エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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SNSや異業種交流会で知り合った人に、怪しいビジネスや詐欺的商法に勧誘された、というケースは珍しくありません。先輩や知人から怖い体験談を聞いて、警戒心を強めている方も多いのではないでしょうか。
ところで、この世の中には職務の性質上、ヤバい人に出会う確率が極めて高い業種があります。それは……弁護士!!
世の中の裏表をたっぷり見てきた弁護士の先生なら、ヤバい人や怪しいビジネスの見抜き方もご存知のはず。
そんなわけで今回は河野先生に、怪しいビジネスの特徴や、ヤバい人の見分け方についてタップリ伺ってきました。自衛力を高めたいフリーランスの方は必見です!
法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けにリーガルサービスを提供している。ミステリをこよなく愛する活字中毒者。(Twitter:@kawano_lawyer)
こたつとお布団、コーヒーをこよなく愛するフリーライター。法学部出身のはずが、なぜか卒論のテーマは村上春樹であった。やれやれ。(Twitter:@ponapona_levi)
目次
ぽな:
先生、聞いてください。SNSで知り合った人の異業種交流会やセミナーに行ったらそれがマルチの勧誘だったとか、コロナ禍の影響で飲食店からのあがりが減っちゃったせいで反社が詐欺のカモを探してSNS上で暗躍しているとか……。最近怖い話を聞く機会がものすごく増えていまして。
かといって、営業活動や人脈作りをやめるわけにもいかないですし。迫りくる魔の手から、我々はどうやって身を守ればいいんでしょうか……。
河野:
そうですね。じゃあまずは、「そういう輩がどうやって儲けているのか」という話をしましょうか。結局そういう輩が何を儲けのタネにしているかというとね、人の不安なんですよ。
たとえばコロナ禍で将来に対する不安を抱えている。そういう人たちに「投資やビジネスでお金を稼げるから、不安を解消できますよ」と甘い言葉を囁いて近づいていく。詐欺ってもちろんお金持ちが狙われることもあるんですけど、実はお金がなくて将来に不安を抱えている若者が狙われるケースも結構多いんです。
ぽな:
ニュースで見ました。大学生が情報商材詐欺の被害に遭っているって。
河野:
人の不安につけ込むというのは、モノを売りつける手段としてはうまくて。だからこそ、人の不安につけこむような言い方をしてくる人は、詐欺の可能性が高い。
ぽな:
一見親切そうに振る舞っている人が危ないということでしょうか。たとえばSNS上で「悩みを解決してあげる」「不安なら話を聞いてあげるよ」といって近づいてくる人とか。
河野:
そもそも、自分から近づいてくる時点で怪しいですからね。なんで見ず知らずの人の不安を解消してあげる必要があるんですか?
よく知らない人に「親切にしよう」なんてお人好し、フツーはいないですよ。とくに、ああいうヤバい輩が持ってくる「いい話」はゼロサムゲームですからね。自分たちがおいしい思いをするために誰かを犠牲にする仕組みになっているんです。
河野:
とにかく、SNS上で知り合っただけの人においしい話を持ち込むなんてことは本来ありえない。それに尽きます。
ぽな:
なるほど。ただ、業種によっては親切な人が多い業界もあると思うんですよ。たとえばイラストレーター界隈は先輩が後輩にあれこれ教えてくれる業界だな、というイメージがあります。
河野:
だったら、「あくまでも教えるのは絵の技術だけにしておけ」という話になってきますよね。だって、おいしい話なんて本来独り占めしておけばいいんだから。
たとえば、ものすごく稼いでいる作家さんのところにおいしい話が来たとして、本来それを人に紹介するメリットはないわけですよ。
ぽな:
なのに、あえて人に紹介するとしたら、紹介することで自分に何らかのメリットがあるから……?
河野:
裏で紹介料が動いているとか、何らかの理由があるはずです。情報商材の類もそうですよね。基本的に情報は独占することに価値がありますから。
ぽな:
たしかに当たり障りのない情報なら惜しみなく出せますけど、本当にコアな情報っていくら有料の商材でも出しにくいですよね。出した時点でスキルもノウハウも陳腐化してしまいますから。
河野:
親しい人にだけ教えるならわかりますけど、そうでもないのに教えるのはね、どうなんだろうなって思いますよね……。
ぽな:
うーん……。となると、基本は性悪説で考えるべき、ということなんでしょうか。
河野:
逆に性悪説で考えても納得のいくスキームであれば信頼していい。たとえば、「私が仕事を獲ってきてあげるから、紹介料くださいね」と。これはまっとうな話ですよね。
ですが、これが「毎月1000円払ってウチの会に入ってくれたら仕事を紹介しますよ、ガッポガッポ儲かります」みたいな話になってくると……。
ぽな:
なんてありがちなオンラインサ……いや、なんでもないです。
河野:
あ、もちろん今のは特定の団体をディスってるわけじゃないですからね。ま、私なら、万が一関係者に絡まれたら「自覚がおありなんですか?」って言っちゃうかな……いやそういうこと言っちゃうからダメなんだけど(笑)。
ぽな:
つ、つよい……!
