エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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「キャリアを築くには専門性が必要」と言われることが多くなりました。でも、専門性とはいったい何なのでしょうか。わたしはライターをしていますが、グルメに旅行におもしろ記事まで、書けそうなものは何でも手当たり次第に書いています。自分の専門性って何だろう……そんな悩みを持つ人も少なくないはず。
そんなとき、ふと気付いたのです。「ニッチでオンリーワンなお仕事をしている人の生き方に、専門性を身につけるヒントがあるのでは?」と。
今回お話をお伺いしたのは、サイバー系専門のモデルとして活躍する斎藤ゆきえさん。サイボーグ専門モデルというこのニッチなお仕事が生まれた理由や、魅力を「作っていく」術を教えてもらいました。
おもにIT系・家電製品展示会の企業ブースなどで活躍する「サイバー系モデル」。メイクはもちろん衣装作成まで自前で行っているのが特徴で、サイバー系アクセサリーショップのプロデュース・運営も行っている。(Twitter:@cyborgyukky)
派手なものが好きなフリーライター。サイバーなデザインや音楽を好む傾向にある。モデル経験は一切ないが、なぜか写真をいろんなところで勝手に使われがち。(Twitter:@raira21)
斎藤:
はじめまして。今日はよろしくお願いします!
少年B:
はじめまして! 思ったよりも普通の女性なんですね。
少年B:
ん、あれ……?
少年B:
?????
斎藤:
どうかしましたか?
少年B:
……? いえ、よろしくお願いします。
少年B:
それではさっそく斎藤さんのお仕事について教えてください。
斎藤:
はい。私は「サイバー系専門モデル」です。新型コロナウイルスが流行する前は、主に展示会の家電・IT系の企業ブースに立って、商品のPRをするお仕事が主でした。
少年B:
展示会って、東京ビッグサイトや幕張メッセなどでよく開催されているやつですよね。ああいうのってレースクイーンみたいなお姉さんがたくさんいるイメージでしたが……。
斎藤:
確かに、そういう格好の方は多いと思います。でも、じつは企業モデルには決まった衣装があるわけではありません。
たとえばVRゴーグルなどのテクノロジー系のブースなら、この衣装だとすごく映えますよね。企業モデルの存在意義は「セクシーな格好で集客すること」じゃなくて、「お客さまに足を止めて頂き、商品に興味を持っていただくこと」なので。
少年B:
なるほど……。確かに、商品のと相性が合えば、集客力はすごくありそうですね。コロナ前の時期はどれくらい展示会に出てたんですか?
斎藤:
コロナ以前は企業ブースに月10日間くらい立っていましたね。ピークのときにはそれだけで会社員の月収くらいはいただいてました。
少年B:
それはすごい! お仕事はどのようにして獲っているんですか?
斎藤:
元々は写真を送るなどの営業をしていたんですが、最近はSNS経由でオファーが来るようになって、自分からの営業はほとんどしていません。Twitterのフォロワーが8,000人を超えてから、ありがたいことにたくさんお仕事の話が来るようになりましたね。
少年B:
最近は新型コロナの影響で、展示会も少なくなってしまったと思うのですが、現在はどのような活動をされているんですか?
斎藤:
企業のホームページなどで商品モデルとして活動させていただいたり、ハンドメイドのサイバーグッズの販売をしたりですね。あとはモデルさんに衣装をお貸しして、私がサイバーメイクを施した「サイバー撮影会」の開催などの活動も多くなっています。
少年B:
徹底してサイバーな活動をされていらっしゃるんですね! すごい……!
少年B:
そんなYukiさんがサイバーモデルになったのはなぜなんですか?
斎藤:
私はもともと吃音症(きつおんしょう)だったんです。しゃべる時につかえたり、どもったり。子どものころはよくからかわれたり、いじめられたりもしていました。そんな時に心の支えになってくれたのが、仮面ライダーだったんです。
少年B:
仮面ライダーですか!?
斎藤:
はい。私は仙台出身なのですが、仙台では夕方に昔の特撮の再放送があったんです。そこで見た、たったひとりで悪と戦う等身大のヒーロー・仮面ライダーに勇気をもらったんです。
そして、「いつかは自分も仮面ライダーに出たい」と、芸能界への憧れが生まれました。でも、わたしは吃音症で、お芝居なんてとてもできません。そこで、当時2番目に好きだった「モノづくり」で芸能のお仕事と関われないかと思い、美大に進学しました。
少年B:
まだモデルになる道筋が想像できないのですが、そのあとはどうなったんですか?
