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チームで作った作品の著作権は誰のもの?【弁護士直伝】

チームで作った作品、著作権は誰のもの?
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みんなで力を合わせて1つの作品を作り上げるって素敵ですよね。文章、イラスト、マンガ、動画制作……フリーランスがそれぞれ得意なスキルを持ち寄れば、単独では絶対作れないようなすごい大作ができてしまうかもしれません。

でも、こうして作った作品の著作権って、いったい誰のものになるのでしょうか? 今回はチームにおける著作権トラブルについて、河野弁護士に伺いました。

河野 冬樹(かわの ふゆき)
河野 冬樹(かわの ふゆき)

法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けにリーガルサービスを提供している。ミステリをこよなく愛する活字中毒者。(Twitter:@kawano_lawyer

聞き手:ぽな
聞き手:ぽな

こたつとお布団、コーヒーをこよなく愛するフリーライター。法学部出身のはずが、なぜか卒論のテーマは村上春樹であった。やれやれ。(Twitter:@ponapona_levi

チームで仕事をするのは難しい?

ぽな:
先生ー! じつは先日、フリーランス仲間から「サイトや動画の制作したいから、僕とチームを組まない?」って誘われたんです。動画配信やサイト制作って、ひとりでやるには難しい作業もありますし、こんな風にみんなで一緒にプロジェクトを動かすって、楽しくていいですよね。

河野:
それはすばらしいことですね。

ぽな:
ただ私、意地悪なので、つねづね思うんですよ。これ、うまくいっているときはいいけど、うまくいかなかったときは超ヤバいんじゃない……? って。

仕事がうまくいかなくなったとたんに仲違いしたり、メンバーが脱退したり。

河野:
残念ながら、よくある話ですね。フリーランス同士でチームを組んで仕事をすることには、大きなメリットもあるのですが、一度トラブルになってしまうとやっかいなことになる可能性はあると思います。まぁ、会社にしてもそうなんですけどね。

ぽな:
むむ……。せっかくみんなでプロジェクトを進めるなら、できるだけ楽しく平和にやりたいんですけどねぇ。今回は、トラブルが起こりやすそうな「チームと著作権」についてお聞きしたいと思います。

チームで作った作品の著作権は誰のもの?

ぽな:
恒常的なチームという形になるかどうかはさておき、実際に複数人でひとつの作品を作ることもあると思います。その場合、作品の著作権はどうなるんですかね?

河野:
そこは作品のタイプ別に考えてみるのがいいと思います。

動画の場合

河野:
まず、動画の場合はシンプルです。映画と同様の著作物になりますので、動画をプロデュースした監督的な立場の人に著作権が帰属することになります。

ただ、YouTubeなどで動画配信をしている場合、難しい問題があります。というのも、そのチャンネルから得られる収益があるわけですよね。複数人で協力して作っている動画なのに、動画の著作権を持つ人が収益を全部もらっていいのか、という話になります。

あと、著作権とは直接関係ないですが、「チャンネル自体の権利は誰のものか」という別の問題も出てきちゃうんですよ。

ぽな:
収益の上がるチャンネルだと、そのチャンネル自体に価値がありますもんね。ブランドというか……。

河野:
そうそう。個人チャンネルなら問題ありませんが、複数の人たちが集まって、チームとしてアカウントを持つこともありますよね。そういうケースが難しいんです。

ぽな:
あー、これ、メンバーが脱退したときに、チャンネルの管理権をめぐってとんでもなくモメるやつだ……。

河野:
権利関係をはっきりさせておかないと、ケンカ別れをしてしまったときが怖いですよね。

ぽな:
私の勝手な印象では、VTuberもよくトラブルになる印象があります。

河野:
VTuberは、中の人(演者)がいて、イラストを描いた人がいて、モデリングする人がいて……。そもそもの構造がややこしいんですよ。

VTuberの権利関係を整理すると、ます、イラストの著作権はイラストを描いた人にあります。で、それをもとに3Dモデルを作ったのであれば、それはイラストの二次創作的な扱いになりますので、モデルを作った人にも著作権があるということになる。さらに、動画を撮っている(制作している)のは中の人だから、動画の著作権は中の人にある、と。

ぽな:
うーん、めんどくさい……。

河野:
ただ、実際SNSなどを見ている限りは、同じ制作チーム内でモメるというケースは少ないように思います。チームというよりはむしろ、「中の人」と制作を請け負った人が、イラストやモデルの著作権をめぐって個別にモメるパターンが多いように思います。

ぽな:
チームであろうがなかろうが、権利関係をめぐっての争いは起きるんですねぇ……。

文章・イラスト・マンガの場合

ぽな:
では、複数人で分担して文章を書いたり、マンガやイラストを描いた場合はどうでしょうか。

河野:
その場合は、各自の作品を分離できる場合は、その部分を作った人ということになるでしょうし、そうでない部分は共同著作物になるでしょうね。フラットな関係を想定するのであれば、著作権は共有という形になります。

ただ、共同著作物の場合、「自分にも著作権があるぞ」と主張する人が、本当に創作に関与したといえるのか、という部分をめぐってトラブルになりやすいです。イラストレーターが複数人でコラボして描いている場合はいいですが、イラストやマンガのアシスタント的な業務だとどうなんですか、と。

ぽな:
うーん、たとえばマンガだと、先生が描いているのはメインの人物だけで、背景やモブキャラはほぼアシスタントが描いているというケースもありますよね。

河野:
一般的に、「背景は決まりきったものだから創作性はない」と考えられていますが、突き詰めて考えると、はたしてどうなんだとも思いますよね。あとは作画には関わっていないけど、取材して資料を集めてきた場合はどうなのか、とか。