河野:
冗談はさておき、そもそも仕事の斡旋をする代わりに、何かモノやサービスを売るのって法律で規制されていますからね(※1)。
※1 仕事の紹介と引き換えに、特定の商品やサービスを買わせる取引自体は必ずしも違法というわけではないが、特定商取引法上の「業務提供誘引販売取引」として厳しく規制されている。たとえば、消費者に対しての契約前の説明書面や契約書の交付は必須。が、オンライン上でやりとりしているだけの関係で、まともに書面の交付をできるのかというと……。
ぽな:
ええっ、そうなんですね!?
河野:
たとえば仕事の斡旋をするんだったら、自分がエージェントになって紹介料を取るビジネスをすればいい。そのほうがビジネスとして合理的です。「適法にビジネスをしているかどうか」は、相手の信頼性を見る上では重要なポイントといえます。法律の知識があると、その辺りの見極めには役立つかもしれないですね。
河野:
さて、じゃあどうやって信頼できない人を見極めるかというのかという話ですが。たとえば「お金がありそうに見えるから信頼できるのか」というとそういうわけでもありません。そんなに儲かっているのなら、「そのお金、いったい誰からもらったんですか」って話ですよね。
ぽな:
それこそ、カモった人からかもしれませんよね。
河野:
ですね。これは逆にライターさんの感覚で考えてほしいんですが。たとえば、ぽなさんが情報商材のLPライティングを頼まれたとしましょう。「どこからどう見ても購入するメリットがねぇな」という詐欺まがいの商材です。どう書きますか?
ぽな:
さすがに嘘は書けないので、ふわっと書きます!
河野:
でしょう? つまり、ふわっとしたことしか言わない人、ポエミーな抽象論ばっかりで肝心なことは言わない人は危ないということになります(笑)。ろくでもない商品を売っているから詩的な表現でごまかす。SNS上での発言にも同様のことが言えますね。
ぽな:
成長、希望、夢。ポジティブなキラキラワードがいっぱい! って、そのまんまブラック企業語録じゃないですか、これ。
河野:
いや、これは本当にそうなんですよ。消費者からお金を搾取するか、労働者から労働力を搾取するかの違いだけで、どっちも誰かからの搾取によってビジネスが成り立っている点は変わりません。
ぽな:
搾取する側の共通点ですか……。
河野:
ちなみに、ああいう界隈の人は、「自己責任」とか「自分への投資」って言った言葉も大好きですね。
ぽな:
「自己責任だから」と予防線を張っておけば、何かあったときに被害者に責任転嫁できますもんね……。
河野:
そうそう、あとは「いますぐ決めないと損しますよ」と決断を急がせる人。ああいうマーケティング等に使われる心理的テクニックを対面の場で使おうとする人にも注意が必要です。
ぽな:
確かに、あの手の心理的テクニックって悪用厳禁のものが多いですよね……。あと個人的な意見なんですが、こういうヤバい人たちって平気で嘘をつきません? とくにSNSだと身分を偽ることなんて簡単ですし。
弁護士って仕事柄ヤバい人や嘘つきに出会う確率が非常に多い(※2)と思うんですけど、そんなリアル人狼ゲームを日々生きている先生から見て、嘘を見破るコツってありますか。
※2
わざと嘘をつく人がいるのはもちろん、自分に都合が悪い事情を黙っていたり不利な事実を過小評価したりして、本人に悪気がなくても「結果的に嘘をついてしまう」というケースもある。このあたりの話に興味がある方は『まんが 弁護士に教わるウソを見抜く方法』(深澤諭史/宝島社)をどうぞ。
河野:
まず見るべきは、発言内容などに矛盾がないかですよね。
ぽな:
たとえば実際にやりとりしていて何となく「違和感がある」と思ったら、その勘は信用したほうがいいんでしょうか?
河野:
うん、こういう勘ってだいたい当たりますよ。あとは慣れの問題かな。
ぽな:
慣れの問題ですか……確かに営業職の知人はよく人を見ていますね。
河野:
ライターさんもマーケティングをやっている人が多いから、その辺りの手口はだいぶ詳しい方なんじゃないかな。
あとは、「権威に頼りたがる」というのも、そういうヤバい輩の特徴です。ビジネス書をやたら引用したがるとか、「自分はすごい人なんだぜ」アピールをするとか。SNS上ではキラキラしているくせに肝心なことは秘密にして何も言わない。「詳しいことは言えないんだけど、すごいんだぜ」みたいな人、いませんか?
