【社労士解説】ジョブ型雇用時代におけるフリーランスの生存戦略とは?
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SNSで一番怖いもの、それは炎上……!
内輪ノリで行った何気ない発言や他のユーザーとの論戦など、軽い気持ちで行なった投稿が燃え上がり、爆発的な勢いで拡散されていき、最悪の場合はまとめサイトやネットニュースに!?
考えただけでおそろしい事態ですが、もし万が一炎上に巻き込まれてしまった場合、私たちはどうすればいいのでしょうか?
「ぶっちゃけどうなんだ」という話を河野弁護士に訊いたら、極めて実用的な回答が返ってきました。
法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けにリーガルサービスを提供している。ミステリをこよなく愛する活字中毒者。(Twitter:@kawano_lawyer)
こたつとお布団、コーヒーをこよなく愛するフリーライター。法学部出身のはずが、なぜか卒論のテーマは村上春樹であった。やれやれ。(Twitter:@ponapona_levi)
目次
ぽな:
誹謗中傷と関連では、炎上トラブルがあります。これも問題になっている印象が強いですね……。
内容的に問題のある言動がSNSで拡散されて燃えるケース、誰かの問題発言が自分に飛び火したケース、人に絡まれたケース、バズったツイートがいつのまにか燃えているケース……。いろんなパターンがあると思うんですけど。もし炎上トラブルに巻き込まれた場合、どう対応すればいいんでしょうか。
河野:
うーん……。ケースバイケースですが、基本的には放っておくのが一番でしょうね。
ぽな:
なるほど。自分に非があった場合は謝った方がいいけど、そうでない場合は放置しておいた方がいいみたいな話でしょうか。それとも、自分に非があった場合でも謝罪せずに放置しておいた方がいいんですか……?
河野:
もちろん燃えた経緯・原因によっては謝罪した方がいいケースはあります。ただ、完璧な謝罪って難しいと思うんですよ。全員を納得させるのは困難ですし、場合によっては謝罪する行為自体が燃料になってしまうリスクもあります。
ぽな:
あー……。見たことあるかも。
河野:
火は燃料がなければ燃えないですからね。人の噂も75日じゃないですけど、燃料を投下せずに燃え尽きるまで待った方がいいケースもあります。
ぽな:
とはいえ、今の時代って、炎上の事実が魚拓的にネット上に残っちゃいますよね。それはそれでイヤだなあ。
河野:
でも、世間の人って、そんなに自分に興味がないことも多いですから。
たしかに、当事者にとってはものすごく深刻な問題かもしれませんし、つらいだろうと思います。下手にアクションを取って状況が悪化することもありますので、炎上後についてはあまり気にしすぎないことも必要かなと思いますね。
他方、炎上の結果、名誉毀損をされたら、その相手に損害賠償するという方法は考えられるところです。
ぽな:
さて、前回に続いて、SNSで問題になりそうなトラブルについてアレコレ見てきましたが、忘れちゃいけないのがDM(ダイレクトメール)の晒し行為。あれはどうなんですか?
1対1のやりとりは公開の場でのやりとりとは扱いが違うと思うんですけど……。あれがきっかけで炎上する人も多いですよね。
河野:
まず、DM相手がクライアントの場合は、守秘義務の問題があるのでダメという話になりやすいと思います。
ぽな:
なるほど。あの、たまにバズっているのを見るんですが、自分のところに来た変なDMを晒すパターンはどうでしょう。
河野:
この場合、問題になるのはプライバシー侵害や名誉毀損ですよね。
DMは本来私信で、公開を前提にしたものではありません。だから、その公開が問題になる可能性は確かにあります。ただ、公開すること自体が必ず違法になるかというと、そうも言い切れないんですよね。
ぽな:
と、いいますと?
河野:
たとえば名誉毀損ですが、DMを送った行為自体は事実ですから、その「事実」については問題なく真実性は認められそうです。また、あまりにひどい内容のDMであれば、相手が公人である場合などには、公開する行為に公益性が認められるケースもあるでしょう。
ぽな:
むむ、あまりにひどいDMが来た場合は晒しが正当化される場合もあるのか……。
河野:
もちろんケースバイケースなので、一般化するのは危険ですけど……。もっと言っちゃうと、DMを晒されたことで送り主の社会的評価って低下するんですかね?