ぽな:
難しいですね……。ライターの仕事でも取材やリサーチを担当する人と、実際に執筆を担当している人が分かれているパターンもあるみたいなんです。リサーチやインタビューだって、実際にやってみるとものすごく大変ですし。

でも、リサーチやインタビューってあくまで執筆の準備作業であって、実際に記事を書いているのは執筆担当です。そういった場合、リサーチやインタビューを担当した人は、「創作に関与している」といえるんでしょうか……。

河野:
それについてはSMAPインタビュー事件(※)の考え方が参考になると思います。共同著作の典型例ともいえるような事件ですから。

SMAPインタビュー事件(SMAP大研究事件)
男性アイドルグループのインタビュー記事が書籍に無断転載されたとして、著作権侵害が問題になった事件。裁判の中では「インタビュー記事の著作者が誰なのか」も合わせて争点となった。本件では、インタビューを受けたアイドルグループのメンバー個々人はインタビュー原稿に手を加えていない、発言内容がそのまま記事になったわけではない等の要素が考慮され、アイドルグループのメンバー個人はインタビューの素材を提供しただけで著作者ではないという判断となった。

ぽな:
執筆に必要な素材を提供するだけでは創作に貢献したとはいう判断にはならないんですね!? むむ、実際チームで動く場合、誰か1人が資料集めやリサーチをして、他の人が作品を作る……という体制はありそうですが、これだとリサーチをした人が報われないということになりませんか?

河野:
そのあたりはライターさん同士だとトラブルになりやすいところでしょうね……。労力がかかる作業ですから。ただ、リサーチや資料集めに創作性があるのかというと、やはり「難しいのでは」という結論にならざるを得ないところがあります。

ぽな:
なるほど……。一方、取材だとインタビュアーが質問案を作ったり、実際にいろいろ話をしているわけですよね。その結果できあがった取材音源は単純な素材といえるんでしょうか……。

河野:
口述したものにも著作権は認められますし、質問の仕方や質問内容にも創作性があると思われます。だから、取材音源については、音源自体が著作物と判断されるケースはあるんじゃないでしょうか。

ぽな:
じゃあ、その場合のインタビュー記事の著作権は誰のものになるんですか? 単純にインタビュアーと執筆担当の合作だから共同著作物として扱えばいいんですかね。それとも、小説を漫画にしたみたいに二次創作っぽい扱いになるんでしょうか。

河野:
ケースバイケースだと思いますが、はじめから記事化を前提にしているのであれば、おそらく共同著作物になるのではないでしょうか。

ぽな:
うーん、ややこしい……。

河野:
そうなんです。一筋縄ではいかないんですよ……。

著作権トラブルが起きた場合のチームの責任問題について

ぽな:
著作権といえば、著作権侵害をしてしまった場合の問題もありますよね。いったい誰が責任をとればいいんでしょう。

河野:
もちろん作品を作った人に責任があるわけですが、ほかのメンバーにも責任があるんじゃないか、ということにもなりますね。

ぽな:
まあ、チームでひとつの制作物を作る場合って、話し合いながら作品を作りますからねぇ。たとえばホームページ制作に、他の人の作品を丸パクリしたイラストが使われたとして、それに気付かずリリースしちゃったとしたら……。イラスト担当以外のメンバーにも責任がありそうな気がします。

河野:
その場合、窓口役になっている人に直接請求がくる可能性もあります。そうしたら、窓口役の人が賠償金を肩代わりしなければならなくなるかもしれない。

丸パクリのケースはさておき、難しいのは「似ている作品があります」というケースですね。著作権侵害が成立するかどうかって微妙な場合も多いんですよ。

ぽな:
以前も取材させていただきましたが、確かにそうでした……。

河野:
仮に、窓口役の人が、肩代わりして賠償金を払ったとしましょう。その場合は当然イラスト担当にそのお金を請求するわけですけど、イラスト担当のほうは「いや、たまたま似てしまっただけで、著作権侵害だとは思っていません」という認識でいるケースもあるわけですよ。

ぽな:
「賠償金? しらねーよ」って話になるわけですね。

河野:
そうなんです。お金を払ったあとに内部でさらなるトラブルに発展するケースもあるので、外部とのトラブルには必ず当事者を巻き込むことが大事ですね。たとえば「謝ってもらわないと話がまとまらないから」と言って、話し合いに同席させたりとか。

ぽな:
え、待ってください。これ、オンラインだけでつながってるケースとか、無理じゃないですか……?

河野:
というか、そもそもの問題として、オンラインだけの関係なら、何かあったら逃げられちゃう可能性もあるわけで……。

ぽな:
そう考えると、住所も本名も知らない人とチームを組むって、めっちゃ怖い!!!

河野:
でも、チームのトラブルって著作権だけではないんですよ。

ぽな:
ええっ!? 他にもまだまだ落とし穴が……?

共作した場合の著作権は超複雑

筆者自身、河野先生に何度かアドバイスをいただいたことがあるのですが、複数人で作品を作った場合の著作権問題は超複雑です。

個人的には、記事のリサーチャーと執筆者が分かれている場合のように、内部の役割分担によっては理不尽とも思える結果になるケースもあるように感じました。モメやすい話だからこそ、内部関係をあらかじめきちんとしておけ! という話なのかもしれません。

次回はフリーランスチームにおける、さらなるトラブルについてお聞きします!

(執筆:ぽな 編集:少年B 協力:河野冬樹弁護士 イラスト:はこしろ)

【連載】フリーランスのための白熱法律教室

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