エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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なりすましに粘着、低評価爆撃……。インターネットの世界は便利ですが、悪意ある第三者からの「嫌がらせ」リスクは無視できません。
とくにSNSやポータルサイト経由でのお仕事獲得が多いフリーランスは、会社員以上に「ネット上の嫌がらせ」に遭遇するリスクが高いといえます。実際、筆者の周りでそんな話が聞こえてくることもしばしば。
加害者のことはムカつくし反論したい……と思うかもしれませんが、嫌がらせに対しては「ひとまずスルーしたほうがいい」と河野弁護士は言います。
そこで今回は、ネット上の嫌がらせへの正しい対応や予防策を河野弁護士に伺いました。
法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けにリーガルサービスを提供している。ミステリをこよなく愛する活字中毒者。(Twitter:@kawano_lawyer)
こたつとお布団、コーヒーをこよなく愛するフリーライター。法学部出身のはずが、なぜか卒論のテーマは村上春樹であった。やれやれ。(Twitter:@ponapona_levi)
目次
ぽな:
名誉毀損や炎上以外にもネット上で嫌がらせを受ける例って、結構あるみたいですよね。SNSの投稿や知り合いからは、たとえば以下のような嫌がらせの話をよく聞きます。
【ネット上の代表的な嫌がらせ例】
- SNSでの粘着
- 低評価爆撃、事実無根なレビュー
- 取引先/関係者への電凸
- なりすまし
- 個人情報をさらされる
- 勝手に着払いで商品や宅配を頼まれる
河野:
この手のトラブルはまあ、ねえ……実は弁護士も他人事ではなかったりします。
ぽな:
人の恨みを買いやすい仕事ですものねえ。顔も名前も表に出ていますし。
河野:
現代のネット社会では、個人で活動する以上はどうしても一定の情報をネットで公開せざるを得ません。契約書などの関係で取引先に個人情報を渡さなければならない場面もある。いきなりこんなことを言うのもアレなのですが、この手の嫌がらせを完璧に防ぐのは無理だと思ってください。
ぽな:
ええっ、そうなんですか!? どれも絶対嫌なんですけど、なんでそう言い切れちゃうんですか……?
河野:
じゃあ、わかりやすいように交通事故でたとえてみましょうか。交通事故の場合、気をつけていれば自分が加害者になることは防げるかもしれない。でも、信号待ちしている時に、後ろから追突されることだってあるでしょ。この手の事故を100パーセント防げると思います?
ぽな:
いや、絶対無理です!
河野:
それと同じです。ましてやこの場合、相手が悪意を持って轢き殺そうとしてくるわけで、自分で気をつけたって避けられるわけないんです。オンライン上で活動していれば、そこで関わる人には当然おかしな人も混ざってくる。
むしろ、ネット上の嫌がらせに関しては「100%避けるのは不可能」と知っておくことがまず重要だと思います。
ぽな:
「100%避けるのが不可能」だとしたら、誰もが嫌がらせに遭うかもしれないことになりますよね……。せめて嫌がらせされたときに取るべきベストな行動を教えてください!
河野:
最初は「表向きスルーしておく」のが最適解です。
河野:
スルーの重要性を考えるうえで、そもそも「なんで相手は嫌がらせをしよう」なんて考えるのでしょうか?
ぽな:
うーん、動機はいろいろあると思うんですけど……。
河野:
よくある理由をひとことで表現すると、「された側の嫌がる顔が見たいから」です
ぽな:
うわ、身も蓋もないことを。でも、たしかにそうかも。まったく共感できない心理ですけど。
河野:
それなのに、「やめてください」ってお願いしたり、正面から反撃したりしたところで嫌がらせをやめてくれると思います?
ぽな:
いや、まったく思わないです。むしろ「わーい、嫌がってる嫌がってる。もっとやってやろう」となるのが自然な流れだと思います……。
河野:
そう。嫌がらせって、された側が嫌がるほどやってる側は喜ぶわけです。だからこそ、加害者を喜ばせないためにも、嫌がらせを受けた場合はひとまずスルーが正解なんですね。
ぽな:
うう、たしかに。この場合、話せば分かるって幻想かも……。
ぽな:
でも、ずっとスルーし続けるわけにもいかないケースはありますよね。たとえば、相手の嫌がらせで仕事に支障が出ているケースとか。そんなときはどうしたらいいんでしょうか?
