エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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気軽に美味しく食べられるサンドイッチ。その名前の由来は有名ですよね。18世紀後半、カードゲームが大好きなサンドウィッチ伯爵が、ゲーム中でも片手で食事ができるよう、パンに具を挟んだものを作らせたというエピソードが通説となっています。
じつはこのエピソードの中に、デザインする上でとても大事なことが隠れています。それは相反する要素や意見をまとめて昇華させ、新しい価値を生んでいるところです。
この矛盾する二つの要素を見事に成立させたことで、サンドイッチは「手軽に食べられる食事」として、新しいスタイルを生み出しました。これは世界的な発明といえるでしょう。
このように、相反する要素のどちらにも妥協しないアイデアを出せたとき、自分でも予想していなかった素晴らしいゴールに辿りつけることがあるんです。事例と共に見ていきましょう。
クライアントワークを中心に活動している、描いたり書いたりしているデザイナー。商品デザインからビジネスコンセプトづくりまで、幅広い領域で悪戦苦闘の毎日です。(Twitter:@onigiriEdesign)
あるスタートアップから「事業を始めるにあたって、会社のロゴマークを作成したい」と依頼された場面を想像してみてください。依頼内容は下記のとおりです。
真っ白なキャンバスに描くように、人と人との繋がりから新しい価値を生み出したいと起業した人材紹介エージェント『ALBO(ラテン語で白いを意味する言葉)』。社名を入れたロゴマークの作成をお願いしたい。
ところが、やる気に溢れる2人の共同創業者から相反する要望が出てきました。
Aさん「人と人の繋がりで世の中に好循環を作りたい想いを込めて、丸いカタチをモチーフに作って欲しい」
Bさん「常に他社にはない、最先端の尖ったサービスを提供したい、という気持ちを込めて三角形を基本としたロゴにしたい」
AさんもBさんも一歩もゆずる気がありません。こんなとき、あなたならどうしますか?
丸と三角、相反する要素を二つともメインモチーフにデザインするのは難しいことです。どうしても主従関係ができてしまうもの。だからといってクライアントの想いを変えてしまうような提案は避けるべきです。
丸と三角、相反する要素を取り入れてロゴマークを作るのはお薦めしません。それよりも社名であるALBOのロゴタイプ(図案化された文字)を作成し、そこにお二人それぞれが思い入れがある丸と三角を使いましょう。
このように書くと、論理的で建設的な提案に見えますよね。でも、ロゴマークを要望するクライアントにロゴタイプを提案し承諾してもらうのは、デザインの言語化ではなく、言葉で相手を論破しているだけです。もしかしたら、クライアントも納得してくれるかもしれませんが、論破してばかりだと自分の首を締める事態になりかねません。
※本記事では説明をシンプルにするため、ロゴタイプとロゴマークを明確に分けていません。ロゴタイプとロゴマークの違いについてはこちらの記事をご覧ください。
どういうこと? と疑問に思った方もいるかもしれませんね。首を締めるとは、どのような状況だと思いますか?
それは、自分の言葉が、デザインを伝えるために使われているのか、相手を論破して仕事をスムーズに進める為に使っているのか、分からなくなってしまう状態のことです。
そうなると、自分のデザインに自信が持てなくなってしまいます。最初は気にしなかったクライアントも「この人、いつも論理的に言いくるめてくるな」と疑問を感じてしまうかもしれません。結果、自分の仕事が減ってしまう事態にもなりかねない。デザイナーにとって、相手を論破することは絶対に避けるべきことなのです。
論破することがダメならば、どうすればいいのでしょう? たとえば、丸と三角を組み合わせてこんなロゴマークを作ることもできますよね。
人と人との交わりを細い水平線で表し、丸と三角が交わる部分に新しいカタチが生まれています。クライアントの要望を汲むグラフィックとしては悪くないですが、これはいいデザインと呼べるのでしょうか。ぼくには、妥協案に見えてしまいます。それは、このロゴマークからは、AさんとBさんの思いが伝わってこないからです。
Aさんは丸で循環を表現したいと言ってる。Bさんは三角形で最先端の尖ったイメージを出したいと言っている。お互いの主張を取り入れ、折衷案で出来上がったロゴマークから発せられるメッセージは弱いと感じませんか? 熱いお茶に氷を入れると飲みやすいけど、味はボケますよね。二つの意見の間を取ったデザインは、クライアントにとっても物足りなく映ることでしょう。
論破してはいけない、妥協もダメ。いったいどうすればいいのか分からなくて、頭が痛くなりそうですね。でも、そんなピンチのときこそ、新しいアイデアが生まれるチャンスでもあります。視点を変えると、まったく違うアプローチが見えてくるのです。
ロゴマークが使われるシーンは、Webページや名刺などディスプレイや印刷物が多く、自然とフラットな平面世界を思い浮かべがちです。三角や丸といったキーワードもそれを助長しているのかもしれません。
XとYの二軸で構成される平面世界では、丸と三角は違う図形です。でも、視点を変えてみたらどうでしょうか? もしかしたら、丸と三角は同じ物体の中で共存できるかもしれません。
お気づきになられた人もいると思います —— そう、円錐です。X, Y, Z の3軸で構成される立体世界では、円錐は見る角度によって丸に見えたり三角に見えたりしますよね。その考えをロゴマークのデザインに使った一例が、下のデザインサンプルです。
三次元の円錐を二次元のグラフィックに落とし込んでロゴマークにしてあります。初めて見たときには、ただの二次元図形に見える人もいるはずです。でも、円と三角のストーリーを聞いた瞬間に、このグラフィックは誰の目にも円錐に見えるはずです。
このロゴマークには、正円も三角形も描かれていません。でも、世の中に好循環を作りたいというAさんの想いと、常に最先端の尖ったサービスを提供したいBさんの想いが一体となったロゴマークに感じませんか?
クライアントは、デザイナーにとって大事なお客様であると共に、ひとつの目標に向かって進むチームメイトのようなものです。だから、デザイナーが言葉巧みに誘導し、強引にチームメイトを納得させてもいい結果には繋がりません。逆に対立する意見を昇華させ、ひとつ高い次元でみんなが腹落ちするアイデアを提案できれば、チームの士気は必ず上がります。
プロジェクト内で対立が起こることは珍しくありません。メンバーの本気度が高いほど、対立が深まるものです。そんなときこそ、AかBかの二項対立で議論するのではなく、メンバー全員で、AでもありBでもある、全く新しいCというアイデアを生み出すことに力を注いでみてください。
答えを見つけることは、決して簡単なことではありません。でも、新しいアイデアが出た瞬間に感じる達成感と高揚感は、何度体験しても格別なものです。だから、頭を抱えるような相反する要求を言われたとき、ぼくは「おっ!来たな」と自然な気持ちで向き合うことにしています。
変にポジティブにもネガティブにも捉える必要はありません。クライアントの要求に、真正面から自然体で向き合うことが、いい結果に繋がるし、なによりデザインが楽しくなる方法だと思っているからです。
(執筆&イラスト:こげちゃ丸 編集:少年B)
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