エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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営業のために活発にSNSを活用しているフリーランスも多いと思います。が、そこで心配なのが炎上や誹謗中傷といったSNS絡みのトラブル。
こうしたトラブルから身を守るためには、一体どうすればいいのでしょうか? 河野弁護士に訊いてみたら、法律論を超えたド直球の正論が返ってきました。
法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けにリーガルサービスを提供している。ミステリをこよなく愛する活字中毒者。(Twitter:@kawano_lawyer)
こたつとお布団、コーヒーをこよなく愛するフリーライター。法学部出身のはずが、なぜか卒論のテーマは村上春樹であった。やれやれ。(Twitter:@ponapona_levi)
ぽな:
営業ツールとして、SNSを積極的に活用しているフリーランスも多いと思います。一方でSNSというと、誹謗中傷や乱闘、炎上を始めトラブルの原因にもなりやすいという印象がありますよね……。実際にフリーランスが巻き込まれやすいトラブルとして、どんなものがあるのでしょうか。
河野:
そうですね……。そもそも論で言えば、もともとSNSというもの自体が人とつながるためのツールであるわけです。それも公の場所で。人間同士がつながっていれば喧嘩もするでしょうし、トラブルに発展することもあるのではないのでしょうか。
ぽな:
ええと、ふだんの人間関係で生じうるトラブルが、SNS上でも全部降りかかってくる可能性があるということですね。
河野:
そうですね。というか、SNSの特徴って、自分の発言内容が周りから見られていることにあると思うんですよ。
たとえば仲間内でモメた場合、別に自分の家で喧嘩をする分には「とりあえず本人の問題だから勝手にやってくれよ」という話になりますよね。ただ、SNS上で同じことをやると、人が見ているところでおおっぴらに喧嘩をすることになるので……。結果的に、誰も得しないことになるケースが多いですよね。
ぽな:
公共の場で怒鳴り合い、殴り合いをしているようなものですものね……。リアルな場だと、わりと自制する行動ではあります。
河野:
そうですね。何か言われた側は自分の悪口が拡散されることになりますし、言った側も「あー、この人、こんな風に口汚く他人をののしる人なんだ」と周囲から思われますからね……。というわけで、結局誰も得しないと。
ぽな:
なぜかSNSだとありがちですけどね……。法的問題はさておき、ふだんの立ち振る舞いから気をつけなければならないということでしょうか。
河野:
うん。あとぶっちゃけた話、悪口やゴシップって人の興味を引くんですよ。興味を引くから、拡散されやすい部分はあると思いますね。
ぽな:
たしかに、「こういうトラブルがありました」「ひどい目にあいました」みたいなツイートや、他人のDM(ダイレクトメール)を晒しているツイートとかは伸びやすい印象があります。結局はみんなゴシップ好きなのか……。いや、私も人のこと言えないですけど。
結果的に、当事者全員の被る不利益も大きくなりそうです。これ、一般に公開されていないようなクローズドなSNSでもリスクはありますか?
河野:
そうですね。今、SNSが発達している以上、そこにいる人が他の人に伝える可能性もありますし、クローズドな場であることに意味はないと思っておいた方がいいと思います。DMにしても、送った時点で「公開される可能性がある」と思ったほうがいいですね。
ぽな:
クローズな場所だからと言って安心してはいけないと。もはや安全な場所はないのか……。
ぽな:
SNSで今一番目立つトラブルは「誹謗中傷」じゃないかと思うんですが、全部の悪口が誹謗中傷になるわけではないんですよね……?