河野:
相手に言い返したり、弁解したり、お願いしたりしても、ほとんど意味がない。「やめてください」と伝えたい場合、警察に行く、法的措置を取るといったアクションとセットにしましょう。
仕事への影響が心配な場合は、表立って反論するのではなく、取引先や関係者に事情を伝えて根回ししておくのがおすすめです。
ぽな:
つまり、SNSなどではスルーしておいて、裏でこっそり動くってイメージでしょうか?
河野:
そうですね。相手を刺激して事態が悪化するのも困りますし、相手に証拠を消されちゃうと困りますから。ちなみに、個人的には法的措置を見据える場合、被害者の方に「黙っていてほしいな」と思ったりするんですけど(笑)
ぽな:
なるほど。ということは、相手にやり返したり、レスバしたりするのもダメ……?
河野:
周囲の人に相手と同類と見られてしまうので、やめたほうがいいと思います。あとDMも切り取られて使われる可能性があるので。とにかく、感情的に対応するのはやめましょう。
ぽな:
「警察へ通報」「法的措置をとる」といった最終手段に出る前にやるべきことには、どのようなものがありますか?
河野:
まず、証拠集めです。著作権侵害への対応なんかと同じで、相手が証拠を消さないよう、気づかないうちに素早くやる必要があります。
著作権侵害されたら、具体的にどう対処すればいいですか?【弁護士直伝!】
Workship MAGAZINE
ぽな:
証拠というと、スクショとかでしょうか。
河野:
そうですね。スクショの撮影時は、何が問題になっているのか、前後の文脈もわかるような形で集めてもらえるといいですね。場合によっては、SNSのタイムラインごとスクショするとか。
河野:
弁護士視点でいうと、相手の身元がわかっているのか、わかっていないのかで対応が変わります。相手がわかっている場合は、その人に対して直接リアクションを取ればいい。一方、加害者が匿名の場合は相手の身元を突き止めるところから始める必要があるので、相手はわかっていたほうが絶対いいです。
ぽな:
とはいえ、相手が匿名で嫌がらせしてくるケースも多いですよね……。
河野:
そんなときは、匿名アカウントでも加害者のSNSがわかると、身元につながる情報が見つかることもあります。
ぽな:
そういえば、アカウントの特定ってやろうと思えばできるらしいですよね。就活生の裏アカ調査を専門に請け負っている業者もあるみたいですし、素人が特定をしていることもあるとか……。
河野:
そう、結構わかっちゃうものなんですよ。仕事柄、相手の身元を捕まえるために、弁護士も特定に近い作業をやることはあります。それこそ持久戦で相手のSNSを観察して、ポロッと特定につながる情報が出た瞬間に攻めるなんてこともありますね。
ぽな:
さらっとダークな発言がありましたが……まあ、そうですよね。相手の身元がわからなければ裁判もできないわけで。でも、ここまで来ると弁護士ってちょっと探偵っぽいですね(笑)。
河野:
あとは、相手が匿名だった場合、それを逆手にとってSNS上で牽制するのも効果があります。
ぽな:
えええ。だって先生、さっきSNSで騒ぐのはダメって言ったじゃないですか。
河野:
もちろん書き方には注意が必要です。ただ、たとえばハッタリでも「相手が誰かはだいたいわかってるんですけどね」とか言っておくと、意外とビビって嫌がらせが止まったりしますよ。
あとは、実際に警察に相談したうえで「警察に相談しました」と言うのもいいですね。こういった書き方なら法的な問題にもなりにくいのですし。
ぽな:
たしかに、この書き方だと、嘘もついていないし、事実しか言っていないし、特定の誰かをディスっているわけでもない(笑)。
河野:
あるいは、何も言わずにこの記事のリンクをペタッとSNSに貼る、とか(笑)。
ぽな:
宣伝ありがとうございます(笑)。これは私自身も実感してますけど、相手に法律の知識がある人だと思われると、トラブルに巻き込まれにくいかもしれません。
河野:
まじめに予防効果はあると思いますね。だから、僕個人としては結構意義があると思っているんですよ、この連載。
ぽな:
こちらが牽制したり、様子を見たりしている間に被害が収まってくれればいいですけど、嫌がらせが悪質な場合や継続している場合、法的な措置を取らざるを得ない場合もあると思います。
この場合、嫌がらせをした相手にどんなペナルティがありますか?
