相談ができ、税理士さんが対応してくださったため、いろいろと具体的な相談がしやすかったです。女性に特化した相談窓口・支援体制(無料コワーキングスペースとか)もあるそうですので、気になる方は見てみてください。

なお、私の会社は(埼玉で相談しておきながら……)渋谷区でつくることにしたので、「特定創業支援等事業による支援」も渋谷区のものを受けました。創業セミナーはオンライン実施・全5回で、マーケティング・IT・会計・人事・補助金についてざっくり学べたうえで、中小企業診断士さんに無料で相談できる時間もあり、おトクでした。普通に勉強になったので、「今すぐには起業を考えていないんだけど……」という人も気軽に申し込んでみてはいかがでしょうか。

デメリット2. 決算・法人税申告などの事務負担が増加する(顧問税理士との契約が必要になる)

「増加する」って書きましたが、体感としては「激増する」です。人によっては致命的なデメリットになりかねません。

実は、法人の“立ち上げ”自体は、気合さえあれば自分でできないこともありません。定款、つまり「ウチの会社の掟(おきて)卍」みたいな書類を作って、公証役場に行って、法務局に行って、いろんな紙を取得して、いろんな場所に送れば、会社をつくることができます。また、最近では内閣府提供の「法人設立ワンストップサービス」なども登場し、以前より手間が減ったとのこと。

このnoteにもあるとおり、一部わかりづらかったり、マイナンバーカードが必須だったり(そしてカードを読み取る手続きもそこそこ面倒だったり)するのが課題ですが……。「会社作るぞ!」というエネルギーに身を任せれば、まあ、できなくはないと思います。

では、創業後の税務はどうなのか? ぶっちゃけ、セルフでやるのは茨の道だと思います。そりゃ“理論上は可能”ですけど、確定申告レベルでも音を上げる私には土台無理な話でした。

そんなわけで、個人事業主時代からお世話になっている税理士さんと顧問契約を結んだのですが。税理士さんが大部分を担ってくださっているにもかかわらず、個人時代とは比べ物にならないほどの確認事項・作業がやってきます。それこそ源泉徴収だって、“する側”になっちゃうので。

税理士さんからの連絡

▲税理士さんから届く連絡。夏野が口座を開いた銀行はPay-easy(ペイジー)対応なのでネットバンキングでなんとかなりますが、非対応の銀行の場合はかなり面倒なはず

これらを考えると、やはり顧問税理士は実質、マストな存在かな〜という感触です。これに悩まされている暇があったら、本業に打ち込んだほうがトータルでおトクだと思うので……。税金まわりのややこしさと、それに伴う税理士費用の発生は、ひとつのデメリットと言えるでしょう。

税理士さんは「安い」だけで選んじゃダメ

顧問税理士さんを探すにあたり、料金が気になってしまうのは仕方のないことです。この記事でも書いたとおり、固定費は経営上の大きなリスクになりうるからです。

しかしですよ。「安いから」だけで選ぶのはけっこう危険だと思います。

みなさんの本業に置き換えてみてください。相場より不当に安い金額で受けてくれる人って、どういうスキルレベルだと思いますか? 少なくとも、“SSR”クラスの方が来てくださることは考えづらいように思います。

税理士

▲とっても頼りになる税理士さん。高い専門性を求められるお仕事であることを考えると、それなりの報酬をお支払いするのが当然かなと思います

夏野の税理士さんは、税法が変わるときや、ちょっとした解説などを分かりやすいPDFで送ってくださいます。SlackやGoogleスプレッドシートを利用した情報共有もスムーズですし、こまごまとした質問にもサクッと答えてくださり、とても助かっています。

経営者となる以上、シビアに数字を見ることは大切です。ただし、削るべきでないコストを削ってしまうと、思わぬトラブルにつながるかもしれません。専門家には適正価格を。結局それが、もっとも“コスパがいい”んじゃないの?というのが、個人的な意見です。

デメリット3. 社会保険への加入が義務づけられる

いや、別にデメリットというほどではないのですが。「手元からお金が出ていく」現象にのみ着目すると、一時的にさみしい気持ちになるかもしれませんので、とりあえずデメリットとしておきました。

法人になると、社会保険への加入が義務となります。社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険という5つの保険のこと。このうち健康保険と厚生年金保険、介護保険(40歳以上)は、たとえ社長1人のみの会社であっても加入義務があります。

残りの2つ、雇用保険と労災保険は、従業員を雇用した場合にのみ加入義務が発生します。つまり、社長1人のみの会社なら、ひとまずは入らなくてもOKです。

で、この保険料がですね〜。結構なお値段なんですね〜。私の報酬は月額35万円なのですが、そのうち50,652円が社会保険料として消えていきます。月額5万円ですよ!