斎藤:
卒業後は縁あって上京し、マンガ家さんのアシスタントをすることになりました。4~5年くらい働いていたんですが、得意なことに打ち込める仕事環境が幸いしたのか、気が付くと吃音が治っていたんです。
少年B:
吃音は精神的なものも原因のひとつと言われていますよね。
斎藤:
そうなんです。同僚から言われるまで、治ってることに全然気づいてなかったんですけど……(笑)。
また東京に出てきてから気付いたのですが、周りには俳優志望の人や芸人さんの卵など、夢を追う人がたくさんいました。仙台ではどうしてもそういうチャンスは少ないですが、東京は違います。
当時はもう27歳になっていましたが、もともとの夢だったお芝居に挑戦してみたいな、という気持ちがまたふつふつと沸いてきました。そこで、半年間ボイトレや殺陣などをみっちり習い、芸能界の門を叩きました。
少年B:
その結果はどうだったんですか?
斎藤:
初撮影はエキストラの仕事だったのですが……。エキストラは控室に集められ、出番に応じて呼ばれるんですが、私ひとりだけ、最初から最後まで一度も呼ばれなかったんです。
少年B:
えええ! そんな状況、わたしならすぐに心が折れてしまいそうです……!
斎藤:
もちろん私も落ち込みました。でも、エキストラの中にひとり、芸人さんのタマゴの方がいて、たまたま帰りのバスで一緒になったのですが、そこでこう言ってもらえたんです。
「いやいや、君は控え室で一番目立ってたで。エキストラだから目立つ人は選ばれなかっただけ。むしろ名前や顔が出る役を狙えばええんちゃう?」って。
少年B:
えっ、なんていいお話……!
斎藤:
その後、応募したモデル事務所は150社以上。結果は全部ダメでしたが、「自分のやりたいことをできないまま人生が終わるのはイヤだな」と思って諦めませんでした。そんな状況でも続けられたのは、あの時の言葉があったからだと思います。
少年B:
たったひとつの言葉が救ってくれることってありますよね……! それにしてもバイタリティがすごい!
斎藤:
ただ、その頃の私は片目が「斜視」になっていました。焦点が合わず、距離感も掴めず、レッスン中に人とぶつかったり、何もないところで転ぶようになりました。
少年B:
ええっ! 芸能界を目指すにおいて、それは致命的な状況なのでは……?
斎藤:
そうです。当時は「応募して受からないなら、自分で発信すればいい」と思って、YouTubeやTikTokなどで動画を発信していたのですが、コメント欄で「どこ見てんの?」などと叩かれて……。発信の内容よりも、外見的な特徴に目が行ってしまうんだなと思いました。
少年B:
ううう、それはつらい……。
斎藤:
それでも動画をきっかけに、ローカルの深夜番組に呼んでいただいたこともありました。合わない視線をごまかすために、前髪で隠して……。でも、そんなことで長続きがするわけもなく。
集団面接形式のオーディションでは、かわいい子や有名な子ばかりに審査員の質問が集中して、私は一度も話せないまま不合格になったこともありました。
少年B:
話をうかがっているだけでも苦しくなります……。そんな八方塞がりの状態から、一体何が転機になったんでしょうか。
斎藤:
たとえば顔がきれいだとか、胸が大きいとか、そういうのは「人と違うから売れる」わけじゃないですか。でも、斜視だって人と違うのに、何でダメなんだろうって思ったんです。
少年B:
確かに……!
斎藤:
そこで「隠すんじゃなくて、これを活かすことはできないか?」と考えました。最初にGoogleで「左右非対称 カッコいい」ってワードで検索してみました。すると、当時ちょうど放送されていた仮面ライダービルドの画像が上がってきたんです!
斎藤:
ビルドは左右非対称で、顔の半分が赤くて、もう半分が青い。でもすごくカッコいいんですよ。「これだ!」と思って。
少年B:
子どもの頃の斎藤さんを救ってくれた仮面ライダーが、ふたたび助けてくれたんですね!
斎藤:
そうなんです! まさか人生で2度も仮面ライダーに助けられるとは思ってもいませんでした……!
斎藤:
そして、私は「サイボーグ」になることを思いつきました。
友達の主催したハロウィンパーティにこの格好で行ったところ、SNSに上がった写真がバズりまして。Facebookの友達の友達に、たまたまITメーカーの方がいまして、「展示会のブースに立ってみない?」と声がかかりました。
少年B:
そこで展示会のお仕事に繋がったんですね! 反響はいかがでしたか?
斎藤:
10万人規模の展示会だったんですが、多くのお客さまに足を止めていただけて、「これはいけるかもしれない」と思いました。
少年B:
初めて呼んでもらった展示会で、確かな手ごたえを掴んだんですね!
少年B:
そういえば、斎藤さんは衣装もほとんどご自身で作られているんですよね。
斎藤:
はい。服は海外のブランドからご提供いただいてるものもあるんですが、8割ぐらいは自分で作っていますね。
少年B:
美大で学んだ技術が活きたのでしょうか?