河野:
まず、刑法上の犯罪にあたる場合は、刑事上の責任が生じることになりますよね。わかりやすく言うと、相手の発言次第で名誉毀損や侮辱罪といった犯罪が成立することがあります。
さらに、取引先に電話をするといった、業務に支障が出るような言動をされたら信用毀損や業務妨害罪にあたることもあり、脅すような内容のDMが送られてきたら脅迫罪です。
粘着だと、場合によっては「つきまとい」行為として軽犯罪法の処罰対象になりますね。また、相手がなりすまして自分の作品を勝手に自作として公開している場合は、著作権侵害になります。
ぽな:
おおお、いろいろありますね。
河野:
だから、上記にあてはまりそうな場合、とりあえず警察に相談に行くのはアリです。あとは民事の裁判ですね。嫌がらせは内容によっては不法行為になるので、相手に損害賠償を請求すると。
ぽな:
なるほど……。あの、素朴な疑問なんですけど、嫌がらせのせいで仕事に影響が出ることもあるかもしれません。たとえばデマをばらまかれたせいで、仕事が減ったとか、クライアントとの契約を切られたといった場合、相手に責任を取らせることはできますか?
河野:
これは難しいと思いますね。まず「仕事が減ったのはデマのせいだ」と証明するのが難しい。フリーランスの収入にはもともと波があります。「デマがなかったら確実に仕事が入ってきた」とは言えないことが多いと思います。
また、クライアントに契約を切られた場合、どちらかというとクライアントとフリーランス間の問題になってしまい、同じく「デマのせいで仕事を切られた」ことを証明するのは難しいです。たとえば、クライアント側は前から契約を切りたいと思っていて、名目としてそのデマや悪評が使われただけかもしれないでしょう?
ぽな:
そうですね………悔しいけど、仕事に関しては前を向いて頑張るしかないのかもしれませんね。
ぽな:
嫌がらせを完全に防ぐことができないのはよく分かりました。ただ、わたし自身、普段からSNSの発信内容はいろいろ気をつけていて、個人の特定につながるような情報は極力出さないようにしています。こういう心がけも無意味なんでしょうか?
河野:
いや、意味はありますよ。交通事故の例でいうと「事故が防げないからといって、エアバッグ付きの車に乗ったり、シートベルトをしたりするのは意味がない」という話にはならないじゃないですか。だから、被害を最小限に食い止めたり、被害に遭う確率を下げたりする対策はありますよ。
河野:
嫌がらせされそうになった場合、相手が個人情報を持っているのと持っていないのとでは、相手のやれることが変わってきます。だから、個人の特定につながる情報をネット上に出さないほうがいいのは間違いないです。
ぽな:
今いる場所をリアルタイムで呟かないとか、普段の行動範囲や自宅バレにつながりそうな風景写真を投稿しないとか……。
河野:
そうそう。あと、仕事関係に関しては、意味なく個人情報を他人に渡さないことも重要ですね。契約書を作るとか、自分の名前を出して仕事をするとか、やむなく個人情報を公開しなければならない場面もあると思うんですけど、それ以外はなるべく情報を出さないようにするのがおすすめです。
河野:
SNSに関しては使い分けが大切ですね。プライベートの情報を書くところと、そうでないところは分けたほうがいい。たとえば、Xはみんなが見る前提で書かなければならないのでプライベートの話は書かない。Facebookは友だち限定に公開範囲を設定して、そっちにはプライベートの話も書く、とか。
ぽな:
なるほど……ただ、その場合Facebookやインスタ、Xのアカウントが結びついちゃったりするとやばくないですか?