給料表

▲私の会社の給料表。社会保険料、けっこうインパクトある金額なんですよね。

けっこうな金額なので、心理的に「デメリットだなあ」と感じる方もいるかもしれません。なんたって月額5万円ですからね……。

年金の督促は超スピードでやってくる

私はバーチャルオフィスを利用して会社を設立しました。郵便物は毎週転送されてくるので、「決してミスをするまい」と鼻息荒く対応していたのですが、ある日なんと! 「年金未納」のお知らせが届いてしまったのです。

バーチャルオフィスからの郵便物転送記録

▲バーチャルオフィスからの郵便物転送記録。「日本年金機構様」という文字を見るたびにドキっとします

慌てて書類ボックスをひっくり返すも、やはり納付書は届いておらず。取り急ぎ年金事務所に足を運んだところ、「バーチャルオフィスだからかもしれません」とのことでした。なんでも、ビルの表札に会社名が書かれていないと、郵便局さんが届けてくれないことがあるらしいのです。

今回がそのケースだったかどうかは不明ですが、実際問題、その次の回も納付書は届かず……。じゃあなんで督促状だけ届くの??? よくわかりませんが、ともあれ仕方なく、年金事務所で納付書を再発行していただくことなりました。

さて、驚いたのは、督促のスピード感です。社会保険の納付って、ちょっとばかし遅れただけでも、決して見逃してはくれないみたい。にぎわう渋谷を年金事務所に向かって歩きながら、「会社をつくる」ことの責任を思い知らされました。

ただ、「救いもあるな」と思ったのは、督促状と同時に「経営が苦しいのであれば、納付を猶予できますよ」という温情のパンフレットが届いたことです。どうやら世の中、未払い→即自己破産ではないようです。困ったらきちんと相談し、解決の糸口を探りましょう。

デメリット4. たとえ赤字でも、法人住民税の均等割(年額7万円)が必要

我々が自治体に住民税を払うのと同様に、実は法人にも住民税を納付する義務があります。中でも均等割に関しては、どれだけ会社が赤字でもキッチリ払わなければなりません。理由は、総務省の説明がわかりやすいのでまるまる引用させていただきます。

皆さん、トレーニングジムを思い浮かべてみてください。個人会員や法人会員は、ジムのトレーニングマシンなどを利用するために、ジムに会費を支払っています。言い換えると、個人や法人は、ジムが提供するサービスを享受するために、ジムの構成員として会費を負担しあっているということです。

ここで地域社会に目を移すと、法人も個人と同様に、地方団体(都道府県と市町村)が提供する行政サービスを享受しています。そこで地方団体は地域社会の会費として、その構成員である法人にも、個人と同様に幅広く負担を求めています。これを法人住民税といいます。

(中略)

法人税割は国に法人税を納めている法人、つまり黒字の法人だけが払うのに対して、均等割は赤字の法人も払わなければならないということです。言い換えると、均等割は、法人がどれだけ儲けたかに関係なく、地域社会の一員として支払う会費という性格が強いといえます。

上記の文章をフランクに翻訳するなら、「法人住民税の均等割は、自治体に払う家賃みたいなもの。お財布がさみしいからって、アパートの家賃とかジムの会費をまけてもらえないでしょ? というわけで、赤字でも払ってね」となります。

さて、この均等割は資本金等の額、および従業者数によって決められています。もっとも安くなるのが、資本金1千万円以下、従業者数50人以下の場合。このパターンでは、都道府県民税は2万円、市町村民税均等割は5万円となり、合計7万円を納付する必要があります。

「フリーランスからの法人成り」という条件であれば、たいていの会社がこのパターンに当てはまると思われますので、「赤字でも年額7万円が出ていく」と捉えておけばよいでしょう。

デメリット5. どれだけ儲かっても、給与は一定!

個人事業主の場合、貯金や税金の話を除けば、入ってきたお金=使っていいお金です。極端な話をすれば、「今月は200万円売り上げたから、Canon RF600mm F4 L IS USM(※)買っちゃお」みたいなキャッシュフローでも問題ありません。

※180万円くらいする望遠レンズ。もはや武器。

望遠レンズ

▲白いレンズはびっくりするくらい高いのですよ。いらすとやさんの再現率には驚くばかりです

一方で法人化すると、法人/個人のお財布がまったくの別物となるため、どれだけ売り上げが上がっても、手元に入ってくるのは一定額となります。

これを「収入が安定して、家計が管理しやすいな」と感じるか、「せっかく儲かったのに、パーっとやれなくて窮屈!」と感じるかは人によるでしょう。私はどちらかといえば前者。毎月一定額で貯蓄できるため、個人事業主時代よりも安心だと感じるようになりました。しかし、デメリットと感じる人もいるのではないかと思います。

会社の財布がカラッポになっても、報酬は支払わなきゃダメ!