そもそも名誉毀損にしても、プライバシー侵害にしても、晒された側がそれを主張したいのであれば、「自分がこのDM送りました」って言わないといけないんですよ。だから、「公開されて恥ずかしいと思うようなことなら、何で送ったの? 悪いと思っていないから送ったんだよね?」という話になるのではという気がしなくもない。
ぽな:
まあ、少しでも後ろめたい気持ちがあれば、自分からは言い出せないですよね……。
河野:
ところで僕、さっきから気になっているんですけど、変なDMの文面に著作権ってあるのかな……?
ぽな:
うーん、手紙は著作物ですよね?
河野:
もちろん。DMってそれなりに長さがありますし、よく晒されてるような類のDMって、文面も妙に創意工夫してますからね。ただ、DMに著作権があるとすると、今度は公表権の問題が出てきますね。うん、考えてみるとおもしろいですね……。
ぽな:
(先生、めちゃくちゃ楽しそう……)
ぽな:
誹謗中傷の被害にあった場合って、結局どうすればいいんでしょう。泣き寝入りというのもなんだか悔しいですが、ネット上で反撃すると事態が悪化しそうで怖いです……。
河野:
誹謗中傷トラブルについては、自分が被害者側であれば法的に対応するのが一番いいだろうと思います。「匿名アカウントだから何を言っても大丈夫」ということはないので、発信者情報開示請求で相手を調べて、損害賠償請求をしていくと。これが、ある意味王道の対応だといえるでしょう。
1対1のDMで開示請求を認めさせるのは難しいですが、不特定多数の人の目に触れる投稿であれば、匿名アカウントでも相手の身元を調べられますよ。
ぽな:
発信者情報開示請求……! 最近よく聞きますけど、結構気軽にできるものなんですか? 手続き的にも金銭的にもなかなかハードルが高いイメージがありますが……。
河野:
そこは弁護士に依頼してやった方がいいでしょうね。技術的な問題もあるので、一般の方が自分でやるのは難しいと思います。そうなると、弁護士費用の問題が出てきますが、これまでの裁判例を見ている限りでは、弁護士費用は相手方に請求できているケースが多いように思います。
発信者情報開示請求って専門性が高くて、弁護士にどうしても頼まざるを得ないところがあるんですよ。そのあたりも考慮してなのか、弁護士費用も被った損害の一部に含まれる、という判断がされやすくなっている印象があります。
ぽな:
ええっ、自分の言い分が認められれば、弁護士費用も回収できるんですね。金銭面の負担がクリアできるのであれば心強いですね。それこそ勝てそうな裁判なら「ガンガン行こうぜ」みたいな感じ……?
河野:
と言いたいところですが、そこは「相手にお金があれば」という枕詞がついちゃうんですよね。で、相手がどんな人かは開示をやってみて初めてわかるので……。
ぽな:
世知辛い……。やってみるまで回収できるかどうかわからないんですね。
河野:
はい。僕も著作権侵害で発信者情報開示請求は結構やっていますけど、相手にお金がなくて最終的に賠償金を取れなかった……ということもあります。
そのあたりの話も含めて、もし誹謗中傷被害にあった場合は早めに弁護士にご相談いただければと思います。
筆者自身、SNSの発信内容はかなり気をつけている方なのですが、リアルでやっちゃいけないことはSNSでもやっちゃダメだよなあ、と改めて思いました。
炎上や誹謗中傷被害を完全に防ぐことは難しいでしょうが、ある程度自分で気をつけることはできるのかもしれません。
レスバがヒートアップしての非難合戦、DMの晒し行為など、タイムラインを見ていると「あるある」な話も多いですが、一度トラブルに巻き込まれてしまうと、加害者・被害者ともに大変なことになってしまうのがSNSトラブルです。特に、たとえ本名でなくても、その名義で商業活動をしているフリーランスにとっては大きな打撃になりかねません。
加害者・被害者どちらの側にもならないよう、また火種の拡散に安易に協力しないように、慎重に行動したいところであります。思わず義憤に駆られるようなツイートが回ってきても、怒りのRTをする前に「とはいえ、しょせん他人事だしなあ」と一呼吸置くのも大事かなと感じました(しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~ 1|白泉社 より)。
フリーランスのみなさま、クールに行きましょう!
参考文献:
「基本刑法Ⅱ各論 第2版」(大塚裕史・十河太朗・塩谷毅・豊田兼彦/日本評論社)
「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル 第4版」(清水陽平/弘文堂)
(執筆:ぽな 編集:少年B 協力:河野冬樹弁護士 イラスト:はこしろ)
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