河野:
それはもう、なかなか防ぎようがないですね。
ぽな:
ですよねえ。となると、SNSの運用方法も根本から考えないといけないですね……。
ぽな:
交通事故の例でいうと、蛇行運転している車とか、明らかに「近寄らないほうがいい車」ってあると思うんですよ。完全に事故は防げないとしても、関わってはいけないやばい人やリスクを事前に見抜く方法ってないんでしょうか。
河野:
そうですね。これは感覚的な話になってしまうんですけど、以下2つの特徴がある人は警戒したほうがいいですね。
ぽな:
距離感のおかしい人はなんとなく分かるんですが、プラス思考とポジティブ発言はなんで危ないんですか?
河野:
プラス思考やポジティブ発言の人って、一見明るくて好印象でしょ。でも、それって物事を自分にとって都合よく考えているからこそ、明るくいられる場合があるんですよね……。
ぽな:
あ、そうか、客観的な状況と自己認識がかけ離れている……いわゆるメタ認知能力が低いタイプがやばいんですね!
河野:
そうそう。プラス思考やポジティブ発言それ自体が悪いわけではないんです。物事がうまくいかなかった時に、自分の非を認めて反省できる人だったらいいんですよ。でも、なかには「うまくいかなかったのは自分のせいじゃない」と、“ポジティブ”ゆえに他人のせいにしだす人がいるんですよね。
だから、ポジティブな発言が多くてキラキラした感じなのに、友だちがいなさそうな人は1番危ないです。というのも、基本的に他責思考でまともな人間関係が形成できないので、周囲から人が逃げていってしまうんですよ。
ぽな:
うわあ……でも、なんかわかるかもしれません。
河野:
嫌がらせで意外によくあるのが、同業者が足を引っ張るためにやってるケースですね。これは正直根が深い。法的な対応も限界があるので、根本的な解決方法としては足を引っ張られてもびくともしないステージに行くしかないんですよね。
ぽな:
なるほど、結局ここで最初の話に戻ってくるわけですね。「気にせず仕事をしよう」って。
河野:
ですね。社会的な不利益が大きいなら法的な措置が必要になることもありますが、そこまでいかない嫌がらせなら、基本的にはスルーするのが一番だと思います。下手に反応すると、相手を喜ばせることになりますからね。そのうえで警察に行くなり訴えるなり、しかるべき対応をとってほしいと思います。
ぽな:
たしかに……。でも嫌がらせされるのは嫌だなあ。
河野:
もちろん僕も嫌ですけど、ポジティブに考えることもできます。嫌がらせって有名税に近くて、知名度が高いほど嫌がらせに遭いやすくなるんですよ。
だから、もし嫌がらせにあったとしても、少々のことなら「自分も有名になったんだなあ」くらいの気持ちでいたほうがいいんですよね。避けられない事故である以上、下手に自分を責めてメンタルを削らないほうがいいと思います。
今回は「嫌がらせの対処法」について伺いましたが、対処法はとにかくスルーが正解だとよくわかりました。嫌がらせをする側の心理を考えると、あまりの闇深さになんだかクラクラしそうです。
河野先生いわく、「昔から誹謗中傷や嫌がらせの類はあったけど、最近はやり方が陰湿になってきている気がする」とのこと。
SNSの登場により、個人が嫌がらせの対象になりやすくなっているのも、現代の嫌がらせの特徴だといいます。
「嫌がらせは完全には防げない。どんなに気をつけても被害に遭うときは遭う」という先生の言葉に、弁護士としての経験から来る重みを感じました。
特にSNSでは他の人の反応をダイレクトに感じられる傾向があるように思います。それは、悪口やネガティブな発言が何倍も増幅されて、自分に向かってくるということ。良い声も悪い声も可視化されやすい今の時代こそ、他人の発言をスルーする力が求められているのかもしれません。
(執筆:ぽな 編集:齊藤颯人 協力:河野冬樹弁護士 イラスト:はこしろ)
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