これも前回の記事でご説明したとおり、役員報酬は期のはじめに決めたら変えられません。でも、時期によってはお仕事が少ないこともあるはず。万が一、会社のお財布がカラッポになってしまったら、役員報酬(実質の給与)はどうすればよいのでしょうか?

答えは、「それでも払わなければいけない」です。いや、いや、いや。財布が空なのにどうやって払うの? 無い袖は振れないけど……ですよね。その場合はズバリ、「役員借入金」という形で、社長から法人の財布にお金をチャージし、そこから報酬を支払うことになります。

私が会社にお金を貸し、会社から私に報酬が支払われる。いわば、お金が反復横跳びしてるイメージです。跳ぶたびに銀行の手数料はかかるけど!

反復横跳び

▲残高が個人と法人を行ったり来たり。いや、本当はよくないんですけど、創業期はどうしてもそうなりがちです

でもそのくらい、法人のお財布の管理ってキッチリしなきゃだめなんです。決して、個人事業主時代と同じ感覚で管理してはダメ。法人化したが最後、毎月の売り上げは“異世界転生”したものとして、ゴチャ混ぜにしないように気をつけましょう。

【体験談】フリーランスが法人成りするデメリット

上記は事実をベースに紹介しましたが、ここからは体感をベースにデメリットをご紹介します。

デメリット6. 真っ昼間になんらかの役所に行かなければならない

真っ先にこれを挙げます。主に最初の頃だと思うんですが、とにかくいろいろな書類が必要ですし、郵送で請求しづらいものも多いので、忙しい合間を縫って役所の窓口に行かなければならなくなります。

具体例が、法人の印鑑登録証明。不動産を法人名義で借りる(社宅にする)ために必要なのですが、郵送/オンライン申請の方法を見てみてください。パッと見で「理解」できる人は、そこまで多くないんじゃないでしょうか。(郵送に至っては、検索して出てくるページがPDFですしね……。)

法務局の説明によると、

  • 郵送請求:
    所定の様式に記入した上で、収入印紙を貼りつけ、返信用封筒と印鑑カード本体(!)を同封して申請。
  • オンライン請求:
    専用ソフト(Windowsのみ。IE推奨!)をインストールして申請。

とのことで、仕事用のパソコンがMacのみだとオンライン申請は不可。郵送するにも、大事な印鑑カード本体を送らねばならず、収入印紙も必要なので、もはや窓口に行ったほうが早いです。

このあと紹介する事例についても言えることなのですが、“法人の書類をあれこれする人”は絶対数が少ないため、市民全般に供されるサービスよりも開発優先度が低いのか、「嘘やん」という仕様のページやソフトウェアが多いです。まあ、一般のサービスとはケタ違いのセキュリティが必要でしょうから、ある程度は仕方がないのでしょうね。

デメリット7. 銀行のサービスが有料なのに使いづらい

※以下では、三菱UFJ銀行の話をします。他の銀行については分かりませんので、ご自身でお調べください。

これも、個人と法人では取引の性質・回数ともに違うので、ある程度は仕方ないのだろうと思います。

が、個人向けがこういうページなのに対して、

法人向けがこういう感じなので、

「レトロか!?」となります。

(繰り返しになりますが、きっと合理的な理由があるのだと思います。ページが軽いとか、安定して動くとかね。ここでは、ピュアに気持ちの話をしています)

おまけにこのページ、Chromeでは動きません。WindowsならEdgeかSafari(一応IEも)、MacならSafariかFirefoxのみで、無料プランでは利用時間が限られているばかりか、明細も見られません(※1)。

※1 登録から90日間は“無料お試し期間”として明細を見られますが、その後は見られなくなります。

「じゃあ有料プラン(月額1,760円)にステップアップするか……」と決意するじゃないですか。驚くなかれ、有料プランでもたった2ヶ月分(※2)しか明細が見られません。

※2 正確には、「前月1日から当日までの明細を照会でき」るそうです。

そんなわけで、会社立ち上げ後、最初の給与支払いが発生するまでにワタワタしてた時期の明細はどう頑張ってもオンラインで見られず。結局、通帳記帳しに行ったのですが、銀行がそこまで遠くないこともあり、「これならもう、通帳ベースで管理したほうがラクなのでは……?」と感じる始末。

