エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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フリーランスにとって、契約書といえば生命線ともいうべき最重要書類の一つです。といっても、漢字は多いし、ムダに長い。正直、読むのがしんどすぎる……という方も多いのではないでしょうか。
で、筆者は思ったのです。日々大量の契約書と格闘している弁護士さんなら、「ラクに契約書を読むコツ」を知っているのではないかと。
そこで、今回は契約書の読み方を習うべく、フリーランス・クリエイター法務の分野で活躍されている河野冬樹弁護士にお話を伺ってきました。
法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けにリーガルサービスを提供している。ミステリをこよなく愛する活字中毒者。(Twitter:@kawano_lawyer)
こたつとお布団、コーヒーをこよなく愛するフリーライター。法学部出身のはずが、なぜか卒論のテーマは村上春樹であった。やれやれ。(Twitter:@ponapona_levi)
目次
ぽな:
先生、あの……のっけからアレなんですけれども。契約書は大事だ。それはみんなわかっているんです。しかし、契約書って漢字だらけだし、専門用語も多いし、しかも長い! そう、読むのがとっても面倒なのです。そのせいでしょうか、「最後まで読むのが面倒になって、結局流し読みしちゃう」「そもそも読まないでサインしている」などという声が周囲のフリーランスさんたちから寄せられております。
河野:
いやあ、そうなんですよね、多くの人がちゃんと読んでないですよね。
以前、利用規約の中に「あなたの子どもを連れていくことができる」みたいな条項を入れる、という実験を見たことがあるんですけど。大半の人はあっさりサインしてくれたという。
ぽな:
えええ!? そんなに危ない条項が入っているのに見落としてしまうなんて……!
河野:
そうなんです。みんな読んでないから気づきもしない(笑)。
ぽな:
ただ、そうは言っても、フリーランスにとって契約書が大事なものであることは確かなわけでして。そもそも契約書って何が書いてあるんでしょうか?
河野:
そうですね。まずは契約書というより、皆さんが結んでいる契約が何かというところから話を始めさせていただければと思います。
実際に仕事をする際、まずは「お金を払うので、この仕事をしてくださいね」という取り決めがあって、それから皆さん仕事を始められるわけじゃないですか。その取り決めた内容を書いたものが契約書になります。
なので「取り決めの内容がきちんと書いてあるかどうか」というのが、まず契約書を読むうえで気にしなければならないポイントです。具体的には、自分はいつまでに何をすればいいのか、一方相手はいつまでにいくら払ってくれるのか、といったところですね。それを確認しないまま仕事を進めちゃうのは、ちょっと怖くありませんか?
ぽな:
うっ、それは確かに……!
河野:
もちろん、取り決めの中に曖昧な部分ができてしまうこと自体は悪いことではなくて、そうならざるを得ない事情というのも確かにあります。作業時間や成果物の内容のように、事前にはわからない要素もありますから。ただ、それでも最低限決めなければいけないラインはあるよね、ということです。
ぽな:
とりあえず「引き受けた案件について、この仕事をいついつまでにしますよ」という仕事上の取り決めは最低限決めて、書面の形にするべきと。
河野:
そうですね。まずはそこを決めなきゃならない。さらに細かく考えていくと、他にも決めなくてはいけないことが出てきます。たとえば、「成果物の権利はどっちに帰属するのか」とか、「納品が遅れた場合の損害賠償金はどのぐらいになるのか」といったことですね。
で、ここで考えなきゃならないのは、実は決めていないことの方なんですよ。
ぽな:
決めていないことの方が、問題になるんですか!?
河野:
「決めていないことがどうなるのか」という知識がないがために、「契約がわからなくなる」という側面がありますね。
たとえばお金の話にしたって、あらかじめ「いくら支払う」と決まっていないと、仕事の評価がしようがないですよね。金額を決めてないってことはまずないでしょうが、そういった大事なことが契約書に書いてないと、のちのちトラブルになります。なので、そういった決めごとを確認するための書類が契約書なんです。
ぽな:
実際問題、契約書をめぐってトラブルが起きていることも多いと思うんですよね。ありがちな契約書のトラブルにはどのようなものがあるでしょうか。
河野:
まずは、曖昧な契約ですよね。たとえば、仕事内容が曖昧になっていたことが原因で、あとでトラブルになるパターンが多いです。とくに、打ち合わせ段階で録音などの記録が残っていない場合は問題になりやすいですね。
あとは、途中で仕事がキャンセルになってしまった場合というのはトラブルの温床です。仕事が途中になってしまったときの報酬の支払いについて、きちんと定まっていないケースが多いですから。
ぽな:
契約書から漏れてしまった「曖昧な部分」が、トラブルのもとになるんですね。
河野:
しかし、完璧な契約というものはそもそも不可能なんです。だからこそ、この「曖昧さとどうやってつきあっていくのか」がポイントになるのではないかと思います。つまり、曖昧な部分が自分の不利にならないようにするということです。
ぽな:
先生から見て、明らかに危ない契約書にはどのようなものがあるのでしょうか?
河野:
よくあるのは、リテイク回数が決まっておらず、クライアントがOKを出した時が「仕事のゴール」というケース。これが一番危ない。
ぽな:
クライアントのお気持ち次第で、エンドレスにやり直しが続くパターン……!