ぽな:
あっ……(察し)
ぽな:
ここまで奴らの手口についていろいろ見てきましたが、ここで「狙われやすい人の条件」についてもお伺いできればと思います。ズバリどんな人が狙われやすいのでしょうか。
河野:
出落ちになっちゃうようだけど、実はフリーランスである時点で狙われやすいです。というのも、狙われる条件を既にいくつか満たしちゃってるんですよ。
まず収入面などの不安につけ込みやすい。さらに、一人で仕事をしているから相談できる人が身近にいない。こういう怪しい輩って、何かと「いまの話は人には内緒だよ」って言うものなのでね。
ぽな:
人に相談させないようにする、ということでしょうか。
河野:
そう、誰かに相談されると困るわけです。だからこそ相談相手がいないフリーランスは狙われる。それからTwitterのようなオープンな場から、LINEなどのクローズドな場に誘導しようとする人も危ないですね。
だって、自分が本当にすごい人だったり、あるいは素晴らしい商材を売ったりしているのであれば、本来口コミで広めてもらった方が絶対得ですよね? それなのに囲い込もうとするなんて……。
ぽな:
行動として矛盾しますよね。
ぽな:
警戒心は最大限に高めるとして。実際そういう事件に巻き込まれたらどうすればいいんでしょうか。
河野:
まあ、まずは逃げるのが基本ですよね。あと、こういった事件で一番避けなければいけないのは、加害者側になってしまうことです。とくに、クリエイターやインフルエンサーといった発信力がある人は広告塔として利用される恐れがある。これは昔からよくある手口でして……。実際、悪い人に詐欺の片棒を担がされて、被害者から訴訟を起こされているインフルエンサーの方もいますよ。
ぽな:
発信活動を頑張っている人ほど要注意ということですね。
河野:
向こうだって人は見ていますから。その界隈での影響力の大きい人、発信力のある人に宣伝してもらった方がおいしいわけです。当然、目立つ人は狙われやすい。で、こうした発信力のある人が騙されると、今度は自分が加害者になってしまう。
ぽな:
自分の知らない間に加害者になってしまうなんて、怖すぎます……。
河野:
だからこそ、もし自分が連中に利用されていることに気づいたら、まずは自分の身を守るためにも被害の拡大を防がないといけません。具体的には、個別にメッセージを送るなどして周囲の人たちに対してフォローをしておく。ここで重要なのが「あくまでも個別に伝える」という点です。SNS上など人目につく場所で注意喚起を行うと、かえってトラブルを招くおそれがありますから。
ぽな:
なるほど……。
河野:
次に考えるべきは、自分がこれ以上被害に遭わないようにすること。具体的には、お金を取り戻すか、とにかく損切りをして逃げるかの二択ですが……。ただ難しいのは、お金を取り戻そうとすると二次的な被害にあうリスクもあるんですよね。第三者に騙されることもありますし、交渉中にうまく丸め込まれてしまう、ということもありがちです。
ぽな:
そもそも相手がまともな人ではないのだから、交渉の場などに丸腰で乗り込むのは危険ですよね。こういう時こそ弁護士を立てないといけませんね。
フリーランスが詐欺やマルチに勧誘されないためにはどうしたらいいのかを聞きに行ったところ、「フリーランスはそもそもトラブルに巻き込まれやすい」という衝撃の結果になってしまいました。しかし、我々にできることはまだあります。
相手の行動によって誰が得をするのか、逆に誰が損をするのか。
一見親切な振る舞いに、本当に裏はないのか。
今回、河野先生が教えてくださったのは、「あえて性悪説で考えることの大切さ」なのだと思います。
私自身、じっくり話を伺ってみて、立派な肩書きや第一印象の良さといった先入観を捨て去り、冷徹な視点で物事を眺めないと「守れないものがあるのだ」ということを痛感しました。
怪しい人と関わってしまった場合、精神・金銭的なダメージを被るどころか、フリーランスとしてもっとも大事な「信用」を失ってしまう可能性があります。
近づいてくる人は全員疑え。まるで人狼ゲームのようですが、これくらいのシャープな覚悟と警戒心を持って、今後もフリーランス道を歩いていきたいと思います。強く生きるぞ……!
(執筆:ぽな 編集:少年B 協力:河野冬樹弁護士 イラスト:はこしろ)
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