河野:
この問題を考える上で、手がかりとなるのは、刑法の「名誉毀損罪」について定めた条文です。
<刑法230条1項>
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処す。
河野:
この条文によれば、次の要件をすべて満たした場合に、名誉毀損罪が成立すると書いてあります。
<名誉毀損罪の成立に必要な要件>
- 「公然と」……不特定または多数人に向けて、ということ。伝えた相手が特定かつ少人数であってもほかの人に伝わる可能性があればあてはまる。
→数人しかいないコミュニティで発言してもあてはまる。- 「事実を摘示」……社会的な評価を低下させるような事実を指摘すること。「事実の有無にかかわらず」と書いてあることからもわかるように、その事実の真偽は問わない。が、具体的な事実である必要がある。
- 「名誉」……社会的な評価のこと(通説的な見解による)。
- 「毀損した」……社会的な名誉を低下させるおそれを生じさせたこと。
※そのほか、名誉毀損の成立に「人の社会的な評価を低下させる」ことが求められることに関連し、前提として「同定可能性」(誰のことを言っているのか特定できること)も問題になる。伏せ字、ペンネームなどの場合に争点になりやすい。
ぽな:
うぬぬ……。なかなか複雑ですね。
河野:
もっとも、名誉毀損にあたる行為であっても、その行為が正当と評価できる場合には、違法になりません。
たとえば、公共工事の談合を週刊誌がスクープした場合などですね。公共の利害に関する事実に関して公益目的で当該発言が行われ、かつ、その事実が真実であると証明された場合は「これって正当性がある行為だよね」ということで、違法性が否定されると。
以上は刑法上の犯罪が成立するかどうかの話ですが、民事、つまり相手に損害賠償を請求する場面でも、基本的な考え方は同じです。
ぽな:
なるほど……。
河野:
ちなみに、SNSでは、ある人の発言に対して、正当防衛的に行われた発言が問題になることが多いです。いわゆる対抗言論ですね。
ぽな:
えっと、「○○さんはこう言っているけど、実はそうじゃないです」みたいな?
河野:
そうです。自分の名誉を守るために必要なことを言うというのは、ある程度は許されるんですよね。だって、ぽなさんが今言った発言も突き詰めると「あいつはうそつきだ」ってことでしょう。
ぽな:
た、たしかに……。
河野:
となるとですよ。この場合、「あいつはうそつきだ」という事実を摘示したことになるわけですけど、「果たしてそれが正当な行為といえるのか」という話になってくるわけです。
ぽな:
うーん……。感覚的には、その言い方が相手の人格を攻撃するようなものでなければ、許容されるケースが多い気がしますが……。
河野:
その感覚は法的にもだいたい合っていますよ。ただ、ぶっちゃけたことを言うと、やりとりしている間に言動がエスカレートして、結果的に許容限度を超えてしまうケースがすごく多いんですよね……。
ぽな:
あちゃー。
ぽな:
自分では積極的に発言しない場合でも、最近では名誉毀損などが問題になるケースがあると聞きました。Twitterであれば、他人のツイートを「リツイート」や「いいね」するだけでも、名誉毀損になると判断されたケースがあるとか……。
河野:
そうですね。この数年でいくつか裁判例が出ています。「いいね」は特殊なケースなので一般化できないですけど、リツイートについては法的なリスクが上がっているといえます。
ぽな:
なるほど……。実際最近では、自己防衛の意味で「リツイートは賛同の意味ではありません」とプロフィールに記載する人も増えてきているみたいです。
河野:
うーん、でもそれで本当に免責されるのかは疑問ですね……。
ぽな:
え、こうした記載をしても法的な意味はない?