河野:
もう一つは、実質的に特定のクライアントに依存せざるを得なくなる契約ですね。「秘密保持義務」(一般的な秘密保持の範囲を超えて、他の仕事自体に制限がかかる場合など)や、「競業避止義務」がそれにあたります。
もちろん、一定程度必要になるケースはありますが、他の仕事を事実上受けられなくなるレベルで束縛されてないか、よく読むべきです。相手から兵糧攻めをされたときに、どうしようもなくなるわけじゃないですか。
ぽな:
収入を相手に依存してしまっている以上、何かあっても文句も言えないということにもなっちゃいますね。
河野:
あと、これは危ない契約書というよりも、契約の曖昧さに関わる話になりますが。契約を守らなかった場合の扱い───「損害賠償」の扱いにも気をつけないといけませんね。とくに、納品しなかった場合の損害賠償と、納品物に問題があった場合の損害賠償には要注意です。
損害賠償金の額が多額になるリスクがあるときは、あらかじめ契約書で金額の上限を制限しておく、といったことも必要になってくると思います。
ぽな:
ここまで先生に伺った話を総合すると、フリーランス側にもある程度の能動性が求められるのでは、という気がしてきました。「出された契約書をきちんと読んで、言うべきことは言う」というのが、すべての前提になっている気がするのです。
河野:
結局はそうなんですよね。これはフリーランスの方にとっては耳の痛い話かもしれないけど……。
ぽな:
いえ、この際ですので、はっきり言っていただきたいです!
河野:
ぶっちゃけ、そのあたりの面倒さをですね、会社では総務部や法務部の人が負担してくれていたわけです。だからその分、「会社員時代は自分の取り分が少なかったんですよ」と。こういう話になってくるんですよね。
ぽな:
組織を離れて働く以上、「契約書をしっかり読む」というある程度の面倒さも、自分を守るためには必須であると。
河野:
「自分が何もしなくても、自分の権利を他人が勝手に守ってくれる」というのが、まず幻想だと思うんですよ。これは法律に限った話じゃなくて、フリーランスの場合はあらゆることを全部自分でやらなくちゃいけない。
たとえば、契約の話をしましょうか。「イラストを描くのが得意だからイラストレーターになる」という人はたくさんいると思うんですよ。でも、「契約書を読むのがうまいから自分はフリーランスになる」という人は、まずいないじゃないですか。
ぽな:
た、たしかに……! そこまで契約書読むのが得意なら、フリーランスになんてならずに、ロースクールに行っちゃうかもしれません。
河野:
そう、「法律や契約が得意だからフリーランスになる」という人はいないですよね。そう考えると、そもそもほとんどの人は契約書が苦手なんですよ。苦手でも自分でやる。だからこそ、フリーランスなんですよね。
ぽな:
そうか、得意であろうが、不得意であろうが、ある程度自分で頑張らないといけないんですね……。
河野:
まずは自分で読んでみる。それでダメだったら、お金を払って外注するという方法もありますね。
あとは、そうですね。契約書の話からは若干離れてしまいますが、交渉段階で、きちんとクライアントと話し合うということも必要になってくると思います。コミュニケーション不足が原因で、トラブルが起きるケースも多いですから。
ぽな:
やはり「自分の身は自分で守れ」といいますか、フリーランス側が積極的に動かないと厳しい部分もあるんですね。
ぽな:
契約書を頑張って読む重要性はよくわかりました。でも、漢字や専門用語が多くて(以下略)という方もいると思うんですよね。そういう方たちのために、契約書を読むときのポイントについてお伺いしたいんですが……。
河野:
これは、もう表題を見て、大事そうなところだけを読むとかでもいいんじゃないかなあ。
ぽな:
その「重要そうなところを見極められない」という悩みも多いんですよね……。
河野:
まさにそこは最初の方で申し上げた話で。まずは「報酬関係」と「仕事内容に関する事項」、そして「納品物の権利の帰属先」。この3点が、まず見るべきポイントになります。ただ、100%内容が明確な契約を作るのは難しいので、どうしても曖昧な部分は残ってしまいます。
で、ここからが契約書を読むときのコツみたいな話になってくるんですけど。これまで自分が生きてきて出会った人の中には、性格の悪い人、弁護士のように屁理屈をこねたがる人っていると思うんですよ。そういう人が相手だと思って読めば、だいたい間違えないです(笑)。
ぽな:
曖昧なところがあると、すかさずつっこまれるぞと。
河野:
文言に何か不明確なところがあると、「あの人ならここにイチャモンつけてくるかもしんねえな」とか(笑)。
ぽな:
リアルな情景が目に浮かぶようです……。あの、それでですね、先生。我々面倒くさがりなフリーランスとしては、「ここだけ読んでおけ契約書○○選」みたいな契約書をラクに読むためのライフハックを切実に求めているわけなんですけれども、正直そういう裏ワザってないんですか?
河野:
いやあ、ないんですよね、これが。だって、ライフハック的な情報を出しちゃったら、その裏をかこうとする人が出てきちゃいますから。ライフハックに載っていないところに、何か変な条項を入れるとかね。だから、むしろライフハックなんてない方がいいんですよ。
ぽな:
なるほど……ライターとしては残念がるべきなのかもしれませんが、個人的には納得感しかないです。結局、人生諦めが肝心ということで……。
「契約書を読みやすくするコツはあるものの、お手軽なライフハックはない」
「ライフハックを出すと、その裏をかかれてしまう」
お話を伺ってみて、契約の世界は甘くないな、と改めて思わされました。
ただ、こういった面倒さを潔く引き受けるのがフリーランスなのかな、と、筆者自身は妙に納得しているところもあります(異論もあると思いますが)。
自分の権利は自分で守る、という意識を持ち、これからもしたたかにサバイバルしていこうと思います。
(執筆:ぽな 編集:少年B 協力:河野冬樹弁護士 イラスト:はこしろ)
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