そこで、「経営者たるもの、領収書1枚から経費削減すべし!」と無料版に戻そうとしたら、

戻せないんですよ。無料版には。(※3)

※3 戻すことはできませんが、「いったんBizstationを解約し、Bizstation Lightに申し込む」形でならLightに乗り換えられるようです。

Bizstaion Lightには戻せない

▲ひとたびBizstation Lightからステップアップしてしまうと、「一度解約し、再度契約する」形でしか無料版には戻せない

誤解のないように付言しておきますと、こういうサービスって、見えないところにもたくさんコストがかかっているのだと思います。それこそセキュリティとかね。

さんざん文句を言いましたが、三菱UFJ銀行のセキュリティはやっぱり強力で、未だにPayPayとの連携を許さないほどです。ドコモ口座事件でもその堅牢さが評価され、「まあ、この1760円は“安心料”かもな」と納得できています。

ただ、まあ、ビミョーなことはビミョーなので……。現に、立ち上げからしばらくの間の明細は「おまとめ記帳」されてしまい、わざわざ窓口で手数料を払って郵送してもらう羽目になりました。月額1,760円なのに!

ちなみに税理士さんによると、「地銀はもうちょっと親切ですし、安いですよ」とのこと。ネームバリューをとるか、実利を取るか、それぞれの判断ということになるでしょう。

デメリット8. できることの幅が広がる分、悩み事も増える

私だけかもしれませんが、個人事業主時代は、「個人でやっている限り、これ以上の規模のお仕事は受けられないんだろうな」という限界がありました。

まあ、そうですよね。個人に大金を流すって、一歩間違えれば日大の特別背任事件みたいになっちゃうんで……。

悪代官

▲個人に仕事を発注したように見せかけて、会社から予算を引き出す。その後、その個人からリベート(キックバック)をもらう……発注金額が大きくなってしまうと、極端な話、ウラでこういうことをやってるんじゃないの?って疑われやすくなります。

仮にしっかりお仕事をしていても、外部から見ると、「こいつは何者だ? なぜこんなに金が流れている?」って疑われるリスクがどうしても高くなるため、うっすら“上限金額”が見えてきたなと感じたんです。

そこで法人化したところ、ありがたいことに比較的大きな規模のお仕事もいただけるようになりました。こうした仕事を業務委託の方と一緒に担当していると、まさに「会社」やってるな〜という感じで、手応えが増したのは確かです。

ただ同時に、悩みごとの性質や規模も変わってきてしまいました。たとえば……

【会社の行く末について】

  • このままクライアントワークのみに注力するか、自社事業にもチャレンジすべきか
  • 会社の“売り”をどう定めるか。隣接分野にも展開すべきか

とか、

【人材の採用と育成について】

  • アシスタントさん/クリエイターさんを採用するのか、自分でやるのか
  • 委託費を払っても、きちんと利益が残る構造になっているか
  • そもそも、月末の振込はちゃんと実行できたのか!?(1円でも間違っていたらまずい!)

とかです。

事業をスケールさせるには、徹底した仕組み化とマニュアルの整備が大事(らしい)です。

私はある程度、マニュアルを作るのが得意ですが、それでも去年はマニュアルとフォーマットを作り続けて、手がちぎれるかと思いました。ましてや、仕事の言語化が得意でない人にとっては相当な負担でしょう。

自分の仕事をうまく整理して切り分けられるか?かつ、フォーマット化して人にお任せできるか?というのも、会社をやるべきかどうかの判断基準になる気がします。

最近の困りごとは「酒の席でイジられる」。うまい切り返し、募集中です。

最後は、なかば笑い話ですが、法人化するとまず確実に「ヨッ! 社長!」的なイジられ方をします。昔なじみにサラッとイジられる分にはいいんですが、中には「マジでネガティブな当たられ方だな」と感じるイジりもあり、どうレスポンスすればいいのか分からず……。“振られた以上、ひと笑い取るのが正義”と感じる私は、日々頭を悩ませています。

私自身、自分が法人化する前は、「社長って毎日リムジンに乗ってて、キャビアとか食べてるんでしょ」と思っていました。しかし現実は、使いづらい銀行サービスに苦悩しながら、真っ昼間の役所に足を運ぶ生活です。そりゃそうだよね。世の中には約358万もの中小企業があるんだもの!これらの社長さんが全員キャビアを食べてたら、チョウザメは絶滅しちゃいますよ。

というわけで、良くも悪くも現実的なイメージに近づいてきたでしょうか。前回記事と合わせて、フリーランスの皆さんの参考になれば幸いです。

(執筆:夏野かおる 編集:少年B イラスト:あずさ)

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