河野:
という気がします。もちろんやらないよりやったほうがいいんでしょうけど、そういう問題じゃないような気がするんですよね。
リツイートって、結局もとのツイートが拡散されてしまうことに問題があるわけですよ。特に、フォロワーが多い方がリツイートすると、影響力が大きいですよね。ある意味、元ツイートをした人より目立ってしまう可能性がある。
ぽな:
はい。
河野:
これ、TwitterのようなSNSの問題として考えるからややこしいのであって、リアルの世界で考えるとわかりやすいと思います。リツイートって、ようは人の噂話を広めていく行為にあたるんですね。だから、時と場合によっては問題になる。
ぽな:
たしかに。おもしろい話や楽しい話ならいいけど、ネガティブな話題の時は……。
河野:
特に最近Twitterでは、ツイートの表示回数を誰でも確認できる機能が実装されました。となると、場合によっては誰のリツイートが原因で拡散が加速したか、TLのスクショを取ればわかってしまう可能性もありますね。
ぽな:
スクショを何枚か撮って、時系列で追いかけられたら逃げられないですね……。
河野:
今までは、リツイートという行為と拡散状況との因果関係を証明するのが難しかったんですけど、それが以前より簡単になるかもしれません。リツイートによる不法行為責任を追求するハードルが下がる可能性がある、と個人的には見ています。
ぽな:
となると、ネガティブな内容をシェアするのって、ますます慎重になった方がいいかもしれないですね。
ただ、元ツイートを拡散するんじゃなくて、評論家的なスタンスで、「そのツイートに対して一言いいたい」というのもあると思うんですよ。その場合、引用リツイートできちんと論評コメントを加えた方が安心だ、という話もあるようですが……。
河野:
「仮に、これが本当だったとしたら」とかね。もちろん、そのほうが無難でしょう。
ぽな:
あくまで中立的なスタンスを貫くというか。
河野:
だって、その人の言い分が本当かどうかなんてわからないじゃないですか。リアルの世界でだって、一方の言い分だけを聞いて判断するのってフェアじゃないでしょう?
ぽな:
「リアルの世界に置き換えたらどうか」って視点はわかりやすいですね。
ちなみに、リツイートをする人の中には、相手に通知がいくのをおそれて、ふつうにリツイートしたあとに、自分のツイートで元ツイートへの論評や問題提起をするという方もいるみたいです。そういう行為も、法的には引用リツイートと同じような捉え方をしてもらえるのでしょうか。
河野:
うーん、Twitterの仕様上、元のツイートと自分のツイートがタイムラインに並んで表示されるとは限らないですからね。ふつうに情報を拡散したのと同じ扱いになると思いますよ。
本人に通知がいってほしくないような発言なら、そもそも言わないほうがいいと思いますし。
ぽな:
ド正論だ……。
河野:
あと、公開された場所で言っている以上は、通知が行くかどうか関係なく、回り回って本人のところに行く可能性があるんですよ。「それが困る」というのであれば、やっぱり言わない方がいいと思います。
ぽな:
そうしたリスクを踏まえて行動するように、ということですね。結局、超安全運転が無難という結論になりそうですが……。もしリツイートする場合は、引用リツイートが無難だぞと。
河野:
もちろんリツイート全般がダメというわけではありませんよ。ただ、拡散する前に、「その情報が真実かどうかわからない」という前提で、そのツイートを見てほしいなと思います。
ぽな:
人の噂話を安易に信じてはいけないと。悪口だけでなく、デマやフェイクニュースのように、広まると被害が拡大してしまうようなツイートもありますもんね。特に、フォロワー数が多い人がそれらの情報を拡散した場合、大変なことになりそうです……。
河野:
そうなんですよね。特に、名前を出して活動している場合は注意しておいたほうがいいでしょう。
ぽな:
私もそうですけど、フリーランスだと仕事名義で営業ツールとして活用する側面もありますもんね……! では先生、いざ炎上したら一体どうすればいいんですか!?
河野:
そうですねぇ、それでは次回はそのお話をしましょうか。
今回、河野弁護士とお話していて感じたのは、「SNSは公の場なので、いつも誰かに見られている前提でやらないとダメなんだな」ということでした。
自分のツイートだけでなく、リツイートも含め、発信活動を行うことの怖さを改めて感じた次第です。これからも安全第一、慎重なSNS活用を心がけようと思います……!
参考文献:
「基本刑法Ⅱ各論 第2版」(大塚裕史・十河太朗・塩谷毅・豊田兼彦/日本評論社)
「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル 第4版」(清水陽平/弘文堂)
(執筆:ぽな 編集:少年B 協力:河野冬樹弁護士 イラスト:はこしろ)
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