斎藤:
そうですね。美大では造形も一通り学んだので、そこで培ったものは役に立っています。もちろん、当時はサイバーモデルになるなんて考えもしませんでしたが……(笑)
当時は吃音でお芝居ができないからとモノづくりに進んだのですが、その経験があってこそのサイバーモデル活動なので、無駄なことなんてないんだなぁと思っています。
少年B:
ほかのモデルさんと違う、サイバーモデルならではの楽しさはどういうところですか?
斎藤:
普通のモデルはどうしても「美しい人が有利」ですが、サイバーモデルなら特殊メイクやパーツの付け替えで無限のコーディネートができます。つまり、自分にあったコーディネートやメイクを見つけやすいんです。
私の斜視もそうですが、普通のメイクをしたら似合わないような人でも、サイバーモデルならプラスに転換できるなと思っています。
少年B:
マイナスをプラスにできるのってすごくいいですね!
斎藤:
はい。マイナス要素にとらえられがちな特徴って、どうしても「隠す」方向に行きがちなんですよね。でも、たとえば大きなほくろがあるなら、それを起動スイッチにすればいい。そういうことができるのが、サイバーパンクの世界観だと思っています。
もちろん、嫌だったら隠してもいいんです。でも、「活かす選択肢があるけど選ばなかった」のと「隠すしか方法がない」のは違うと思っていて。
少年B:
ちゃんと選択肢があるということですね。すごく希望の持てる話だと思います!
斎藤:
あとは、例えば普通のモデルやグラビアアイドルだとSNSでフォロワー1万人越えの人なんてゴロゴロいるんです。でもサイバー系に振り切っている人は日本ではまだまだ少なく、ここなら私程度でも中堅クラスにはなれるので、そういう面白さはありますね。
私は胸は小さいし、顔が特別綺麗なわけでもない。年齢ももう30代半ばです。そんな私でもオファーを頂けているのは、やはり競合相手のいない「サイバー系専門のモデル」だからだと思います。
斎藤:
顔やスタイルに関しては、もちろん本人の努力もありますが、先天的な部分が大きいですよね。でも、生まれ持ったものがなくても、こういう装備や衣装によって自分で魅力を作っていくことができる。それがやっぱり楽しいですね。
将来的には普通のオーディションで受からなかった子たちを集めて、みんなでサイバーな衣装を着て写真集作って、Amazonランキングで1位を取れたらいいなと思っています。「自分たちで工夫すれば、こうやって魅力を作っていけるんだぞ」って伝えたいです。
少年B:
最後に、「何者かになりたい」と思う人、「自分だけのスキル」を見つけたい人に声をかけるなら、何と伝えますか。
斎藤:
そうですね……私は「運命は変えられないけど、まき直しはできる」と思っているんです。
斎藤:
たとえば年齢や体質はどうやっても変えられないし、自分の人生をガラッと大きく方向転換するのは難しいけど、軌道修正はできると思うんですよ。気付いたその日から、明日の自分に向けてちょっといいバトンを渡すことはできるんです。
少年B:
変えられないものもあるけど、変えられることもある……!
斎藤:
そうです。変えられないことにフォーカスして悩むくらいなら、変えられることに全力投球して、希望を持って頑張ってほしいなと伝えたいですね。
自分の場合はハロウィンパーティーとSNSでしたが、本当にきっかけって突然来るので、あきらめないでほしいです。
それからもうひとつあるんですけど、いいですか?
少年B:
はい。
斎藤:
変わった活動をしていると、色々と文句や、悪口を言ってくる人も少なからずいます。心無い言葉に傷つくこともあると思うんです。でも、そういう人って、面と向かって言う勇気はないので、無視していいと思っています。
少年B:
なるほど! ファンはわざわざ公言しないけど、アンチの意見は目立つので気になってしまう、という意見も聞きますが……?
斎藤:
はい、その気持ちもわかります。でも、私は入場無料のイベントにも時々出ているんですけど、アンチコメントをする人が実際に対面で文句を言いに来たかっていうと、過去ひとりも来てないんですよ。
でも、ファンの方はちゃんと来て応援してくれる。だからファンとアンチって、ファンの方が圧倒的に強いんで、「もし変な人に絡まれても気にしないでね!」と伝えたいです。ちゃんとがんばって努力をしていれば、いつか必ずチャンスは来るはずですから。
【記事のまとめ】
- 人と違う部分を「活かす」発想を持とう
- 一見遠回りと思ったことでも、身についた技術は自分を救う
- 魅力がないなら作ればいい
- 変えられないことは気にせず、「変えられること」に全力投球しよう
- ファンとアンチでは、ファンの方が圧倒的に強い。ネガティブな声に惑わされないで
(執筆:少年B 編集&撮影:じきるう)
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